「記憶の片隅に」
教室に響き渡る雨の音、毎日鳴いているセミも今日は休みらしい。
「恭介、俺たちもう受験生なんだから自習の時も真面目に勉強しないとやばいぞ」
「そうだな、でも今日は集中できそうにないわ」
「また美香のこと考えてんのか。あいつ今頃どこにいんのかな」
そうだ、僕は去年の冬に転校していった幼馴染の美香のことを忘れられずにいた。
2年前の春、特に頭も良くなかった僕は地元の公立高校に入学した。
「恭介!入学式遅れちゃうよ!」
幼い頃から毎日聞いてきた声が外から聞こえてくる。幼馴染の刈谷美香だ。
美香はお互いの両親が友達ということもあり、小学生の頃は毎日一緒に遊び、中学校まで同じ学校に通っていたのだが、頭のいい美香がまさか自分と同じ誰でも入れるような高校に入学するとは思ってもいなかった。
「今行くよ!」
これまで何度も繰り返してきたこのやりとりがまだ3年間も続くと思ったら朝から憂鬱だ。
「ねぇ、高校ではどんな部活やりたい?」
「別にやりたいことがあるわけじゃないから部活には入らない」
「えぇ、じゃあ一緒に吹奏楽部の見学行こうよ!」
小学校の時からこんな調子で毎日僕を連れ回すが、一体何が楽しくて連れ回しているのだろうか。そんなくだらない話をしている間に学校についてしまった。
「まさか恭介と同じクラスだとは思わなかった!これからもよろしくね!」
まさかはこちらのセリフだ。毎日朝から晩まで一緒にいたというのに学校の中でも一緒にいなきゃいけないのか。
「須藤隼也だ、よろしく。君の名前は?」
美香が話しかけてくるのを適当に遇らっているといきなり隣の席から声がかけられた。
正直、これまで人付き合いが苦手だった僕は、「俺に話しかけるな」というオーラが出ているらしく、人から話しかけられることがなかったし、急に名乗られたことがなかったのでびっくりしていた。
「中城恭介です」
「恭介、もう入る部活は決まってんの?決まってないならサッカー部の見学行こうぜ」
なんで席が隣になっただけの初対面にそんなにぐいぐい話しかけられるのか不思議でたまらないが、なぜだか隼也とは気が合うような気がしていた。
「恭介は私と一緒に吹奏楽部に入るからサ
ッカー部に誘っても無駄だよ〜!」
お前は勝手に話に入ってくるなよ。それ
にまだ吹奏楽部に入るとは一言も言ってない」
「なんだよ、入る部活決まってんじゃんか。まぁいいや、席隣だしこれからよろしく」
僕は高校生活でも美香に振り回される様な気がしていたが、内心今までの生活と何かが変わるのではないか。と期待もしていた。
僕は小学校や中学校では人との関わりをなるべく避けていたためか全く友達ができなかった。唯一僕に話しかけていたのが近所に住む美香だけだった。
親からは美香ちゃんみたくいろんな人と仲良くなりなさいなんて言われていたが、期待している様子もなかった。
そんな中、美香は僕をいろんなところに連れ回していろんな人に話しかけ僕に友達ができるようにしてくれていた。それでも友達ができなかった僕は相当性格に難があるのだろう。
そんな過去があるから僕は高校生活こそは自分の中で何かが変わるのではないかと期待してしまったのだろう。
しかし、現実はそう甘くはなかった。
入学して最初の1週間は部活動の体験期間だったので美香との約束の通り吹奏楽部に行き、そのほかにも何個か部活の体験に行ったのだが、結局どの部活にも入ることはしなかった。
僕だけが部活をしないのならなんの問題もないはずなのだが、意外なことに、あんなに吹奏楽部に興味を持っていた美香までも部活に入らなかった。
「なんで吹奏楽部に入らないのさ」
「恭介が部活に入らないからだよ」
意味がわからない。
僕が部活に入らなくても美香にはなんの影響もないはずなのになぜ自分の興味のある部活に入らないのか。そこまでして僕に関わって楽しいのか。
百歩譲って美香だけならよかった。一番意味不明なのは隼也までもが部活に入らなかったことだ。
たまらず隼也に理由を聞いたのだが、
「部活より恭介といる方が楽しそうだったから」
意外というか、意味がわからないというか、なんとも言葉にできないような感情になった。
美香のように幼い頃からずっと一緒だった。ならまだわかるが、僕と隼也はまだ出会って1週間だ。隼也まで僕に合わせる必要はなかったはずなのに。
あれから毎日美香と隼也が僕の周りにいるようになった。男友達?の隼也は別にいいが女の子である美香は僕以外に友達を作らなくていいのだろうか。
隼也は最初こそ強引でお喋りなやつだと思っていたが、意外と僕に似ているところもある。それこそ実は人付き合いが苦手で自分から積極的に話しかけられないところとか。
入学初日に強引に僕に話しかけてきたのも高校で変わろうとしていたかららしい。
サッカー部に入りたがっていたから運動は得意なのだと勝手に思っていたが実は苦手で、中学校までは図書部員だったのも驚きだ。
入学してしばらく経った夏の日、3人でいつものようにお弁当を食べていたのだが、廊下の方が騒がしくなってきた。
毎日3人でいる僕たちにとっては関係のないことだろうからそのまま話を続けていたのだが、騒ぎの中心は僕たちの方に向かってきた。
「あんたが刈谷美香?」
騒ぎの中心である隣のクラスの遠岳飛鳥は美香の返事を聞きもせずに美香をどこかに連れて行ってしまった。
「美香はどこに連れて行かれたんだろうな」
「さぁ、町医者の娘だから嫉妬でもされているんじゃないか?」
言った通り美香はこの町で有名な医者の娘で親は相当なお金持ちらしい、
授業が始まる前に美香は教室へ戻ってきたのだが、何を聞いても「なんでもない」の一点張りだった。
その日から美香の様子がだんだんおかしくなってしまった。
学校にいる時以外は今までとなんの変わりもないが、学校にいるときだけ何かに怯えているような様子だった。
それから美香は飛鳥に何かと呼ばれることが増えていった。それまで3人で楽しく話をしていても、呼ばれた途端に暗い顔をしてついていく。心配になってついて何回か行こうとしたのだが隼也に毎回止められていた。
「なんで止めるんだよ」
「美香がお前になんの相談もしないのはお前に知られたくないことでもあるんだろ」
そう言われ後を追いかけるのはやめたが腑に落ちなかった。
家に帰り、夕食の支度をしている母親に美香のことを相談してみたが最近は親同士連絡をとっていないのでわからないらしい。
その上僕の母親はとても能天気なので、「思春期なんだからそれくらい誰にでも
あるものよ。」と簡単に終わらせてしまった。
結局、翌日になっても僕は美香に何も聞けず1日が終わってしまった。それどころか何も聞けないまま一年が過ぎてしまった。
2年生になった僕は美香と隼也とクラスが離れてしまったが授業の合間や昼、放課後はいつも通り3人で過ごしていた。
いつもと変わらず退屈な授業を受けていると教室の後ろの方から飛鳥の声が聞こえてきた。
「美香もあんなやつと関わらない方がいいのにおかしなやつだよね」
ドキッとした。それと同時に「大声で話す内容じゃないだろ」とも思い周りを横目で見たが、周りは誰も聞こえている素振りを見せない。
僕は一番前の席なのに一番後ろの飛鳥の声が聞こえている。それだけでかなり大声だとわかるはずだが、みんな授業に集中しているのか聞かないふりをしているのかはわからないが誰も飛鳥の方を見向きもしない。
飛鳥たちの美香への陰口はどんどんエスカレートしていく。その内容はあまりにも酷かった。
美香が男性教師と関係を持っているなどの噂まででっち上げようとしていた。
「いい加減にしろよ!」
勢いで席を立ち飛鳥に怒鳴った僕に対してクラスの全員が不思議そうな顔をしていた。
「中城、今は授業中だから大声を出すな。それに遠岳(飛鳥)は一言も喋ってないぞ」
授業を中断した先生の一言で僕の頭は混乱した。
一言も喋っていないなんておかしな話だ。確かに僕の耳には飛鳥の声が聞こえていた。
「すみません。」と一言だけ謝り授業が再開したが、僕は声の正体が気になって授業どころではなかった。
授業が終わり、昼食を食べている時に授業中の出来事を二人に相談してみた。しかし二人とも「疲れてるんだよ」としか言わず、すぐ別の話に変わってしまった。
「そういえばこの近くで火事があったらしいぞ。それも家が全焼するレベルだってさ」
「相当だな。その火事でもし人が亡くなったりしたら被害者の遺族は可哀想だよな」
自分ではなんでこんな言葉が出てきたのかはわからなかったが別に変なことは言ってない様な気がしていた。
それより美香の顔が少し暗くなったのが気になってしまった。
休憩時間が終わり、授業が始まったが先生がおらず自習になった。
各々がやりたいことをやっている中、僕はさっきの声についてずっと考えていたが、声の正体は全くわからない。ただ疲れているだけなら美香の悪口ではなく他の内容が聞こえてくるはずだ。
「美香って養子なんでしょ?」
また聞こえた。それになんで美香が養子だと知っているんだ。
美香は自分が養子だということは人には言わないようにしていた。そもそも美香は自分の話を全くしないのだ。
なのになぜ、声の正体は美香が養子だってことを知っているのか。
飛鳥の方を見ても一人でファッション雑誌を読んでいて、とても人と話をしているようには見えない。
僕は余計に頭が混乱したから保健室で休むことにした。
「先生、俺昼前から幻聴が何回か聞こえるんですけどなんでですかね」
保健室のベッドの上で一人で悩んでいたが、話を聞いて欲しくて保健室の先生に問いかけてみた。
「んー、幻聴が聞こえてくる原因は幾つかあるだろうけど、恭介くんは過去に何か事故に遭ったりしたとかのトラウマはある?」
過去にあったことでのトラウマか。
記憶が割と鮮明な小学生後半と中学生でトラウマになるようなことはない。
しかし、小学校に入学する前の出来事は一切思い出すことができなかった。
「特に思い当たらないです」
先生にそう一言伝えて僕はベッドの上に戻った。
その日は小学校に入学する前のことが全く思い出せないまま学校が終わってしまった。
家につき、僕が小学校に入学する前のことを母に聞いてみたら、予想より軽く教えてくれた。
僕は小学校以前の記憶が全くないので、事故にでもあって記憶がなくなったのかと思っていた。
家族でキャンプに出かけたこと、クリスマスはいちごのショートケーキを買って食べていたこと。
しかし、母の話の中に事故や災害のことは一切出てこなかった。
「その時の写真ある?」
母に話を聞かされても全く思い出せなかった僕は、自分の目で確かめないと話を信じきれなかった。
「昔の写真はあんたが小学校に入学する前にうっかり燃やしちゃってね」
なんだそれは。僕が小学校に上がる前の写真のはずなのになんで小学校に上がる時に燃やしてしまったんだ。
母親に問い詰めても「ごめんねー」としか言われなかった。
それに対して苛立ちを覚えた僕は部屋に篭り、翌日の学校まで一言も口を聞かず眠ってしまった。
翌日、いつも僕のことを迎えてきている美香が珍しくこなかった。
学校に行っても美香の姿がない。
「珍しいな、美香休みか」
美香と同じクラスの隼也が話しかけてくる。
「恭介、美香と喧嘩でもしたのか?」
「してないよ」
からかう様に話しかけてくる隼也の話を適当に躱しながら自分の席へ向かう。
風邪をひいても学校を休まず、休む日には必ず僕に連絡をしていた美香がなんの連絡もせずに休むのはかなり珍しいことだった。
朝から熱がひどくて連絡ができなかった可能性もあるので、ホームルーム後に隼也に学校へ連絡が来たか確認しに行くことにした。
「先生から何か聞いたか?」
「いや何も、学校にも連絡入れてないみたいだぞ」
「まぁ、一日くらいサボりたい日もあるよなー」
違う。これは異常事態だ。
今までの美香なら理由があって学校は休んでも「学校をサボる」という発想にはならないはずだ。
学校が終わると同時に、隼也を連れて美香の家へ走ったが美香に会うことはできなかった。
美香の母親には「調子が悪いみたいでね」
と言われたがそれだけじゃ納得できない。
「調子が悪くても連絡くらいできるだろ」
隼也は怒っている様子だったが僕は、今までにない恐怖を感じていた。
美香は1週間が過ぎても連絡を遣さなかった。
これには流石に隼也も心配をしたのか、休み時間は必ず僕のところに来て美香の話をする。
「本当に調子悪いだけなんかな。事件に巻き込まれたりしてなきゃいいんだけど」
「さぁ、美香に会えない上に連絡がないんじゃどうしようもないだろ」
そんな話をしていると、廊下から僕を呼ぶ声が聞こえた。
僕が声の方に向かうとそこには飛鳥がいた。
「美香最近学校きてないじゃん、何か聞いてないの?」
やっぱり飛鳥も美香が学校に来てないことを気にしているのか。
「美香に何か用事でもあった?」
そう僕が聞くと「いや、別に」とだけ言いどこかに行ってしまった。
「遠岳さんも美香のこと気にしているのかな」
「そんなわけないだろ」
飛鳥が美香のことを心配するはずがないのだ。そもそも美香がおかしくなり始めたのは飛鳥が美香を呼び出して話をした時からだった。原因は飛鳥にある。
僕はそう思い昼休憩が始まると同時に飛鳥の元へ向かった。
「話って何?」
「わかるだろ。美香のことだよ。美香は去年お前が呼び出した日からおかしくなったんだよ。あの時なんの話をしたんだ。」
僕は今までの自分じゃ考えられないほど怒り狂っていたと思う。
「なんでそんなに怒ってるのさ。それに美香がおかしくなったのはあたしのせいじゃないよ」
この女ふざけている。美香がおかしくなったことを知った上でそんな余裕な態度をとっているのが余計に腹立たしい。
「お前のせいじゃないなら誰のせいだよ」
「自覚ないの?恭介、あんたのせいじゃんか」
「僕のせい?何を言ってんだ。僕は何もしてないじゃないか」
「幼稚園の時あんたが美香にしたこと何も覚えてないの?」
幼稚園の時?僕は幼稚園の時のことを一切おボイ出すことができていない。抜けた記憶に中で僕は美香に何かしていたのか?
何も言い返せないまま僕は自分の席へ戻り授業を受け、何も思い出せないまま帰宅した。
家に帰り、両親に美香のことを相談すると、互いに顔を見合わせて何やら深刻そうな顔で話し始めた。
「恭介、あんたやたらと小さい時の話聞きたがっていたわよね。これから話す内容は全部事実だからね。」
僕がまだ5歳だった頃、誤ってガスコンロの火をつけっぱなしにして家事になったことがあるらしい。親が気づいた時にはもう手遅れで火が家中に広がっていた。
当時の僕は火事のことなんか知らず親が騒いでいるからと押し入れの中に隠れ、親の呼びかけに答えず黙っていた。
消防車が到着し、母親が隊員に僕がいないと伝えると、なんの迷いもせず火の上がった家に飛び込んでいった隊員がいたそうだ。
僕は隊員に助けられて無事だったみたいだけど、助けてくれた隊員は煙を吸いすぎて家事の後なくなってしまったらしい。それが美香の父親だった。
元々美香は、生まれた時に母親を亡くし、父親と二人で暮らしていたらしく、僕が引き起こした火事が原因で一人になってしまい、今の家族に養子として引き取られたそうだ。
僕は目が覚めても全く火事のことを覚えていなくそれまでの記憶もなくなっていたそうだ、そしてそのまま小学校に上がったらしい。
その小学校で初めて友達になったのが偶然美香だった。
僕は美香が養子だということ。美香のお父さんが火事で亡くなったことを聞かされ、本人に「美香って可哀想だな」と言ったことがあるらしい。
それから美香はテレビで火事のニュースを見るたびに必ず体調を崩した。
「美香ちゃんが今、何日間も体調を崩して、あんたに連絡を一切よこさないのは、誰かに火事を起こしたのがあんただって聞いたからじゃない?」
そうだったのか。でも一体誰に聞いたんだろう。
僕はこれまで美香と一緒に過ごした時間を思い返して、美香の様子がおかしかった日を探してみた。
いた。1人だけ思い当たる人物がいた。
翌日、授業が始める前に話をしに行くことにした。
「また話?何か思い出しでもしたの?」
「飛鳥、なんで君があの時の火事のことを知っているんだ?」
美香がおかしくなったのは遠岳飛鳥に呼び出され、話をした後からだった。
「思い出したんだね。」
「私は私のお父さんから火事のことを聞いたんだよ。私のお父さんは美香の父親と同僚だったらしいからね。」
飛鳥の父親も消防隊員であの現場にいたのか。
「この前学校の近くで家事があったよね?その火事で父子家庭の女の子が亡くなっちゃったんだってさ。」
「その火事が落ち着いて仕事から帰ってきた後にお父さんがつぶやいたんだよ。
−俺にもあいつみたいに勇気があったら−って」
「だからなんの話か聞いたら、私たちが小学校に入学する前に似た様な事故があったらしいね。その時もお父さんは現場にいたらしいからね。」
「家事の原因である男の子があんただってことは話を聞いてすぐわかったよ。中城って書いて、ちゅうじょうって読む苗字は珍しいから。」
そうだったのか。飛鳥の父親もあの現場にいて、僕が火事の原因で美香が被害者だってことを知っていたのか。
だから飛鳥は僕たちが仲良くしているのかが不思議で美香を呼んで辛くないのか聞いていたのか。
美香は父親が亡くなった火事の原因が僕だと知っていて仲良くしてくれていた。
僕に友達ができないから、作ろうとしないから独りの辛さを知っている美香は僕の味方になろうとしてくれていた。
「あんたのせいだよ」この言葉に全てが繋がった気がした。
僕は小学校から今まで美香とずっと一緒に過ごしてきた。
僕は一緒に過ごしていた美香のことをなんでも知っていると思っていたのに、美香のことだけじゃなく自分のことさえわかっていなかった。
そう思った瞬間に僕は美香の家へ向かって走り出していた。
後ろにある校舎から聞こえる名前を呼ぶ声。交差点を通りかかった車のクラクション。
空から落ちてくる雨の音。
全部聞こえないふりをして美香の部屋の前まで走った。
「美香、ごめん。ありがとう」
「うん」
美香の部屋から聞こえたすすり泣く声を背
に、僕は自分の家に帰り、眠りについた。
その年の冬、美香は引っ越したらしい。
僕が美香の部屋まで走ったあの日からもずっと美香は学校に来ることはなかった。
受験生になった僕たちは美香の話をだんだんしなくなっていったが、去年の出来事は忘れたことはなかった。
多分、高校を卒業して大学に入って、就職して。忙しい毎日を過ごしていても僕の記憶の片隅にはずっと高校2年生の夏があると思う。
「お、晴れて虹見えてんじゃんか。美香も同じ虹を見てるといいな」
「隼也にしてはまともなこと言うんだな。そんなことより勉強しろよ。まともな大学行けなくなるぞ」