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門前雀羅

作者: 某大学のくまさん

(パート1)

 好きな人がいる。でもその好きな人には別の好きな人がいる。「幸せってまるで賞味期限ね。だって、開けたら短くなっているんだもん。」君のあの時の言葉が今では心に沁み渡っている。たしか、雨の日だったかな。まだ青が点滅していて、雨をへばりつかせないハリのある真っ赤な傘をさしていた。横断歩道の真ん中で負け犬みたいにずぶ濡れでいた僕に声をかけてくれたのが君だった。濡れて羽ばたけなかったことの羽を、もう濡らさないようにと僕の方に傘を向けた。

 「ここにいると危ないよ。ほら、私の掌に乗っかって。」

 僕はそんな温もりを感じ、素直に乗った。君は僕を屋根のあるバス停まで運んでくれた。

 「ここでちょっと待ってて。パンを買ってくるから。」

 と言いながら、近くのコンビニエンスストアへ走って行った。数分して、返ってきたら、パンを細かくちぎっては掌に乗せ、そこから食べさせてくれた。お腹が空いて、羽も濡れて愚者であるかのような僕に満足感を与えてくれた。このことがとても嬉しくて、目から雫が溢れそうになった。ともかく、今日という日は安心して眠れそうだ。


 (パート2)

 後日、晴れた群青のそらの中、僕は飛んでいた。すると、川沿いの道周辺の芝生で座っている君を見かけた。助けてくれた時の感謝の意も込めて、僕は真っ先に君の隣に腰をかけた。

 「あれ?もしかして、この前のスズメさん?こんなに元気になっていたのね。よかった。」

 「僕、実は感謝したくてさ…」

 と、理解されないことは知りながらも試しに言ってみた。

 「あ、そんなこと気にしなくてもいいのに。」

 僕は驚いてしまった。

 「どうしたの?そんなうっかない顔をして。もしかして、豆鉄砲でも食らったの?」

 「・・・あ、いや、僕が話していることがわかるの?」

 「うん、わかるよ?」

 「そ、そうなのか。てっきり人間って鳥語を話す生き物でないと思っていた。」

 「鳥語?なんのことかわからないけど、。」

 「まぁ、そんなことはそこまで重要でない。僕はありがとうの一言を添えに来た。カラスに襲われたあと、力が出なくなって道路で倒れこんだ僕を救ってくれて本当に感謝している。そのついで、と言うのもなんだが、何かあれば僕に相談してな。力になれることがあれば手伝うから。」

 すると君は照れながら、

 「本当にわざわざ来なくてもよかったのに。誰かを助けることって当たり前じゃん?」

 と言った。君の名前は、ミホ。それだけは今日という今日知ったのだった。この日から、僕とミホは友達となった。僕たちはお互いに全ては離さない。ちょっとした秘密や、心にしまっておいたはずの感情を一部だけ話す。

 その中で今蘇っている記憶がある。


 (パート3)

 「しあわせの賞味期限って短いよね。」

 「何それ、袋を開けたパンみたいじゃないか。」

 「そう、開けてしまうから短くなるんだよね。でもね、開けていないジュースは価値があるけど、その味を知らないでしょ。だから幸せにはなれないのよ。短い幸せを無くならないようにするには、パンとジュースを何度も買って、食べる。そうすることで、小さな幸せを繋げていくことができるの。これが一番。だからね、あなたとは小さな幸せを繋いで行って、それがp互いにとっていい形として残したい、ところね。」

 こんな会話だった。僕はお互いの気持ちが深まっていくことにある種のワクワク感を感じることが多くなった。ただ、高校生となって、受験が迫ることで、君は段々と川沿いにくることは無くなっていった。そして君は大学生になる直前に言った。

 「またね。」と。

 確かにそう言った。青リボンの麦わら帽子を被り、僕に手を振る。僕の脳裏にある、君の最後の映像。次に会う約束もできずに、命運に任せたまま僕は小さく手を振って離れた。逆方向の特急列車に誤乗車したように、どんどん離れていく。引き返す方法も知らずに、ただ君を眺めていた。手にしたはずの心のブリキをなくし、君との別れは、飛花落葉のように終わったのだった。


 (パート4)

 4年の時を得て、この夏、4年後の君を見かける。なんて言葉を交わそうか。気づいてくれるかな。僕は声を張り上げて、君の名前を呼ぶ。

 「おーい!こっちこっち!」

 何度も呼び叫ぶが、僕の声は届かないようだった。

 おや?隣の人は誰なんだろう。僕は君の隣にいた男の人が気になった。

 「初めての挨拶なんだから、ちゃんとしてね?」

 「わかってるって。・・・にしても緊張するなぁ。ミホのご両親は厳しいって言ってたもんな。」

 「まぁ今日は厳しくないことを願う。それしかない。んじゃ、入るよ?」

 君は彼の手を握って、笑顔で実家に入った。

 「ママ、パパ!ただいま!」

 「あら、戻ってきたのね。おかえりなさい。・・・えっと、そちらの男の子は?」

 「ミホさんの彼氏のヒロキと申します。」

 「あんた、いつの間に彼氏なんて作っていたの?!」

 「ま、まぁね。あのね、聞いて驚かないで欲しいんだけど、半年後に私たち、結婚することにしたの。だから、ママとパパにも紹介して、結婚式でお祝いして欲しいの。」

 僕はそんな会話を外で聞いていた。ミホの知らせに衝撃を受けた。僕は忘れられたのかな。楽しかった思い出は走馬灯のように蘇る。一頻りの違和感だけが頭の片隅に残り、自分がなぜここにいるのかを問うだけの一瞬間となった。そう、僕はもう、ただの愚者のようだ。

 「もう、終わりかな。」

 最後に美穂に助けてもらったあの横断歩道の近くの木の隣まで飛んでいった。そして僕は、泉下の客となったようだ。君のために群青の空に雲で君への想いを描いて、気づいてくれることを心から願っています。僕は何があっても、ミホのことは決して忘れることはありません。




あとがき

 この短編は、中学時代に作り、高校生となってコンクールに応募した作品です。当時、鳥が好きで、特に雀と烏が好きだったのですが(だいぶギャップがありますね)、そこで、小説に鳥を取り入れようと思い、作りました。今では猫と熊が好きなので、今後それらで何か作れたらと思います。

 思ったのですが、長編よりも短いお話の方が感動するってことありませんか。この間、YouTubeを見ていたら、そういう人が多いようでした。私ももしかしたら、そのうちの一人なのだとは思いますが、やはり本は好きです。なので、どれだけ長かったり短かったりしていても、読むと決めたものは読むと思います。

 話が逸れてしまったように思いますが、とりあえず、私はこの作品を多くの方に読んでいただきたいと思います。たとえ、良いものであっても悪いものであっても。もし、悪い作品であるのなら、また新しく作っていけば良い。作品をたくさん作っていくことで、いつかいい作品が生まれてくることを信じていますから。

 今後も頑張って書いていこうと思います。時間さえ許してもらえればですが、、。

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