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作者: NaKi

学校に行って、いつもどーり校門に足を伸ばしたら神の領域に行ったこと、もちろん皆さんありますよね。この物語はそんな経験がない少年が女神と神の領域で会い、人生が急変してく様子を描いたものなのだ。(何いってんだこいつ)完全異世界転生モノは結構世にはびこってるんだけど混合モノって意外に少ないよねー... でもやっぱNaKi的には異世界でもハーレムしつつリアルで彼女作って欲しいわけですよ。黒髪黒目女子サイコー!フー!(何いってんだこいつ、まぁ読めばわかると思いますのでぜひともよろしくお願いします。)

「人生とはゲームである」

 誰が言ったのだろうか、もしかしたらたくさんの人が言っているのかもしれない。でもこれだけは言える、確信して。

「そんなわけねぇよ」と。


 中学校や高校生活、期待できるものは多くある。それは青春だったり運命の相手を見つけること、あるいは部活に力を入れるものもいるだろう。そしてこの俺、神村ナキは今年晴れて進学、高校生として新しい一歩を踏み出そうとしていた。俺は制服を着て東京の中央区にある学校の自動ドアをくぐる。想定通りなら、このまま自分のクラスへ直行するのだが......何が起きているのだろうか。俺は白い光に包まれていた。

「え? え? 何が起きてんの? 」

「ようこそ天界へ〜、神村ナキさん」

 俺の頭の中に高く、綺麗だが、口調が、少し頭にくる声が響き渡った。女性の美声とともに現れたのは、地球のどんな美人を凡人に見せてしまうほどの美貌を持つ、天使だった。頭の上には天使のリング、背中からは大きな純白の翼が生えていた。そう、それはまるで女神のような......

「ここはどこですか? っていうか俺は学校に行っていたはずじゃ......」

「ここは天界、神々の住まう場所です〜それで。申し遅れました〜私は、地球を管轄とする、女神ですぅ〜。あ、管轄というのは神は一人ずつ自分の役割を持っているんです。それが私の場合地球の管理なんですね」

 まさか本当に女神だったとは......

「もしかして......異世界転生とかだったりします? 」

 俺の数百冊のラノベをもとにした知識がこの後の展開を予知している。これは念願の異世界転生を経験する時なのか......

「違いますぅ〜、というか我々はあなたを呼んでもいません〜」

「え? 」

 俺の夢と希望は呆気なく終了した。

「なんと〜、あなたは自力で天界に来てしまいましたぁ〜、なにか心当たりはございませんか〜? 」

「え、いや、特にはないと思いますけど」

「いやまあ私達は知っているんですけどねぇ〜」

「じゃあ聞くなよ! まるで俺がバカなやつみたいじゃん」

「それじゃあ理由をお話しますねぇ〜。あなたが天界に来れた理由は〜......」

「理由は? 」

「ライトノベル異常中毒症候群だからですねぇ〜」

「え? 今何と? 」

「ライトノベル異常中毒症候群だからですねぇ〜。ライトノベルが好き過ぎて異世界転生などの展開をリアルでも起こしてしまう病気ですねぇ〜」

 困惑するしかない。異常と中毒と症候群が一緒に入ってる病名なんて聞いたことも見たこともないんだけど......まぁ、ライトノベルは大好きだったけど、多分四百、いや五百冊くらい持ってたけど......

「...で、元の世界に帰るにはどのようにすればいいんですか? 学校あるんですけど......」

「まぁ少しお待ちください〜、説明しますから〜。我々神は、規約として自力でこの空間にたどり着いた者にはなにか褒美を授けれなければいけないのです〜」

「俺としては学校に間に合うかが今一番の問題なのですけど......」

「この空間は現実世界での一分が天界の一時間になるようにしていますぅ〜。つまり、こっちで十分くらい話したって、あちらの世界では5秒くらいしか、経っていません」

「どこの精神と◯の部屋だよ! 」

 ドラ◯ンボール知ってるのですかね?

「で、何か欲しいものはありますかぁ〜? 」

「もともとあんまり趣味がないですから......強いて言えばラノベがほしいですかね……」

これがライトノベル異常中毒者の末路である。

「ん〜、なんかつまらないですねーあなたの人生。そうですね......あなたの大好きなラノベを分析してあなたの人生を半分、異世界化してあげましょうか。もちろん普通の人生は歩みますが、夢の中であなたは部分的に異世界転生します。今日、あなたがベッドに入れば、あなたは剣と魔法の世界の人物に転生します。そしてあなたはその世界で好きなことをして過ごしてください。また、『人生を半分、異世界化』するということなので、その異世界で起こった事象を、現実世界に擬似的に反映させます。例えば異世界で、友達を10人作ったら、現世でも10人ほど親しい人が増える、ということですね」

「え? どういうことですか? 普通異世界転生とかって、本人の意向に沿って願いを叶えるはずじゃないんですか? 」

「では、お帰りください〜」

「え? え? うわぁー! 」


そしてかれこれあって俺の高校生活が始まる。俺は唐突な天界での展開に驚きながらも、教室にいた男子二人に挨拶した。

「おはよ〜」

「「おーす」」

  元気の良い返事が帰ってきた。なぜこんなに仲が良さそうなのかって、疑問に思うだろう。そう、何を隠そう俺の学校、中高一貫校なのだ。しかも中学の終業式も行わないような伝統も風格もない学校である。

「今年から高校生だってさーなんか変わったことある? 」

「いや特に、しかも俺ら帰国子女だから今年もみんな同じクラスメイトだぜ。後教室の場所が変わったくらい? ここ、道路近いから結構外うるさいんだよ」

「担任は? 」

 実は担任変更を望んでいるクラスメイトは結構多く、自分もその一員だったりする。

「後ろ見てみ。あの置物、前の担任のものと同じやつだ」

「あ、そうっすか、つまり、担任が一緒っていうことか...クッ...」

 気楽(? )に話しているのは仲のいいクラスメイト、岸谷ニマと加祐トウだ。ニマは高身長で、運動神経がいいが、勉強面は残念である。対してトウは運動面こそ苦手分野だが、勉強面はある程度できる、しかし生粋の陰キャである。ちなみに三人とも、女性との出会いには縁がない。


 さて、朝のSHRが終わり、始業式が終わると、うちの学校は、高校の入学式もなく、初日から授業である。

「えー、したがって三角関数のsinθの範囲はここからここだよね。じゃあ、授業はここで終わりなので、次回の授業までに、このページからこのページまでにある問題全部やってきてねー、みんなに聞くから」

 なぜだろう、この鬼畜先生は初日からえげつない量の宿題の量を出してくる。そして、他の科目でも圧倒的な量な宿題を出され、俺らのメンタルは再起不能に陥っていた。

「キレそう」

「同意」

「ぼ、僕もちょっと、お、多かったと思うな、しょ、初日なのに」

「でも明日までの宿題は、数学だけだろ、だからさっさと終わらせようぜ」

「「了解ー」」

 そんなこんなで、家に帰って俺は宿題に手を付ける...わけもなく、悠長にラノベを読んでその日午後の授業をこなし、家に帰ってゲームやラノベを読みながら時間を過ごした。そして就寝時間になると、宿題をやっていないことを思い出したが、一回ベッドに入ってから勉強する気持ちなど到底なく、完全に寝ようという気分になっていた。しかし寝ようとまぶたを閉じる直前にまた、別のことを思い出した。今日の登校時のことだ。女神のあの思い出すだけでイライラがとまらない声が言っていたことを思い出す。

(......今日、あなたがベッドに入れば、あなたは剣と魔法の世界の人物に転生します。そしてあなたはその世界で好きなことをして過ごしてください。また、『人生を半分、異世界化』するということなので、その異世界で起こった事象を、現実世界に擬似的に反映させます.......)

「まぁ、幻か思い込みのたぐいかな、さっさと寝て早起きしよ」

 俺は考えるのがめんどくさくなった。まぶたを下げ睡眠に入った俺の意識は、別のどこかに飛ばされていた。


「ここは...どこだ? 」

 俺の目には現世とは思えないような光景が広がっていた。周りには草原が広がり、洋風の大きな扉と、その端であくびしている一人の兵士が見えた。幸い、自分の体には異変はないようだが、服装は変わっていた。寝るときに着ていたパジャマはお世辞にも質の良いといえない、歴史の教科書に出る中世ヨーロッパの人が着る服に変わっていた。また、腰には小さい短剣が鞘とともに封入されていた。俺は兎にも角にも情報を手に入れるために、街に入ることにした。

「あのー......ここはどこでしょうか? 」

「ん? 何者だ? ここを通るには身分証が必要だぞ」

「いや、別怪しいものじゃないんです! 気がついたら草原で寝ていたんです! 」

「あ〜、稀人か」

 稀人、とはなんだろうか。

「あ、稀人とはお前みたいに、突然別の世界から現れた者を指す言葉だ。お前以外にも結構な回数稀人は発見されている」

「へー、じゃあ同郷の者もいるかも知れないってことですね! 少し安心しました」

「ああ、後、この国は稀人は犯罪履歴などさえ無ければ無償で入国できるようになっている。ほら、この水晶の上に手をかざしてみてくれ」

「あっ、はい」

 俺が右手を透明な水晶の上にかざすと、水晶は緑色に変色した。

「大丈夫そうだな。この道をまっすぐ行けば冒険者ギルドと宿屋があるはずだ。知らない地で色々混乱すると思うが、頑張ってくれ」

「ありがとうございます! 」

 建物は中世ヨーロッパ風のよく異世界モノで見覚えのある風景だった。そして目の前には大きな建物があり、『冒険者ギルド』と看板に大きく書いてあった。中に入ってみると、想像と大きくかけ離れていた光景が目に入った。内装は、現代の銀行のカウンターに類似していて、冒険者は受付嬢の前に列をなしていた。冒険者になり、依頼を受けるには、冒険者登録が必要らしく、俺はたまたま空いていたカウンターに行き、受付嬢に話しかけた。

「あのー、冒険者登録をお願いしたいんですけど...」

「はい、冒険者登録ですね。では、この用紙に記入してもらってもいいでしょうか」

「は、はい」

 受付嬢から渡された紙には名前、出身地、特技などを記入する欄があり、俺はそれを簡単に埋めていった。

「文字、かけるんですね」

「え? 」

「いえ、冒険者の識字率って、あまり高くないので、ご自分で書いていただけると、負担が減るんですよね。あ、今更なんですけど、私は当冒険者ギルド、受付嬢のジャン・ル・ミオラと申します」

「あ、神村ナキです。あと、終わりました」

「もう終わったんですか? 記入漏れは......ありませんね。はい。では神村ナキさん、あちらの掲示板から依頼用紙を受付嬢に渡すことで依頼を受けれます。依頼は、条件によって異なりますが、期限以内に達成できなければ、また、冒険者ギルドではランクというものがあり、これは昇級試験を受けることで上げれます。ナキさんはDランクからですね。頑張って上のランクを目指してくださいね」

「はい! 」

「あ! あと、もしかしたらなんですけど、ナキさんって稀人ですか? 」

「あ、えっと、そうみたいです」

「やっぱそうですよね。えっと、稀人には特別待遇が用意されていて......これを持っていってください」

 そう言うとミオラさんはカウンターから一通の手紙を取り出した。

「これをこのギルドの正面にある宿屋の女将に見せると、優遇してもらえるので、大切にもっといてくださいね」

「わかりました。なにからなにまで、ありがとうございます」


「さて、はどんな依頼が残ってるかなー」

 掲示板には依頼が九件ほど、貼り出されていた。

「えっと、ゴブリン、コボルトとかがあるのか。コボルトとか、良さそうだな」

 俺がコボルトの依頼用紙を取ろうとすると、小さい手とぶつかった。手から腕を伝って顔を見ると、そこにはいかにも魔法使いのようなローブを着込み、三角帽子を被った少女がいた。少女は銀髪のロングヘアで、目がきれいな紅色だった。身体的特徴といえば……肋骨の上にある筋肉が物凄く発達していた。

「あっ、すみません。えっと、この依頼、譲ってもらえないですか? 」

「あ、はい。いいですよ」

「ありがとうございます! 」

 元気溌剌な少女は感謝しながらそのまま窓口へ走り去っていった。

「じゃあ僕はこのこっちのゴブリン討伐依頼を受けるか」

 そして俺も少しあとを続け、カウンターへ歩いていくことにした。

「ミオラさん、今日はこれお願いします」

「は〜い! ゴブリン討伐ですね! ゴブリンの返り血は臭いので浴びないことを推奨します! それでは頑張ってきてください。あと、討伐依頼は、そのモンスターの部位を回収し、証明品としてギルドに提出しなければなりません。今回の場合、討伐証明品はゴブリンのD級魔石10個です」

「ありがとうございます! いってきますね」

「行ってらっしゃいませー! 」

 ミオラさんによると、ギルドからそのまま北に行くと森があるらしく、ゴブリンはそこで出現するらしい。その情報をもとにミオラから前に受け取った地図を見ながら、俺はあるきだしていた。

「ん〜! すごい空気が澄んでる! 都心の空気とは大違いだ! 」

 森を楽しみながら、歩いていくと、なにかが強く唸るような音が遠くに聞こえた。

「ゴブリンかな? いってみよ」

 草木をかき分け声の元へ行くと、先程、ギルドであった女の子が、戦闘していた。

「放て、炎の大精霊サラマンダーの炎の一片、『ファイアーボール』! 」

 少女が詠唱をすると杖の先から炎の塊のようなものが出てゴブリンの顔面に命中した。

「グギャアアァァ! 」

 悲鳴を上げながらゴブリンは火だるまになっていた。しかし、その横から別のゴブリンが二匹現れ、女の子を取り囲んでいた。

「えっ? えっ? ちょ、そんな!? 」

「ギギャァ! 」

「うそ! きゃあ! 」

 女の子はゴブリンの持っていた棍棒がもろに腹に当たり、ふっ飛ばされた。そのとき、俺はやっと我に返り、女の子の前に飛び出した。


「大丈夫ですか! 」

「あなたは...? さっきの冒険者さん⁉ここで何をしているんですか? もしかして、ストーカーですか? 」

「す、す、ストーカー? ち、ち、違いますよ。僕はゴブリン討伐をこなそうとしていたら、声が聞こえてきて......」

「そうなんですか? 申し訳ありません! それで図々しいお願いなのですが、少し手を借りてもいいですか? 」

「もちろん、そのつもりです」

 そして話し終わったのと同じタイミングで、前方のゴブリンが棍棒を振り回し、俺をさっきの女の子のようにふっとばそうとした。しかしよく見ると、棍棒の振られる速さはそこまででもなく、見てから反応が可能だった。

「ハッ! 」

 俺はその棍棒を短剣で受け止め、そのまま腕に蹴りを入れた。そしてゴブリンの心臓に短剣を刺すと、そのままゴブリンは絶命し、全く動かなくなった。そこで後方の女の子を見てみると、先程の魔法のようなもので、もう一体のゴブリンを討伐していた。

「ありがとうございます! 」

「いえいえ、それにしてもコボルト狩りに来ていたんじゃないんですか? 」

「そうなんですけど、コボルトが見つからなくて、ここらへんを探していたんです...だけどいきなりゴブリンが集団で現れて......」

「ゴブリンはだめなのにコボルトはいけるんだ」

「コ、コ、コボルトは単体行動しているから、魔法で基本一発なんですけど、ゴブリンは団体で動くから...っていうかそんなことどうでもよくてさっきの唸り声聞こえましたか? あれここらへんのモンスターのものじゃないんです! 」

「えっ? それほんと? それじゃあ別のモンスターが近くにいる可能性があるの? 」

「そうかもしれません。しかもあの声の特徴からしてあれはホブゴブリン。ゴブリンの進化系で、危険度ランクはBです! 」

 何故かフラグが立ったような気がした。

「特徴は? 」

「ゴブリンより二回り大きい体格で棍棒のサイズがほぼ二倍になっています。しかもその体格に見合わない棍棒を振り回す速度から、『初心者キラー』とも呼ばれています」

「それって、あのモンスターのこと? 」

「へ? 」

 少女がゆっくりと首を回してみると、そこには一体のモンスターがいた。しかも、なんとそのモンスターは先程その子が言った特徴とそっくりだった。

「(ムームー! )」

 少女が叫ぼうとしようとしたところを、俺が手で口をふさぎ、悲鳴を抑えた。草むらに隠れているおかげで、やつは俺らに気づいてはいないが、ここで叫び声などあげてしまえば、ホブゴブリンが俺らに気づいてしまう。

「少し静かにしてて、やり過ごさないと」

 このとき女の子の顔が少し赤くなっていたのは気のせいだろう。

 そのまま一切の音をたてないよう、細心の注意を払いながら、ホブゴブリンが通り過ぎるのを待ち、街まで戻った。そのままギルドに直行した俺らはギルドカウンターで笑顔を振りまくミオラさんに話をした。するとミオラさんは顔を真っ青にして聞き返してきた。

「本当ですか? それは異常な事態です! もし本当にいるなら北の森の依頼を受けている多くの初心者冒険者に危険が迫っていることになります! ちょっと待ってて下さい、ギルドマスターを呼んできます! 」

 大事となった。ギルドマスターは奥の部屋に俺と少女を呼び、状況を説明させられた。森は一時閉鎖となり、C級より下のランクの冒険者は立入禁止となった。ギルドマスターによると、もともと北の森にゴブリンやコボルド以上のランクが高いモンスターが出現した記録はないらしい。現在の森は、ホブゴブリン以上の上位モンスター、ゴブリンヘッドやゴブリンジェネラルがいる可能性も否めないという。結果として北の森は一時閉鎖し、ギルドマスターによって選ばれた冒険者パーティが探索を行うことになった。

「災難でしたねー、生きて帰れて良かったです。『いのちだいじに! 』が冒険者の信条ですもんね」

 某RPGゲームのネタかな?

「そうだったね。ほんと生きてて良かったよー」

「そういえば名前は言っていませんでしたね。危ないところを助けていただきありがとうございました、ヒューナ・ミトと言います! 」

「神村ナキです。新人冒険者同士、頑張ろうね」

「はい! 」

 そのまま、俺は宿泊している宿舎に戻り、付属している飲み屋に立ち寄った。腹が空いていたので食べ物を頼むことにした。

「女将さん、パンとスープください」

「ハイよ! 」

 五分ほど待つと女将さんがパンとスープを持ってきてくれた。

「さて、こっちのご飯はどうかなー」

 ある意味予想通りであった。パンは固く、スープは出汁を使用していない。やはり日本食は偉大だと感じる。適当に腹の中に注文したものを入れ、そのまま自分の部屋に戻りベッドへ突っ伏した。


「うっ、今何時だ? 」

 俺の枕元の目覚ましの針は7時を少し過ぎた場所を示していた。

「ヤバい! 学校遅れる! 」

 俺は高速で着替え、朝ごはん(パン派である)を口に加え家を出ようとした。

「行ってきまーす! 」

 そして息切れながらもギリギリ俺は登校時間に間に合った。

「おはよー。はぁはぁはぁ」

「うぃーす、ナキ、今日は結構危なかったな。お前、筋トレ後の俺くらいに汗でてるぞ」

「け、結構ギリギリだったね。そ、そそ、そういえば宿題やった? 」とニマ。

 もちろんお察しのようにやっているわけもなく、俺の顔は青白く染まり、冷や汗がダラダラとたれていた。

「いやー、今日数学っしょ、あの先生、宿題やってないと10分くらいネチネチ言ってくるんだよなー。言ってることは正しいんだけどさー」

「やばい、やってない」

「い、一応言っておくと、一時間目だからね。ち、遅刻ギリギリだから写す時間もないよ」

「......やべぇ、ちょっと持病が......」

 一時間目が終わるまで保健室に引きこもろうとした俺だが、その努力は呆気なく担任の前で散った。


 朝のSHRが終わり、数学の授業が始まった。

「では、神村さん、この問題の答えを教えてもらえますか? 」

やってないけど当たらないだろう、と思っていると何故か当たる。実際にそのようなセンサーが働いているのではないかと疑ってしまう。観念して忘れたと言おうとしたその瞬間、ノートの中に自分のじゃない、一枚のルーズリーフが挟まれていているのに気づき、それを取った。そのルーズリーフに書かれている字は綺麗で、女子っぽい字だった。そしてその内容は......

「5ルート15です」

「正解です、次回はもっと手際よくお願いします」

 隣を見るとニマが視線を飛ばしていた。俺が宿題をやっていたことに驚いているようだった。

「加祐さん、神村さんに熱烈な視線を向ける余裕があるなら、この問題、答えられますよね? 」

 やはり、一種のセンサーが働いているのではないだろうか。そしてトウは...

「えっと、あ、え、あの、その......」

 ニマの口調がトウと同じになっている。これはもしかして......

「やってないんですか? 」

「え、あ、いや、えっと、いや、別に......」

 案の定、いや、やはりやっていなかった。ちなみにトウは別の問題をやらされても、見事正解していたので、トウは宿題はやっていたようだ、えらい。


 だが、結局俺の宿題をやってくれたのは誰なのだろうか......俺は昼食を食べるためにクラスを出ようとすると、俺に強い視線を送ってくる人物がいた。名前は確か......叢雲カナさん。成績優秀で文芸部の部長であり、少し天然なところもあり、スタイルもよく、読モもやっているとクラスの男子が話していた気がする。クラスでも中心人物でクラスの女子派閥のトップである。ちなみにうちのクラスは女子の派閥が2つ、男子の派閥が2つあり、特に派閥の仲が悪いわけではないが、クラス内で固まりやすいのが別れているだけである。そして、俺、ニマ、トウは基本的に無所属というか、三人以外と、特に遊ばないのだ。

「えっと......叢雲さん? 」

「あ、はい! あ、えっと、ルーズリーフ見てくれた? 」

「え? もしかして叢雲さんが入れておいてくれたの? 」

「はい! 困っている様子だったから......もしかしてお節介だった? 」

「いや、すごい助かったよ」

「それなら良かった! 」

「......」

「......それじゃあね! 」

 叢雲さんはそのまま走っていってしまった。正直すごい可愛くて、言葉がうまく出てこなかった。

「おい、ナキ。お前叢雲さんと何があった? あと、顔か腹、どっちか選べ。尋問を始める」

「ナキ君、む、むむ、叢雲さんと何があったのかな? ささ、さっさとはは吐いたほうが、身のため、だよ」

 ニマは指の関節をを鳴らしながら右手で拳の形を作り、トウは筆箱からカッターを取り出した。

「ちょ、お前ら、落ち着け! 後、トウはカッターの刃をしまえ! 叢雲さんとは何もないよ。何なら今年初めて喋ったかもしれん」

「まぁ、そうだよな。ナキに彼女が、しかも叢雲さんみたいな美人の彼女ができるわけがねぇもん」

「そそ、そうだよね、ま、まぁ、尋問ていうのも半分冗談だったし」

「半分は本気だったのかよ......」

 兎も角、叢雲さんのおかげで、数学の授業は無事無傷で突破することができた。数学の授業はモンスターか何かかな?

 俺らはその後昼ごはんを食べに、ラウンジへ行くことになった。俺らが昼飯を食べに行くと、そこには結構人がいて、席が取れるか、微妙であった。

「う、今日教室、人多いな...ニマ、トウ、別の場所にしないか? 」

「あ、あ、うん。えっと、バルコニーか、らら、ラウンジかな? 教室以外で食べれる場所」

「じゃあラウンジ行くか」

 結果、ラウンジは人が物凄くいた、何なら

「あっ!ナキくんたち、席ここ空いてるよ! 一緒に食べよ! 」

 声のなる方向を見てみると、クラスメイトの女子が何人か一緒に座っていて、談笑しているようで、その中の中心と思われる人物がこちらに手を降っていた。

「いいんですか? 」

「大丈夫だよね、みんな! 」

 すると、一緒にいた女子たちが全員同意を示してくれたので、俺らは遠慮しながらも座らせてもらうことにした。

「ナキくんたちがラウンジ来るなんて珍しいねー」

「まぁ、クラス人多かったしね」

「そういう割には、ラウンジも人多いけど......」

「まぁ、誘われちゃったら、断るわけには行かないでしょ」

「そ、そそうだね。う、うん」

 あれ、少しトウの顔色が悪そうな.......

「お昼ごはんお弁当なんだね、叢雲さん」

「そうだよー、ナキくんたちもそうなんだね。ってか、なんでナキくん同じクラスなのに敬語なの! 以後私のことはカナって呼んで! あと、そのミートボールいいなー。昔からのやつだよね。それ」

「そうだよ、まぁ、ほぼ毎日入ってるから僕にとっては食べ慣れたというより食べ飽きたって感じだけど」

「...ねぇ、もしよかったらだけど私のハンバーグとミートボール交換しない? 」

「えっ? えっ? でもミートボールじゃあハンバーグとつ、つ、釣り合わわわないよよ? ! 」

「なんか、ボ◯ボーボ・ボー◯ボみたいになってるよ。別、私は気にしてないから、ほいっと」

 カナは箸で器用にハンバーグを俺の弁当に置き、ミートボールを掻っ攫っていった。そしてパクっと。

「「「あ」」」

 なぜか俺に嫉妬と憤りの視線が向けられた。ほか二人からも、いや、トウの顔が青ざめてないか? そんなにショック? いや、あれ?

「え、あっ、ありがとう? 」

「いや、ね、気にしなくていいよ別に」

「なんだこれ」

「う、うっぷ」

「あれ? トウ? トウ、大丈夫お前? え? 吐きそう? 人が多すぎる? あ、やばい、ナキ、俺こいつ保健室連れて行くわ。耐えろ耐えるんだ、トウー! 」

幸せな昼のひととき(周囲はカオス)を楽しんだあとには、相互補完するように、不幸の報せが待っていた。その発端は帰りのSHRで担任が発した言葉だった。

「明日は、小テストなので、皆さんもちろん勉強していますよね? 勉強してなかったらしてなかったでまあ、あなた達が苦しむだけですのでいいですけど。ちなみに補習はありますからね」

「げっ、マジかよ、全く勉強してないんだけど俺」

「ぼ、僕は普通にだだ、だ、大丈夫だと思うけど...ナキ君は? 」

「全く、全然、完全にヤババイ」

「つまりやばいんだな」

 その日は学校が終わり次第、帰って流石に勉強することになった。しかし、俺は今日の出来事に少し疑問を持っていて、あまり勉強が捗らなかった。そう、宿題の件と昼ごはんでの出来事である。もともと俺とカナはクラスメイトとして、限りなく最低限の会話することはあったが、そこまで親密な関係ではなかった。しかし、今日いきなり距離を詰めてきたことに強く違和感を持っていた、

「カナとは、特に接点はなかった......よな? 」

(『人生を異世界化』するということなので、その異世界で起こった事象を、現実世界に擬似的に反映させます......)

 もしかして...という推論は多く挙げられたが、これといった結論はどれだけ粘っても出なかった。悩みながらも、俺は諦めて、ベッドに入り、まぶたを閉じた。


 異世界だ。いつ来ても不思議な気持ちだ。30秒ほど前にあった疲労感はすべて消し去っていて、窓の外を見ると様々な武器を持ちながら歩いている冒険者らしき人や、荷馬を動かす商人などが外を歩いている光景には何回見てもなれない。先日通り、ギルドへ向かった俺はいつもの二倍ほど騒然としたギルドを見て、唖然としていた。

「ミオラさん、どうしたんですか? 大丈夫ですか? 」

「あ、ナキくん、こんにちわ、依頼を、受、け、に来、キ、き、たんですか? 」

「大丈夫ですか? 本当に! 」

「へへへ、徹夜勤務なんて受付嬢にとって日常茶飯事です。まぁ、昨日の夜から何も食べてないし、一睡もできてないんですけどね。あ、アハハ」

「何かあったんですか? 」

「あ、はい、これはナキさんにも結構関係するお話なのですが、先日話してくれた森でのホブゴブリンについて、A級冒険者たちが探索にいったのですが、そこで、隣接したゴブリンの巣窟が幾つかが見つかりまして、それでC級以上の冒険者はゴブリン掃除に緊急依頼という形で行ってもらっているんです」

「そういうパターンの依頼もあるんですね。ちなみにその依頼って僕でも受けられたりします? 」

「えー、大変申しにくいのですが、Dランク冒険者の方々は最低でも二人以上のパーティを組んでいなければこの依頼は受けれないんですよねー」

「あっ、そうですか。すいません無理言っちゃって」

「いえ、全然大丈...」

「お願いします!依頼を受けさせてください!」

「えっと、すみません、この依頼はCランク以上の冒険者限定なんですよね......」

受付嬢のミオラさんと話していると、隣のカウンターから、大きな声が聞こえてきた。そっちの方向へ向くと......

「あれ? もしかしてヒューナさん? 」

「え? あ! ナキさん! こんにちは」

「こんにちは、どうしたの声荒げて」

「どうしても、この依頼を受けたくて、理由は言えないんですけど。あの、本当にもしよかったらでいいんですけど、もし良かったら、一緒にパーティを組んでもらえませんか? お願いします! 」

「いいよ」

「やっぱ、そうですよね、だめですよね......え⁉いいんですか? ほんとに? 」

「いいよ。ということでミオラさん」

「はー。ナキさんとミトさん、危険だと思ったら即座に帰還してくださいね。死んだら元も子もないですからね」

「「はい! 」」

 そうして俺は新しい仲間とともに、前回逃亡した北の森へリベンジをすることになった。

「ほんと、向上心だけは高いんだから。でも、ゴブリンの巣に上位種がいる可能性も高いってA級の人たちが言ってたからなー。まぁ、いっか。寝よ」

ミオラさんはこのあとギルドに常設してあるソファで半日ほど爆睡した。同僚の配慮によって、起こされはしなかったが、その後上司にこってりと絞られたらしい。ミオラさんの寝顔、見たかったなぁ。


 閑話休題

 俺たちはこの間と同じ道を通り北の森へ行くと、道中同業者と思われる人たちがちらほらいた。

「いつもはこんなに人いないのにねー」

「緊急依頼だから、色んな人が参加しているんだよ。あ、ゴブリン達が出てきたよ」

「それじゃあ私が後衛で魔法でナキさんをサポートしナキさんが前衛をやるってことで大丈夫ですか? 」

「そうだね、もし傷を負ったら、回復お願いね」

「はい! 」

「ぐぎゃあああ」

 ゴブリンは俺らを見つけると獲物を見つけたかのように、二チャリと笑い、ご自慢の棍棒を振り回して特攻してきた。

「ハッ! 」

 俺は冷静にゴブリンの肩から腰まで短剣を振り下ろすと、短剣はゴブリンの体を深く切り裂いた。そして、運悪く俺はその返り血を体に浴びてしまった。

「うおぉ! 」

 ゴブリンはすぐ絶命したが、返り血を浴びた俺はミトに臭いから少し距離をおいてと言われ結構ショックを受けながら森を進んでいった。そしてその後俺らは臭いを振りまきながらもサクサクとゴブリンを狩り、順調に森の奥へ進んでいた。

「......思ったより簡単ですね」

「まぁ、たかがゴブリンだからね。ホブゴブリンもA級の人がやっつけたと思うし。簡単だね。しかも一体以上の上位種なんてこんなところにいないと思うし」

「あ、ナキさんここになんか洞窟みたいなのがありますよ。入ってみませんか? 」

「いいよ、なんかいいもの落ちてるといいんだけど......」

「そうですね、じゃあ私『ライト』の呪文唱えますね」

「やっぱ便利だよねー、魔法」

「そうですね。ですけど私は初級の魔法と一日に一回だけしか高位魔法を使えないことがわかって、パーティに誘われなくなったんですけどね...バカの一つ覚えなんて言われて...アハハ」

 どう返せばいいかわからなかった。

「でも、いいんです。私は魔法が使えることすら希少なんですから」

「そうだね、ポジティブ思考を持つのはいいことだと思うよ」

俺らが5分ほど洞窟を歩いていると、大きな空洞についた。空洞、というより広場のほうが正しいだろうか。部屋の脇には燭台が短い間隔でたくさん並んでいて、ずっと奥まで続いていた。そして入った瞬間、俺らが来た道が岩で塞がれ、逃げ道がすべて閉ざされた。そしてその奥から順に燭台に炎がついていき、奥から、大きな影、赤い目、強靭な肉体、そして見覚えのあるあの大きな棍棒が見えた。そう、ホブゴブリンだ。

「えっ? なんでなんでなんで? 冒険者が倒したんじゃなかったの? 」

「あれは、別の個体だ。けどそんなことどうでもいい、倒さないと死ぬぞ! 」

「はいいぃ! 矛の神よ、かのものに邪を葬る力を! 『シャープネス』! 盾の神よ、かのものを邪から守る力を! 『ストレングス』! 」

 俺はミトと一緒に戦い方のスタンスや戦術を事前に考えていた。そして結論として出たのが、前衛の俺に、ミトができるだけのバフを掛け、したら、短剣にオーラが付き、今度はつけているチェストプレートにもオーラが宿った。

「ハッ! オラッ! 」

 俺は短剣を大きく振り回しホブゴブリンの太ももに突き刺した。

「グギャアアアァァァ! 」

「効いてる! ヒューナさん、僕がダメージを受けたら回復お願い、それまでは遠隔魔法で支援して! 」

「了解! 」

 十分ほど相手の動きに気を付けながら、隙を見て攻撃していると、あることがわかった。

「こいつ、ボスなのにパターンなくない? 」

「へ? 何を言ってるんですかナキさん、高位モンスターは自我をある程度持つので、こいつは犬くらいの知能はありますよ! 」

「いや、そういうことじゃなくて...まぁいいか」

 そう、異世界はゲームではないのだ。モンスターには少しだが知能があり、一定の行動を繰り返すわけではないのだ。俺は再度気を引き締め、この格上モンスターと対峙した。

バフと再生魔法を繰り返し、そして敵の攻撃を避けつつ俺たちは着実にこのホブゴブリンの体力を削っていた。よくあるファンタジー物語ではこのあと秘奥義的な技で悪を使いサクッと倒してしまうのだろう。しかし、現実はそう甘くないのである。現実なのかはわからないが。

「フォーーー」

 ホブゴブリンが咆哮すると、周囲の壁の穴から10匹ほどゴブリンが出てきた。今までホブゴブリンと戦うだけで、精一杯だったのに、このままでは完全にジリ貧である。しかし、やるしかない、やらなければ死ぬのだから。

「ヒューナさん、僕にバフを掛けて雑魚処理にあたってくれ。ホブゴブリンをそっちには絶対に行かせないから」

「わかりました! 矛の神よ、かのものに邪を葬る力を! 『シャープネス』! 盾の神よ、かのものを邪から守る力を! 『ストレングス』! 」

 そしてヒューナが離れたことをいいことに俺は独り言をつぶやきまくっていた。

「うん、強いね。ヤッ! 」

 太腿へ一刺し、というか一薙ぎ。先程やっと鮮血が出て、だいぶ安堵した。ダメージを与えられている証拠である。俺はさっきからこのホブゴブリンの右足の大腿を狙って斬撃を浴びせている。チキン? 狡い? なんとでも言うがよい。モンスター相手に誰が正々堂々と戦わなければいけないと言った? そいつこそ早死しそうだ。

「やっぱお前、弱いな」

「グギャグギャグギャ! 」

「おっと、怒ってるね。知能があるから煽りも効果があるのは新しい発見だね」

 確か有名な漫画で言ってたはず、膝ついたら恥みたいなことを。あれは某海賊漫画で言ってた気がする。俺は腰を低くし、追撃の体勢を取った。そのまま右足を切りつけていく。しかし、ここでホブゴブリンがありえないような行動に出た。

「グギャー」

「グッ、っふ、何蹴ってきてんだ」

 今まで一度もしたことない蹴り技を入れてきた。戦いに順応してきているのである。俺は焦りを感じていた、まさかモンスターが戦いを通じて俺の戦法に対応してきているのだなんて、いつ誰が予想できただろうか。それまで棍棒を振り回し、振り下ろすことしか脳がなかったモンスターが足蹴りを覚えたのだ。俺は今まで以上に足の動き、棍棒の動きに警戒しながら一点を戦略的に狙っていた。

「ッ! 」

 俺の斬撃はホブゴブリンの太股の付け根を深く切り裂き、とうとう膝をつかせた。

「やっと膝がついた。そろそろ、余裕がなくなってきたんじゃない? はぁ、はぁ。まぁ、それはこっちも同じなんだけどね」


「ナキさん! 雑魚処理終わりました! 」

「ありがとう、あと回復どれくらい使えますか? 」

「はい、えっと、残りのポーション数からみて、あと2、3回が限界だと思います」

「わかった! 魔法はどうですか? 」

「高位魔法一回とバフ一回かけれるくらいは残っています」

「了解、じゃあ僕がもう片方の足を攻撃して、怯ませるから、バフを掛けて、高位魔法の詠唱お願いします」

「わかりました! 」

 そうして、バフを再度受け、ヘルスポーションを飲み干した。ちなみにこのヘルスポーションは現代でいうリ◯ルゴールドやド◯カミン、モ◯スターなどのエナドリの効能を5倍ほど強めた飲み物で、味はレモンのはちみつ梅干し漬け味である。美味しい。

「よし、ラウンド2だね。僕だけ回復するのは狡い気がするけど、準備も戦いのうちだからね」

「詠唱を始めます! 『神の星界に舞い降りる英傑達』」

「あとは、耐えるだけか。グハッ、ゲホッ」

 やはり、攻撃パターンが増えてきた。順応してきているのである。俺はホブゴブリンの鋭い蹴りをとっさに短剣で守ったが、すべてのパワーを軽減できるわけではなく、そのままふっ飛ばされて壁に激突した。

「が、ガハッ」」

「大丈夫ですか! 」

「詠唱に集中して! 」

「は、ハイィ! 『聖夜にはびこる魑魅魍魎を滅し漆黒に塗りつぶす』」

「グギャー? グギャグギャグギャ! 」

「チッ、気付きやがったか、だがもう遅い」

「『創造の炎からなる一片の蒼炎、いま今宵顕現させてみせる、撲滅炎』! 」

 すると、ホブゴブリンの足の下から、炎の渦が舞い上がった」

「ギャアァァァァーー...」

 そのままホブゴブリンは灰になり、棍棒と骨だけが残った。

「「おわった(りました)ーー! 」」

「あれ、もしかして最初から詠唱始めたら、速攻で終わったんじゃ...」

「...」

「ナキさん、ナキさん」

「...はい、なんでしょうか? 」

「忘れてましたね? 」

「申し訳ございませんでしたーー」

 そうだ、俺は雑魚敵が出るまで、完全に頭に血が上り、高位魔法のことなんて全く覚えていなかったのだ。

「はー、しょうがないですね。まぁ、でもナキさんが守ってくれなかったら魔法を完成させることはできなかったです」

「う、うん」

「なので、許してあげる代わりに...」

「ん? 代わりに? 」

「そう、代わりに私のことをミト、と読んでもらえませんか? 」

「ミトさん」

「ミト! 」

「ミトさん」

「ミト! 」

「ミトさん」

「...まぁ、今はさん付けでいいですけどいつの日か、呼び捨てで呼んでもらいますからね」

「はぁ...」

「さて、帰りましょうよ。ミオラさん、討伐したって効いたら絶対驚きますよ! 」

「そうだn...」

「「グギャァ!」」

「え? な、なんで」ホブゴブリンが二体も...」

「他にも普通のゴブリンやメイジ、シーフゴブリンまでいるぞ。クッ、ここまでか」

そうして、俺らはモンスターたちに囲まれ、死を覚悟した瞬間。爆発音がし、周りが煙で囲まれ、見えなくなった。

「おいお前ら! 、こっちだ! 」

 声の方向に無心で最後の力を振り絞り、ミトと走っていくと、冒険者パーティと思われる集団がいた。ああ、俺たちは助かったのだろうか。

「大丈夫か? !」

「は、はい! ありがとうございます! 」

「君たちがナキくんとミトさんであってる? 」

「はい」

「あの、あなた達は...? 」

「僕達はA級冒険者パーティ『時神の時計』、君たちの捜索とゴブリンの巣のゴブリン殲滅を委任されたんだよ。僕達でもあんなに感情的になるミオラさんは見たことがないよ。ねぇみんな」

 そうするとパーティの面々が深くうなずいた。しかもゴブリンの大群を処理しながらである。

「だから、帰ったらミオラさんにちゃんと謝るんだよ」

 それだけいうとその男性は他のメンバーに指示を与えた。

「前衛はゴブを殲滅、後衛は魔法でホブゴブに優先的にダメージを与えるように! 」

「「「「「「「「はい! 」」」」」」」」

 そうして俺らが救出されてから十分ほど戦闘していると、ゴブリンの大群も殲滅し終わった。俺らがあんなに苦労した怪物で十分である。複雑な心境である。パーティに同伴し、ギルドへ帰った後、ミオラさんにこってりと怒られた。

「あ・れ・ほ・ど無理をするなと言いましたよね! 」

「す、すいません! 」

「ご、ごめんなさい! 」

「もー、わかったならいいけどもう、無理しないでください。ね? 」

「「はーい! 」」

「返事だけはいいんですから、もー」

 その後、俺たちは助けてくれた人たちに礼を言い、解散した。

さて、今日の反省だ。今の俺は、圧倒的に火力不足だ。やはり、短剣というのはそもそも火力が低いのである。普通のモンスターを倒す冒険者でもショートソードくらいは持ってる。お金はある程度あるから、つぎ、こちらの世界に来たときは、武器屋に行ってみよう。


 さぁ、リアルワールドだ。そういば、今日なにかあった気がするが、覚えていない。何だったのだろうか。なにか大切なこと...まぁ、大したことじゃないだろう。忘れている時点で、そのレベル......あ、小テスト.......学校、逝ってきまーす。

 登校時間、俺は極限まで勉強に集中した。幸い、科目は数学だけだったので、そこまで多くはなかった。また、なぜ俺がこのように本気で勉強しているのかというと、実はこの小テストで7割以上を取らなかった場合、補習があるのだ。そうベリーベリーハードな補習が。 兎に角、俺は勉強しなければいけない。正直言って一夜漬けならぬ朝漬けでテストが受かるとは思っていないが、テストの傾向はもう3年間以上小テスト受けてるわけだから完全に把握している。うちの学校は理系文系がまだ選択できないから、テストも比較的勉強すれば取れる問題が出題される。つまり学校から支給される問題集の基本問題を解ければ7割はとれる計算となっているのだ。攻略法さえわかればある程度、点数を取るのは容易、その後学校につき朝のホームルーム、昼休みが終わるまでの時間、そして内職ができそうな授業を使い俺は数学の問題集を範囲内の基本問題だけで、二周完遂した。そしてお昼休憩の後の5時間目のテストに備えていた。

「ナキナキの実の能力者、ナキ。小テストどう? 」

「ニマニマの実の能力者、ニマ。そういうお前は大丈夫なのか? 」

「俺の点数か? 欲しけりゃくれてやるぜ・・探してみろ、テストの点数すべてをそこに置いてきた」

「お前の場合もともと置いても持ってもいないだろ」

 某海賊団漫画のネタを擦るな。

「ちなみにトウは? 」

「僕は......いつもどおりかな」

「ナキ様、トウ様、教えて下さい」

「俺も朝漬けだから。トウに教えてもらったほうがいいぞ」

「浅漬? 」

「そっちの浅漬けちゃう? 」

「盃? 」

「それはお前絶対わざとだろ。『ず』しかあってねぇし」

 俺は昼休みの間おにぎり片手に、ニマに数学を教えることになった。でも、これはよく考えれば結構、効率的な勉強方法である。実に学習定着率のラーニングピラミッドにおいて人に教えるという体験は自分が理解するのにも多大な影響があることが証明されている。

「この問題、この問題、そしてこの問題、あとこの問題も出る可能性が高いな」

「ほうほう、この問題の解き方はこうで、こうだろ? 」

「そうそう」

「で、でで、もよく出そうなも、もも、問題予測できるね、ナキ君」

「まぁ、もう三年この学校にいるんだぞ。お前らもだいたい分かるだろ」

「そ、そうなのかな? 」

「じゃあ俺が出ると思った問題の解き方簡単に説明していく感じでいいか? 」

「よろしくおねがいしますナキ先生! 」

「じゃ、じゃあ僕もニマ君のサポートをするね」

「ありがとうございます、トウ先生! 」

 昼休み後の授業開始時間ギリギリのギリギリまで勉強を教え、テストが始まった。

さて、ここで俺の脳内を見せてあげよう。

(一問目、これは解いたやつだ。簡単。

 二問目、これも解いた。イージー

 三問目、これも大丈夫。あれ、結構ヌルゲー?

そのまま八問目までは手際よく答えていった。そう、八問目までは......

 九問目、あ、初見の問題だ。無理だな。

 十問目、無理。

あとは計算ミスに気をつけて......)

 そんな感じで俺の中テストは七割はほぼ確定で取れているという望んだ結果となった。

「二マ、トウ、どうだったー? 」

「上々、かな? ニマは? 」

「俺もそんな感じ、まぁ、事前勉強のおかげで解けた問題がほとんどだったな」

「ぼ、ぼぼくもそうだと思う。ななナキ君が選んだ問題、結構で、出てたもんね」

「俺はまぁ、多分、七割は取れてると思う、計算ミスによるけど」

「ま、最後に信じられるのは己の計算力だよな」


 こんにちは異世界。

 さて、いつもどおり元気にクエストを消化しよう。生活費を、稼がなくては、ならないのだ。

「さて掲示板掲示板! 」

「あっ! ナキさん、おはようございます! 」

「ミトさん! おはよう、君も依頼を? 」

「はい! 一刻も早く、ランクを上げたいので」

「あら、ナキさん達、今日は早いですね」

「おはようございます、ミオラさん! 早くC級冒険者に昇格したいですからね」

「あ、その件なんですけど、ナキさん達は、もうC級冒険者昇格試験を受けることは可能ですよ」

「え? ? そうなんですか? 」

「ええ、ナキさん達は前回ホブゴブリンを討伐しました。C級昇格試験を受けるのに必要なのは、同級モンスター100匹以上狩るか、自分より高いランクを持つモンスターを討伐することよ。ほとんどの人はこの条件を自分より上級のパーティーに入れてもらって達成したりするんですけどね......」

「ナキさん、どうします? 」

「受けられるなら、受けてみたいかな、僕は」

「じゃあ、私も受けます! 」

「わかっりました、登録しておきます。ちなみにこの試験、10日後なので、入念に準備することをおすすめします」

「ありがとうございます! 」

「いいんですよ」

 それだけいうと、ミオラさんは満足げな顔をして、ギルドカウンターの奥の扉を通って行った。10日後というと...ちょうど定期考査の前日の夜じゃないか! うわぁ、大丈夫かな。

「じゃあナキさん、試験に向けて地下訓練場に行って、特訓しませんか? 」

「地下訓練場? 」

「知らないんですか? この街には、冒険者が訓練できる専用の練習場みたいなものがあるんですよ。たまに模擬試合とかも行われますね」

「へー、全然知らなかったよ。教えてくれてありがとう」

「へ? い、いい、いや、あ、ありがとう、だ、だ、だ、なんて」

 そして何故かミトの顔が赤くなっていった。熱かな? 頬を抑えてる。

 ......まさか......りんご病? !なわけないか...すぐに戻ったし。

「そ、それじゃあ行きましょうか、ミトさん」

「そうですね。あ! そういえば、今度、一緒に行きたい場所があるのですが......明日って空いてますか? 」

「どこですか? 」

「武器屋です。ナキさん、武器を新調したいって言ってましたよね」

「あー、武器屋ですか。たしかにいまの短剣だと、すこし物足りない感というか、心細い装備ですよね。

「そういうことです。なので、よかったら付き合ってくれませんか? 」

「へ? へ? へぇぇぇえぁぁぁ! 」

ただただ会話していただけなのに、なぜかミトの顔が首から頭の先まで、まるでトマトのように赤くなっている。大丈夫だろうか。

「な、なな、何を言っているんですか? !」

「ん? 一緒に武器屋行ってくれないって聞いてただけだったんですけど、もしかして用事がありました? 」

「あ、いや、そうですよね。わかっていますよ。もちろん。私はいつでもフリーなのでついていってあげますよ」

「ありがとう。ミトさん、いや、道がわからなくってね。道案内が必要だったから、案内してくれる人が身内にいて良かった」

「ボソッ...私は道案内係ですか...」

「え? なんか言った? 」

「いいえ何も。昇格試験さっさと受けたいですから、明日、待ち合わせ場所はギルドでいいですよね。

「はい! 」


「それでは中テストの結果を返していきます。皆さんご存知の通り、点数が七割未満のものは、強制的に補習を受けさせられます。また、中テストの日から、定期テスト二週間前となりましたので、これまでよりいっそ勉強に励むようにしましょうね」

生徒の中でどんよりとした雰囲気が生まれた。

「では、テスト返していきます。麻生さん、英西さん、加祐さん、神村さん、岸谷さん......」

 さて結果は...

 ニマはわかりやすくガッツポーズをしている、合格しているなあれは。トウは...大丈夫そうだ。安堵の表情をしている。俺? 俺は普通に大丈夫だった。八割は取れている。みんな補習は回避したな。やはりこの小テスト、攻略法さえ分かれば、点数を取るのは簡単なのである。

「攻略法が分かれば簡単......こんなことなんかなかったっけ? 」

 ……まぁ、いい。さて、そんな杞憂はおいておくとする。まぁ、一応結果聞いとくかあいつらに。

「ニマ、トウ、どうだった? 」

「ナキー! 俺は七割ギリギリセーフだった! マジで危ない! 」

「ぼ、ぼくは九割だから、だだだ、大丈夫だった! 勉強を教えてくれてありがとうね」

「うんうん、で、現実を教えるとね、ニマ、トウ、定期テストまで、二週間切ってるよ」

「ガチ? 」

 聞き返すニマ。

「ガチだよ」

 答える俺。

「マジ? 」

「マジ」

「「......」」

「あっ! ナキくん達! テストどうだったー? 」

「ん? カナさん! 普通だと思う、約八割くらい。カナさんは? 」

「んー私? 私はー、ドン! 満点です! ドヤァ」

 そう言うとカナは渾身のドヤ顔を披露してみせた。かわいい。というか、ドヤァって、自分で言うものなのか?

「あ、で、そう、相談したかったことがあるの......」

「ん? なに? 」

「ナキくん、今週の日曜日空いてる? 」

「ん? 俺? 俺は開いてるけど...」

「良かった。じゃあ、今週の日曜日、勉強会しない? 」

「勉強会ってあの勉強会? 」

「他にどの勉強会があるの? 」

「ちょっと待っててくれ」

( 「おい、ニマ、トウ、どうすべきなんだこれは」

 「何いってんだ? 一世一代のビッグチャンスだぞ。女子に勉強会誘われるなんてイベントそうそうあってたまるか」

 「そうだよ、受けなきゃ大損、末代まで」 )

「二マとトウも一緒だよね? カナさん 」

「もちろん! 他にも女子数人連れてくるからあとの予定は全部LANEでよろしくね! 」

 それだけいうと、カナは話していたグループのところへ戻っていった。

「「神様、ありがとうございます」」



 こんにちは異世界。

 そうして俺らは雑談をしながらギルドおすすめの武器屋へ向かった。

「ナキさんはどんな武器を使いたいと思っているんですか? 」

「ん〜...ミオラさんからはショートソードかもっと質の良い短剣、少し難しいやつだと曲剣とかがいいかもって。あとは槍も初心者には扱いやすいって」

 本当はサブマシンガンとかアサルトライフルとか使いたいけど...この世界の発展度的に、望みは薄いだろう。

「まぁ、そうですよね。私の場合は魔法が使えなくなったときに戦えるように杖はメイス代わりになってますね。弓とかの遠距離武器はどうなんですか? 」

「弓は......ミトさんも遠距離だから接近してきたときに対応できるよう、近接武器のほうがいいかなぁ......」

「え、いや、そんなことまで......考えてくれてるなんて......」

「相性補完できてないでやられるとやだからね...あ! ほら、武器屋の看板が見えたよ! 」

「ブツブツ......エヘヘ......え? あ、はいあそこですね。武器屋」

 そう言いながら武器屋の前に来たショーウィンドウにはきらびやかで輝きを放つ様々な武器が現世の服のように展示されていた。

「すごいなぁー」

「そうですね......大体ここら辺の武器だと30万ビスクはくだらないんじゃないでしょうか......」

「さ、さ、30万ビスク? 」

「命を守る武器ですよ。それぐらいはしますよ、いいものだと。ちなみに予算はどれくらいあるんですか? 」

「10万ビスクほど......」

「ならまぁまぁいいものが買えると思います。まぁ、兎にも角にも入ってみないと何も始まりませんから、行きましょう! あ、後ここの店主は男性ですからね」

「え? 」

 中に入るとやはり武器屋と言うべきか、様々な武器が飾られていた。短剣、大剣、レイピアや槍などのメジャーな武器だけではなく、モーニングスターやヌンチャクなどマイナーな武器までもが店頭に配列されていた。そして、その中で営業員と思われる人物がカウンターの奥に座っていた。その容姿は異世界テンプレのヒゲモジャドワーフでも、猫獣人の女の子でも、姉御肌の鍛冶師でもなく...

「ようこそ、エステル鍛冶屋へ。ご用件、ご依頼、オーダーメイドも可能です」

「え? 男? 」

「はい、男です」

 二十代前半の超美形な男だった。すこしガックリ。リアリティとはこんなもんだ。

「もー、エステルさん! なにナキさんに対していたずらしてるんですか? 魔力の消費も激しいんですから、やめてくださいよ」

「え? 魔力? 」

「うん。エステルさんは変身魔法を使えて、もちろん国家公認で制限とかはあるんだけど......」

「中身は? 」

「え? 」

「中身は何なんですか! 」

「ひゃあいいい、中身はただの中年のおじさんですぅ! 」

「グハッ...うっうぅぅぅぅ」

 あ、なんかダメな人がいる。というか、その変身が少しずつ解け始め、最終的におじさんが出てきた。やはり物事っていうのは理想通りに行かないのが普通なのだろう。不服だ。

「クゥー! ひどい目にあった。精神的ダメージがエグいって。で、ミトと...ちびっこ? 」

「誰がちびっこですか。今度はおっさん呼ばわりしますよ。というか、ナキです」

「で、ナキは今日はこのしがない武器屋に何をしに? 」

「武器屋に行く理由なんて、武器購入しかないだろ」

「まぁ、そうだよな。予算は? 」

「10万ビスクで装備と武器をお願いします。装備はなるべく軽く、武器は...僕でも持てそうな武器を何個か見繕って持ってきてくれませんか? 試し切りしてみたいです」

「わかった。じゃあ防具は革装備でサイズに合ったやつを持ってきてやる。武器は今持ってきてやる、ちょっと待ってろ」

「はーい」

 そうして待つこと20分ほど。旦那(? )が持ってきたのは意外と普通の武器が多かった。

「短剣とショートソードは希望したから、いいですけど、このモーニングスターはなんですか? 」

「いや、使えると思ってな」

「使いません」

「まぁ、いいけどよぉ。どうだ、短剣とショートソードは」

 ちなみに短剣とショートソードの違いは、先端までの刀身の長さである。

「んー...あんまり使いやすいとは言えないですね......」

「そりゃあ困ったな。うちにあるのはそれで全部だ。あとは他の武器を試してみるしかねぇ。やっぱモーニングスターか? 」

「なんでそんなモーニングスターを推すんですか! 怖いですよ」

「ではこの東方の国の剣、刀などはどうでしょうか、ナキさん」

 試し切りさせてもらってみた。切れ味はすこぶる良かったけど、値段が予算を遥かに上回っていた。おj、エステルはローンも組めると言っているが、あいにく一回で払いたい男なのだ。そして、好みの武器がないか店内を回ってみてはどうかというごもっともな指摘をミトから頂いたので店を回ってみることにした。

「へぇ、こんな武器もあるんだ。チャクラムとか、どうやって戻ったもの、キャッチするんだろね。下手したら指切りそうだけど......」

「そうですね。しかも戻ってこなかったらただの高い消費武器ですよ。あんまり、というか絶対オススメしませんね」

「もちろん買うわけ無いよ......」

「あとはこの大鎌とかですかね。でもこれも使いにくいですよ。間合い管理も難しいですし、刃のある部分も意味不明ですし......」

「......これにします」

「え? 」

「これにします! 絶対にこれにします! 」

「え? 今の話聞いていました? 今この武器のデメリットしか言ってなかったですよね。ねぇ! 」

「おっさ、ゲフンゲフン...エステルさん。僕にこれください」

「なんか中年男性に対するひどい暴言が聞こえた気がする......が、まぁ、聞かなかったことにするとして......あぁ、この鎌か、6万」

「装備と合わせて10万でどうですか? 」

「少し割に合わないな」

「でも、装備の整備とか、今後追加の武器とかここで買うと考えれば、それくらいはいいのでは? 」

「ナキさん? いきなり交渉ですか? !メンタル強くないですか? !でも、私からも、エステルさんお願いします」

「ん〜、まぁ、いいか。その代わり、今後も死なないでご贔屓にしてくれよ」

「「ありがとうございます! 」」

 エステルから装備を受け取り、鎌を受け取った俺らはC級試験に向けて、雑談しながら必要な消耗品の買い出しをしていた。

「では、教えてくれませんか? なぜ大鎌を選んだのかを」

「え、えっとですね...」

 さて、理由、それは俺が大鎌大好き人間だからだ。レイピア、メイス、ランス、片手剣、両手剣など、武器には様々な種類の物が存在する。しかし、俺はある日、見てしまったのだ。少女が大鎌を振り回し、敵をなぎ倒す姿を(もちろんアニメで)。その影響で俺は様々なスマホゲームで大鎌をメイン武器で使用していたり、大鎌を使うアニメとか見たりしている。そう、俺の中で大鎌とは一種の信仰対象なのである。ただ、そんなことミトに言える訳がない。何言ってるんだこいつ、と思われるだけだろう。

「そ、そう! 昔の命の恩人が大鎌を使ってたんです」

「そうですか。なんか嘘っぽいですがまあいいです。ほら、消耗品購入しますよ」

「はーい」

 その後は特に何事もなく、回復薬などを買い、解散し、家へ戻った。ベッドの横に、購入した武器や軽装備を置き、ベッドに入った。本当に風呂がないのは死活問題だと思う。そして今誰もいなくなって、冷静になったと思う。あれ? 今日もしかしてデートしてた俺たち? ロマンチックもなにもないけど、形式的に、客観的に見れば俺らがやっていたのはデートである。アワワワワワ。よし! 現実逃避(この世界は現実なのか? )して、寝よう。グッドナイト。



「あ〜ナキ、俺今日熱出てさー、いや、熱出しても行きたいけど、移したらまずいから今日は行けないわー」

「あ、なな、ナキ君、ごごごめんね、今日、塾のもも模試があって、行けないから、ボボ僕の分まで楽しんできてね」

「え? 」

 そして現在、俺は待ち合わせ場所に来ていた、一人で。そして案の定というか、予想通り、カナさんはすでに待ち合わせ場所に来ていた。

「カナさん、早いね。もしかして待たせた? 」

「うんうん、全然。でもごめんね~、なんかみんな今日ドタキャンするって言い出してさー。変だよね〜」

「あ、うん、急に今日用事があるって言い出して......」

「あはは、変なこともあるもんだね。それじゃあ、どこで勉強する? ファミレスかカラオケかカフェかな、近場だと」

「じゃあ一番近いところ......ファミレスにしない? 」

「はい! 」

 カナさんはいつもより全然可愛く見えた。もちろん学校でもすごい可愛いが、学校が普段見ないメイクした顔や、制服じゃないミニスカートにハイストッキング、上は可愛らしいセーターだった。こうして改めてじっくり見る機会を得ると、やはりカナさんがどれくらい可愛いか再認識させられる。純粋なで吸い込まれるような黒髪黒目、まさに大和撫子というべきだろう。しかも出るべきところは出てて、くびれるべきところはくびれてる。

「ナキくん、この水とこの物質は、一緒に入れるとどっちもビヨーンてなるから…」

「え? どゆこと? 」

「だから、この水とこの物質は、一緒に入れるとどっちもビヨーンてなるから…」

そして一つ判明したことがある、このカナという人物、人に教えるのが大の苦手であるのだ。感覚派の極みのような存在なのだ。

「でここダーってやってガーってやるとサッと答えが出るんだよ」

 うん、わからない、でも可愛い、すごく、すごく可愛い。

「あ、ナキくんいま集中してなかったでしょ」

「え? 」

「フフッ、集中しないと、メッ! だよ! 」

「ああ、うん、ごめん」

「わかったなら許してあげる! 」

「かわいい......」

「え? 何いってんのナキくん、可愛いなんて」

 なんか俯いてボソボソ言ってるけど大丈夫かな?

「か、か、可愛いて言われちゃった......」

「ん? 」

「ななななんでもななないよ」

「はぁ......」

「......」

「......」

「ちょっと、お花摘みにいってくるね」

「あ、うん」

こんな彼女がいれば、人生勝ち組なんだろうな......性格もいいし、品もあるし、外見は言わずもがな、面倒見も良い。こんな彼女がいれば......そんな煩悩と苦悩を頑張って振り払いながら、俺はどうにかこの勉強会(二人)を終わらせることができた......あれ、これって、もしかしてデートだったりした?


「ピピピピ、ピピピピ、ピピピピ、ピピピピ! 」

「あー、もううるさいなー」

 さて、気がついたら、定期テストはもう来週に迫っていた。こんなにも時間は早く、そして儚く散っていく。勉強は十分準備しているので、赤点はないと思うが、もし赤点など取ったら、親に見せる顔がないので、さすがに入念に復習しよう。登校中はライトノベルを読むのではなく、古文の暗記をして過ごす。学校では授業は学習範囲の授業が終わったため、復習が多いことから、カナやニマ達と一緒に勉強して過ごした。もちろん、放課後もである。

「カナさーん。この問題どうやって解けばいいんですかぁー」

「ん? どれどれ。えっとのタイプの問題はグラフを書いてみればすぐわかるよ。ほらここが、この座標で、これがこの座標だから、こういうグラフになるでしょ」

「ホントだ! サンキュー! 」

「ねーねー、ナキ、この問題なんでこうなるの? 」

「あ、その問題ね、俺もさっき解いたばっかなんだけど、ここのモル計算を解くときに、日を使えば、モルが求められるから...」

「それで体積が求められるのね。了解。サンキュー」

 こんな感じで俺らは仲良く勉強しながら、定期考査に対して対策を組んでいた。

その後はいつも通りみんな塾やら予定やら門限やらで適当な時間に解散し、俺は流石に帰ってから自習。日付が変わる前には勉強を終わらせ、就寝した。そんな一日が何日か続き、もう定期テストは明日という日に迫っていた。

 異世界は毎日毎晩行っていたが、ほぼ一日中、大鎌の使い方の鍛錬を行っていた。ただひたすらにギルドから借りた鍛錬書を見ながら技や体の動きを習得した。その結果、大鎌を使うに当たって最も大切なのが重心、だということがわかった。これは格闘技や他の武具でも同様だが、重心を置く場所によって、動きが効率化され、より強く、より早く動けるようになる。大鎌で重要なのは間合い維持、間合いの中に入られると、物凄く隙だらけになるため、重心の置き方の習得は最優先事項なのである。もちろん全てはC級昇格試験のためである。


 起きた。いつもどおりロッカーからシャツとズボンを取り出しパジャマから着替えようと思っていた俺は体に違和感を覚えた。少し体が疲れてる。そして目をこすり周りを見ると、いつぞやに買った装備と大鎌、そう異世界だった。

「なんで今日なの...」

「ナーキーさーん。C級試験、遅れちゃいますよー! 」

「え? あ、ああ、そうか、今日なのか。ちょっとまってください。今準備しますから」

「はーい。早くしてくださいねー」

 5分ほどで早着替えをし、買った装備と回復薬などをバッグに入れ、ミトと一緒に家を出た俺たちは早足でギルドへ向かった。

「...そういえば試験の内容って何なんでしょうね。ミトさん」

「はぁはぁはぁ、試験の内容ですか? それは当日までのお楽しみなんですよね。毎年お題が変わっていて、昨年は上級冒険者との模擬試合だったと思います。でも正直参考にならないと思うので、万全を期して挑みましょう」

「そうだね、あ、ギルドが見えた...いや人多くないですか? !」

「あーそうですね。C級昇格試験は毎年一番受験者が多いってミオラさんがいつだか言ってた気がします」

「あーそうなんですね。じゃあ、さっさとギルド入ったほうがいいですね」

「そうですね。早く行きましょう」

 俺らはどうにかギルドに入り、ミオラさんが死んだ魚のような目をしながら営業スマイルで冒険者を捌いているのを見ながら、壁で指示が出るまで待機していた。

「事前に登録しておいて良かったね」

「そうだね、あの長蛇の列を並んでたらと想像すると寒気がするよ」

 少し時間が経つとギルドのカウンターの奥からホブゴブリンの時に話したギルドマスターが出てきてギルド全体に響く声で指示を出した。

「C級昇格試験受験者の諸君! 地下訓練場に集合してくれ! 」

「おっ! 訓練場か。これは模擬試合かな」

「模擬試合...怪我したくない...でもC級になりたいし...」

「へ! 先輩たちボコボコにしてやんよ! 」

 各自そう意気込みながら、外の地下訓練場に向かっていった。約一名心配な子がいたが。

「ナキさん。我々も行きませんか? 」

「そうですね。ミトさん」

 訓練場について10分、時間が来たのか、ギルマスが冒険者を集め説明を行い始めた。

「今回のC級昇格試験の内容は...」

「どうせ模擬戦だろ...さっさと始めろよ」

 ギルマスが説明しようとするとガラが悪そうな冒険者が口を挟んできた。

「その通り、模擬戦」

 ここまでは想定通りというふうに、結構な人数の人が安堵した表情をしていた。あとから聞いた話なのだが、例年、模擬戦の場合のほうが昇格率は高いらしい。

「とモンスター討伐である」

 反応は多種多様であった。硬直する者や、逆に嬉しがっている者もいれば、混乱、そして憤りを感じているものさえいた。

「は? なんで今年二種目なんだよ! 」

 先程もギルドマスターの話を遮った男が苛立ちを見せながら質問していた。

「我々は考えたのだ。今日、モンスターの出現率は大幅に上昇している。ついにはあのホブ ゴブリンさえもあの北の森に出現した。したがって現在求められるのは戦闘力。それは対モンスターにも、対人戦にも求められる。身体能力を測るために模擬戦、そしてモンスターに対する対応力を測るために上級冒険者の監督と共にモンスター討伐だ」

「チッ」

「ではまずは上級冒険者との模擬戦だ。名前を呼ばれたものは、指定のコートで試合を開始してくれ。ではAコート、ニレン、Bコート、トール、Cコート、セイン、Dコート、アランドール。試合が終わったらまた次の選手を呼び出すので、呼ばれていないものは待機していてくれ! 」

「じゃあ、ナキさん、呼ばれるまで他の選手みていましょうか」

「そうだね」

「おいおい、女連れかー? なにしに来たんだよ、ここはデートスポットちゃうぞ! おい聞いてんのかクソガキ」

「じゃあ、ミトさん。見に行こうか」

「えっ、あ、そうですね」

「おい、待てやコラ! シカトしてんとちゃうぞ! というか嬢ちゃんえらく上玉だなぁ。そんなヒョロいやつと一緒にいるんじゃないで俺と一緒に行こうぜ」

 さっきのガラの悪い冒険者がミトの肩をつかもうとした瞬間、俺は大鎌を振り回し、男の首の前に大鎌を突きつけた。

「おい、何してんだ、てめぇ? 」

「ヒッ! っ、今日はこの位にしておいてやる! 」

「それは完全に小物が言うセリフなんだよなー」

「あ、ありがとうございます」

 ミトは感謝すると抱きしめてきた。よほど怖かったんだろう。手がまだ震えてる。こんな時、おれはものすごい邪念と脳内戦争を起こしていた。当たっているのだ、ナニが当たっているのだ。俺は高校生だ。もちろんそういうことに一定の興味はあるがここは公共の場だ。

「いや、パーティーメンバーとして抜けてもらうと困るからね」

「は、はい」

「じゃあ、見に行こうか、改めて」

「そうですね」

「Aコート、ナキ。Bコート、テーリ。Cコート、ミト。Dコート、ガノーン」

「あ、試合終わっちゃったんだ。早いね...じゃあコートに行こうか」

「はい! 頑張ってください! 」

「君もね」

「はいぃ! 」

 俺が途中でミトと別れ、指定されたコートに入ると、試験官らしき屈強なおじさんが木剣をで素振りをしていた。もう二十回ほど素振りをすると、一度剣を地面に置き、俺に向かって喋り始めた。

「試験は先程説明されたと思うが模擬戦、一発勝負だ。武器は木製のものをこっちで用意した。見たところ大鎌を使うようだな。じゃあ木製の大鎌でいいか? 」

「はい、大丈夫です。お願いします」

「ああ、いい試合にしよう。別に勝てなくてもいい。ベストをぶつけてくれ」

「はい! 」

「それでは模擬試験を初める! 」

 審判の声で各コートの模擬試験は始まった。

「行きます! はあぁぁ! 」

 まずは攻撃を相手に入れるところから。試験官だから勝てないのはわかってるけど一発でも入れられるように全力を尽くそう。俺は目線を相手に合わせたまま相手の首に向けて斬撃を浴びせていく。絶え間ない連撃を打ち込んだが、試験官のおじさんは軽々とすべての攻撃を木剣で受け流してみせた。

「こんなものか、今の若造は」

「ーッ! 」

 俺は今まで首を狙っていたが途中でフェイントを入れふくらはぎに向けて大鎌を振り回した。そして、入った。

「ほう、今のはなかなか良かったぞ。首に意識を向かせ、ふくらはぎに攻撃。儂のように反応速度が遅い者には強く刺さるだろうな。特に足を裂いてしまえば相手は移動できなくなる。他にも、薙いで使えば脛という痛覚が大きい部分に攻撃できる。合格じゃ」

 なんともあっさり、いや呆気なく終わってしまった。試験官によると、試験官は元A級冒険者で、D級冒険者とA級冒険者ではそもそも地力が違うため、一発入れられなくても認められるものはいるというが、実際に一発入れられたのは今までで俺だけだったらしい。しかもあのおじさんは、一回も攻撃せず、守りに徹していた。もし攻撃をされていたら、確実に俺は防戦、いやただただふっ飛ばされて終わってただろう。兎も角、一次試験は合格だ。ミトはどうだろうか、もちろん心配はしていないが。

「ナキさんー‼‼合格したよー! 」

「あ、ミトさん。おめでとう、僕も合格したよ」

「試験官どんな人でした? 」

「おじさん」

「私は可愛らしい女の子でしたよ。魔術師で、B級冒険者だって。勝てなかったけど炎の魔法良かったって言ってもらいました‼‼」

「いいなぁ......俺はむさ苦しいおじさんが防御に徹してすごい体力消費させられたよ」

「わ! ホントだ! すごい汗ですね」

「合格者はこっちへ! 二次試験、モンスター討伐の説明をする! 」

「「はい! 」」

 俺らが呼ばれた部屋に行くと、すでに二人ほど待っていた。

「最初の模擬試験グループの合格者と二グループ目の合格者か。では二次試験の説明を始める。お前らにはリザードマンとウルフを討伐してもらう。出現場所は沼地の奥と北の森の奥に出現する。討伐したらリザードマンの尻尾、ウルフの皮をメンバーの数分、討伐証明部位として持ってきてくれ。期限は明日だ。お前らには二人以上のグループを組んでもらう。そして各自これを持ってくれ。照明弾だ。念の為だが、何かあったら上空に撃ってくれ、すぐに駆けつける。あと、証明部位を買うなどの不正はすぐに暴ける。こちらには嘘を暴くための魔法具があるからな。それでは試験開始だ! 」

「ナキさん、行きましょう。ちなみにグループは二人で大丈夫でしたか? 」

「そうですね。二人以上のグループだから、二人分で終わるから、一番効率がいいんじゃないかな。まずどっちから行きます? 」

「そうですね...ギルドからはどっちも同じ距離ですけど...強いて言えば明日ギルドに帰ってきた時スライムのせいで臭くなるのは嫌なので、今日沼地行きませんか? 」

「たしかにそうですね。じゃあ、行きながら対策を組みますか? そういえばリザードマンてどんなやつでしたっけ」

「緑の鱗で顔がトカゲのモンスターです。あいつらは武器を使用してくるから。しかもまぁまぁ知能もあるから厄介です」

「つまり、湿地の硬い足場が少ない中、どうやって相手の攻撃を防ぎながらこっちが致命傷を与えられるか...だね」

「はい! 遠距離攻撃が有効なので、私はがんばります! でも、火炎魔法森じゃ絶対に使うなって言われたので、ウルフの方はサポートに回ります! 」

 ちなみにこの世界のウルフはハスキー犬より一回り大きいくらいの狼だ。とても凶暴で、群れを組んで行動するため、冷静になって対応することが求められる。

「じゃあまずは湿地だな」

 移動すること10分、スライムを細切れにした沼地が見えてきた。いつもなら沼が浅いところを周り、スライムを探し、狩っているが今日は違う。俺らは沼を周り、細い、だが沼が浅い道を木々を大鎌で切り裂きながら進んでいた。そして、大きな広場に出た。地面は結構柔らかいが、沼ほどではなく、雨の後の山道のような地面だった。そしてそこで待っていたのは一匹のリザードマン。その身長は2メートル以上あり、俺らを見た瞬間、腰にぶら下がっていた曲剣を突進しながら振りかぶってきた。

「ーッ! 」

 リザードマンからの剣を俺はとっさに大鎌の柄の部分で受け止めた。拮抗状態が数秒続き、リザードマンの顔が近づくと同時に、俺はバックステップを駆使して、間合いをはかった。

「ギャァ! ギャァ! 」

「矛の神よ、かのものに邪を葬る力を! 『シャープネス』! 盾の神よ、かのものを邪から守る力を! 『ストレングス』! 」

「ありがとう! 」

 俺は間合いを取りながらリザードマンの体に連撃を浴びせた。

「はあああああ! 」

 しかしリザードマンの鱗は想像以上に堅固であり、そう簡単に刃が入る気配はなかった。しかしあくまで俺はおとr...ゲフンゲフン、相手の意識をミトに向けさせないことが仕事だ。詠唱中のミトは完全に無防備状態なので、何が何でもヘイトを維持しなければならない。

「神の星界に舞い降りる英傑達」

「グ? ギ! グギャギャ! 」

 予想外のことが起こった。ミトが詠唱を始めた瞬間、リザードマンが俺を無視して、ミトの方に猛ダッシュした。

「想像のほの...え⁉きゃあ! 」

 ミトは大きくふっ飛ばされ、背中と大木が衝突した。

「グフッ、ゲホッゲホッ」

「ミト! 」

 俺はすぐさまミトのもとに駆けつけ、回復薬を飲ませた。幸い、吐血だけで大きな外傷は見当たらない。内臓が衝突したときに損傷したと考えられる。回復薬は即効性は高いが、このリザードマンは俺だけで処理しなければいけないだろう。俺は一週間の鍛錬の末、習得することができた唯一の技を試してみることにした。正直、リザードマンと対峙してみて、力の差があることは解ったが、相手は俺の連撃の速度についてこられていないことも解っている。

「柳流・大鎌・血咲き」

「ぐぎゃぁあ」

 リザードマンの肩、胸、腹に強い三連撃を行った「血咲き」。これはギルドにあった書物に書いてあった技で、相手の体を深く抉る三連撃を相手に与える技である。

「ミト! 大丈夫? 」

「回復薬を飲んだので、もう大丈夫です」

「よかったー」

「あ、初めて呼び捨てで呼んでくれましたね、私のこと」

「え、あ...」

「今後も呼び捨てでお願いしますね! 」

「じゃあ僕もナキでいいよ」

「いいえ、私は今まで通りナキさん呼びを続けます! 」

「え、今乗ってお互い呼び捨てになる流れじゃないの」

「流れじゃないんです。あと、面倒くさいので、敬語もやめてもらえますか? いい機会なので、もともとそんな喋り方じゃないですよね、ナキさん。だって戦闘中敬語で話してないですし......」

「ん? じゃあタメで話すけど......ミト僕より年上じゃないの? 」

「私ですか? 今年16ですけど......」

「同い年じゃん! 」

「え? そうなんですか」

「じゃあ遠慮なく敬語なしではなさせてもらうよ」

「そうですね。では気を取り直して、リザードマンの尻尾切断してしまいましょう。もう死んでいるのですか? 」

「ああ、完全に死んでる。切断は...短剣でいいか。よっと! 」

おれはリザードマンの尾の先端を切断し、渡された袋に入れた。

「さぁ、後一体で依頼達成ですね! 頑張りましょう! 」

「そうだね、最後まで油断しないようにね」

「もちろんです」

 しかしその15分位後に、偶然睡眠中のリザードマンを見つけ、ミトが魔法を詠唱し、そのリザードマンは上手にコンガリ焼かれることとなった。南無南無。そのまま討伐部位を回収、難易度的には午前の試合より断然に簡単だったと言えるだろう。さて、明日はウルフ討伐だ。ウルフは団体で動くため、見つけさえすればすぐ終わるだろう。ミトは火炎魔法を使えないため、少し戦力は下がるが、その分は俺がカバーしよう。俺はそのままこちらの世界の宿屋へ帰り、入念に手を洗った後、就寝した。


 時は来た! 定期考査だ。体調は上々、朝ごはんにはパン一枚とソーセージ2本、いつもどおりだ。しかし! 俺はいま片手に参考書を持ちながら食べている、そう、準備体操だ。多分、大多数の学生がこれを経験するだろう、当日勉強の闇を。ほら、学校への道、校門へ近づくにつれて、問題集や教科書、参考書を両手に下を向いている当校の制服をした生徒たちが......ああ、ほとんどの人の目が死んでいる。

「おはよー」

「お゛は゛よ゛ー゛」

「お、おお、おはよーナキ君」

「あれ? ニマゾンビみたいな声してない? 」

「て、て徹夜ベベベ勉強してたらしししいよ」

「あ、さよか」

「せやで」

「お! は! よ! ー! 」

「おはよう、カナさん」

「みんなテスト頑張ってね! 応援してるよ! 」

 かわいい。ああ、チカラ、ミ・ナ・ギ・ル。これが、女神の御言葉ってやつか。

「よーし、お前ら席につけー、もうすぐテスト始めるぞ」

 クラス内で緊張感が、走り回った。空気はピリピリとし、皆、参考書や教科書など何かしらを最後に暗記しようとしていた。そう、このテスト直前に起きるのは恒例行事『最後のあがき』である。

「机の上、筆記用具だけにしろー。みんな机の中になにか入ってないか確認してくれー。それじゃあテスト用紙配るぞ」

「二次関数、三次関数。解と係数の関係ブツブツ...」

「はい、問題集しまえー」

「あ、あぁ、あぁぁぁ! 」

「やばい薬やってるやつみたいになってんじゃん」

「ほら、そこも私語厳禁だぞ。じゃあみんなテスト用紙もらったな......テスト開始! 」

 先生の開始の合図とともに、四方八方から紙がめくれる音とシャーペンのカチカチという音が鳴り響いた。


「それではテストを返します。呼ばれたら取りに来てください。〇〇さん、〇〇さん...加祐さん、神村さん、岸谷さん...」

 俺は担任の先生からテストを返却してもらい結果を見た。数学92点、英語76点、科学79点物理69点、生物59点、歴史65点、公共52点、家庭科89点、現国87点、古文61点、保険68点となった。ニマは平均72点、トウは平均80点、カナに至っては平均95点らしい。化け物だ。赤点がなかったのは物凄く安心できた...

「ねぇ、ナキ君、もうすぐ夏休みだね」

「そうだねカナさん、なんかみんなで遊んだりできたらいいね」

「そうだ! このままみんなでカラオケ行っちゃう? 」

「残念だけど、また今度な」

「えー、まぁいいや。また、連絡するけどさ、本当にもしよかったらだけど、一緒に海に行かない? 」

え⁉

「え⁉」

「いや、別嫌ならいいんだけど......一緒に行けたらいいなって」

 ……周りからすごい量の視線を浴びている、以前の俺ならこんなシチュエーションに陥ることは万が一にもなかっただろう。クラスの一隅で限られた友達と遊ぶだけの高校生活が始まるはずだった。でも、あの女神との出会いが、俺の人間関係に少なからず影響を与えたのは事実なのだろう。

「カナさん。スケジュール調整してみるね」

「ナキ君......後でまた連絡するね! 」

 楽しもう、最初で最後の高校生活を、一回しかない高校生活を。青春、恋愛、友人、部活。俺の高校生生活は、まだ始まったばっかりなのだから。



 異世界、それは俺の高校生人生を完全に変化させたもの、それは僕に新たな出会いを作ったもの、そしてそれはもはや異世界は俺の生活の一部となっていて、ミトやミオラさんは本当に大切な人たちである。今日は表彰式、というか昇級式だ、無事に俺らはウルフを討伐し、討伐証明部位を回収できた。

「それではカムラ・ナキさん、ヒューナ・ミトさん、本日からあなた達は正式に冒険者ランクがCになります。Cランク冒険者になったため、このコインを差し上げます。」

ミオラさんがそう言うと、ギルドマスターが二枚の銀色のコインを持って渡した。そのコインにはでっかく大きくCの文字が書かれていた。

「B級になるとこのコインが金色に、A級になると虹色になります。ぜひ、A級を目指してみてください!ナキさん達なら行けると信じています!」

「「ありがとうございます」」

 晴れてC級冒険者になった俺らは、別日、掲示板を見ながら次の依頼を探していた。C級冒険者になった俺達の依頼の種類は段違いレベルで、多くなっていて、どれを選ぶか悩むほどであった。もちろん、D級の依頼を受けることもできる。

「どの依頼受ける?ミト」

「うーん......一日で終わるものでお金たくさんゲットできるやつかなぁ......」

「あの......もしかしてC級冒険者のカムラさんとヒューナさんですか?」

「あ、はいそうですけど」

 呼ばれた方向を見ると、海のように深い蒼の髪をツインテールでまとめた、少女が頭を深く下げていた。

「あの.....私の母親を助けてくれませんか?!」


 ......まだまだ異世界も、やることが尽きなさそうだ。


「コネクション」を読んでいただき、ありがとうございます。今から読む人は、読もうと興味を持ってくれたことに感謝申し上げます。これを書き終わったらアンケート作って、夏休みの宿題終わらせて、レポートを書かなければいけないNaKiです。現在これを書いているときに僕はwifiも電波も通らない場所で執筆しているので、物凄く不便な思いをしています。そんなことどうでもいいですね。うん。祖母の家がスイカ農園で、毎年お手伝いしに行ってるんです。今年もお盆はすごいたくさんのお客さんが来ていて、毎年行くたびにびっくりさせられています。そろそろ皆さんさっさとあとがき終わらせて夏休みの宿題やれとか、思ってるんだろうな......

 『ここからネタバレ含みます。』未読の人は読んでから見ることを推奨します。

 本作品はもともと著者、つまり僕が初めて執筆する作品だったので、本当に手探りというか、気合で進んでいたことが多かったです。しかも言い訳になるんですが私立学校なので勉強も結構忙しく......で内容については、自分の好きな要素含みまくったら、カオスになった、ていう感じですね。もともと現世と異世界を行ったり来たりできる系の作品が好きで......( ゜д゜)ハッ!オタクになってる!そんな感じで、バトル要素も入れながら自分なりに処女作として頑張って書いてみました。個人的に留意しなければいけなかったのは、登場人物の名前ですね。神村ナキ、ヒューナ・ミト、ジャン・ル・ミオラ、岸谷ニマ、他多数の人物の名前は自分のクラスメイトの名前をアナグラムしたものである。しかしこの登場人物の関係性は実際のリアルと全く関係ないです。最後にどうしても謝辞を書かせてください。

僕のPPを忙しい中手伝ってもらったスーパーバイザーF氏、精神的にフォローしてくれたH氏、他にも協力してくれたY氏、N氏、M氏、この場を借りて感謝を申し上げます。そしてここまで読んでくれた読者様、ありがとうございます!あと一言でもいいので感想ください!!!!!お願いします。m(_ _)m

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