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08 異邦者

 ブラッディグリズリーの身体が徐々にポリゴン状に崩れていくと爪や毛皮などの素材と共に、最初の戦闘でゴブリン達を討伐した際に出てきた紫色の石が現れる。レイヤが無言で何気なく手を伸ばすと石は再び自壊して光の粒子となり、レイヤの身体へ吸収される。


「ふう。まさかの大幅レベルアップと来たか。まあ、完全に中ボスクラスの敵キャラだったからな。色々すっ飛ばしてる気もするけど」


 そう言いながらステータス画面に表示された自分のステータスを確認する。



 PLAYER:レイヤ

 LV.10+

 JOB:拳闘士 

 所持金:0円

 HP(体力):70(10)

 SPスキルポイント:25(5)

 STR(筋力):25(5)

 DEX(技量):55(15)

 VIT(生命力):20+2(5)

 AGI(敏捷性):60+2(15)


≪システムメッセージ≫

【レベルキャップに到達いたしました。上限解放には特定のイベントをクリアする必要があります】


 機械的なメッセージがレイヤの頭の中で木霊する。


「レベルキャップあるのかこのゲーム。ま、すぐに開放できるんだろうけど」


 そう呟きつつ、ここに駆けつけたもう一つの理由である怯えた声の方向へ向きなおる。


「で?あんたら大丈夫?」


 そういうレイヤの目には、何度見ても作業着姿にヘルメットを付けた現代の土建屋としか思えない風貌のパーティがいた。頭上に表示されているレベルはレイヤと同じくらいの8~9と表示されていた。


「あ、ああ。助かった」


 震えが収まらない様子の眼鏡を掛けた男が声を振り絞って答える

 もう一人の小柄な女性プレイヤーは未だにカタカタと口をまともに開くのが難しいようだ。

 ダメージを負ったと思しい男性は出血の異常ステータスが点滅していた。


「君、初心者かい?よくあんなモンスターを討伐できたな」

「俺一人じゃないさ。連れ添いの奴らがいなかったら多分ミンチになってた」


男女を助け起こしながら答えると呆れた溜息がレイヤの背後から聞こえる。


「まったくホントになりかけていたくせによくそんなセリフ言えるわね」

「いいじゃんかとりあえず助かったんだから。それにちゃんとあんた等にも感謝はしてるって」

「目の前で死なれても困るからね。で」


メアリーの視線は作業員三人組に移り、怪我をしている男に懐から取り出したポーションをぶっかける。


「うわ!」

「じっとしてなさい。応急処置用の止血治癒ポーションよ」

「相変わらず雑だなおい」


レイヤのツッコミを無視しつつ、メアリーは三人組をじっと見る。


「やっぱり。()()()、プレイヤーね。その格好、確か大陸各地で活動しているROR(ロード・オブ・ロード)っていう連中でしょ?未開拓の場所に道とかを作るのに熱中しているっていう」

「え。何その特殊な癖」

「癖言わないでくれ!これが俺達の趣味なんだから!」


レイヤの真顔の呟きに震えが消えた眼鏡の男が声を張り上げる。

怒っているわけではないが決して侮られたくもない気持ちが伝わり、レイヤは密かに顔を顰める


(戦闘中に見た時はバグかと思ったが、普通に会話してる…?マジでプレイヤー?)

「はあ・・・()()()の奇行は数えきれないから今更とやかく言わないけど、こんな夜中に星霜森林(ここ)に何の用?」

(このエルフもやけに慣れた会話をしてるし・・・NPCにしては柔軟だな。っていうかさっきもそうだけど明らかに今、”貴方達”って俺とこいつらを指してプレイヤーって言ったよな。NPC達にはそういう認識になのか?それとも何か別の種族扱い?)


疑問が巡るレイヤを他所に小柄な女性が返答する。


「わ、私たち、王国とエルフの族長からの協同依頼で星霜森林に交易ルートを作れないかという事を依頼されたんです。それで下見調査をしてたんですけど・・・」

「本来の道から迷って気付いたら日が落ちてこのざまってわけさ」


怪我を負っていた男が回復したようで会話を引き継ぐ。


「初心者にも難しくないってリーダーが言ってたし、案内人も付けてたのに・・・あいつ、騙しやがって」

「ちょっとまって?王国と族長が交易ルートを作りたいですって?」


男のボヤキを遮る様にメアリーが口を挟む。


「私たちエルフとエルデガード王国とはあくまでもペガサス丘陵地帯の協定だけだったはずよ。森の外での交易はともかく、星霜森林に入るのは禁止にしている筈!!」

「少なくとも俺達にもそんな話は来てないな」


タルコズが同意する。するとRORのメンバーは顔を青くしてクエスト内容が記されたウィンドウを開いたようだ。隅から隅まで確認している様子を見ると「そんなはずはない!」と必死に自分達に言い聞かせているようにも見える。そして三人は顔を見合わすと、自分達のインベントリから羊皮紙を取り出してメアリーとタルコズに見せる。

エルフの二人が睨むように紙面を見て数秒。頭痛を抑えるように額を抑えてため息を付いた。


「これは偽物ね・・・けど高度に偽装されたモノよ」

「そ、そんな!」

「お前たちを案内した者がいたと言っていたな?そいつはどうした?」

「私たちが地図を見て話し合ってる間に姿を消したんです。それで探しているうちに・・・」

「迷い込んでさっきの熊にあったんだよ!!」


RORメンバーとエルフの押し問答に置いてけぼりのレイヤ。


(とりあえず、目の前で弁明している三人組が所属しているクランがウソのクエストを掴まされたという悪質な詐欺にあったという事は理解した。このゲーム、そんなことまでできんのか。すげえな)


そんな呑気な感想を心の中で述べると、頭をガシガシを掻いて話に介入する。


「あー、取り敢えずここ離れた方が良いんじゃねえの?この三人は悪い奴じゃないみたいだし、もしなんか企んでたとしてもいざとなればあんた等エルフの仲間が駆けつけて鎮圧できんだろ?なら当初の予定通りエルフの里に行かないか?」


埒が明かないと踏んだレイヤの提案にメアリーとタルコズは目配せをして暫し考える。

三人組も無実だと証明するためか、特に異を唱えずに黙っている。


「そうね。レイヤの言う通りだわ。ここにいたら他の魔獣に襲われるかもしれないし、本隊に合流しましょう」


その一言にRORメンバーは安堵の息を吐く。

そんな彼らに黎夜は声を掛ける。


「一応名前を聞いてもいいか?」

「あ、バイバス◎です」

「は?」

「ゼブラ筋です」

「へ?」

「マイルすとんだ」

「んん?」


自分の耳がおかしくなったのかと思い額を抑えて首を傾げるレイヤ。

慌てて眼鏡を掛けた男、バイパス◎が付け加える。


「俺達、道路やインフラに関する用語を捩った名前を付けてるんだ」

「そうです!ちなみに私は要は白線の事です」

「紛らわしいわ!!」


レイヤのツッコミが木霊した。

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