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03 遭遇

ゲームの設定については粗があるかもしれません

都度修正していきますのでご了承ください

「光のトンネルを超えた先は深い森の中だった、ってか」


 木漏れ日に満たされる森の中、レイヤは大きく伸びをしながら呟いた。

 木立を吹き抜ける風を肌で感じるし、耳を澄ませば風で木々が揺れて枝葉が擦れる音と小動物の足音や鳴き声が聞こえる。

 現実と錯覚する程のリアリティに嘆息しつつ放浪者(ヴァグラント)の名に違わず裾や袖口が摺り切りれてボロボロの衣服を纏った姿で、森の中を歩くレイヤは虚空をなぞる様な手つきでステータス画面を開く。


 PLAYER:レイヤ

 LV.1

 JOB:拳闘士 

 所持金:0円

 HP(体力):50

 SP(スキルポイント):20

 STR(筋力):10

 DEX(技量):25

 VIT(生命力):10+2

 AGI(敏捷性):25+2



「基本ステータスが確か10だったからDEX(技量)とAGI(敏捷性)に放浪者の補正が掛かってるわけか。SPはスキル発動に使用するポイントだったな。このVITとAGIに追加されてんのは防具か?」


 レイヤはそう言ってステータス画面をスライドさせ装備の項目を表示させる。


 装備品

 武器:《擦り切れたセスタス》

 武器説明:幾度となく戦いを潜り抜けてきた革帯。血と泥が染みついている。


 頭:《放浪者(ヴァグランツ)のゴーグル》(効果無)

 胴:《放浪者(ヴァグランツ)の軽鎧》(VIT+1)

 腕:《放浪者(ヴァグランツ)のグローブ》(VIT+1)

 腰:《放浪者(ヴァグランツ)のズボン》(AGI+1)

 足:《放浪者(ヴァグランツ)のブーツ》(AGI+1)

 アクセサリー:《放浪者(ヴァグランツ)の外套》

 防具説明:故郷を追われ当てもない旅を続ける流浪の民が身に着ける装具。身寄りの無い者達が唯一心を預けることができる存在ともいえるだろうこれらは、放浪者へ生きるための道標を示す。(一式装備するとアビリティ:放浪者の知恵が発動可能)


 発動アビリティ

 放浪者の恩恵(ヴァグランツ・ラック):HPが0になる攻撃を1度だけ無効にできる。発動後、一定時間AGI・LUCにステータス補正が付く。この効果は1日に一回発動可能である。


「何とまあ十分なオマケなこって。雀の涙だが少しでも足されるのはありがたい。防具のアビリティは国家特性が付与されない代わりってわけか」


 一通り現状の確認を終えたレイヤは再度当たりを見渡す。

 開けた一角を発見してそこへ赴き、草木を掻き分けながら辿り着くと遠くに広大な丘陵地帯が目に入る。

 なだらかな曲線を描いている丘には黄金の絨毯と表現できそうな程の見事な小麦畑が広がっており、粉を挽く機構が付いてるであろう立派な風車が点在していた。

 丘陵の奥には鋼鉄で補強された石壁に囲われた都市と、一際目立つ天に届きそうな程高い塔には剣と盾が金の刺繍で象られた旗が風に靡いていた。


「あれがエルデガード王国か。いかにもファンタジーRPG定番の見た目だな。おっと」


 不意にガサガサと近くの茂みから音が聞こえるとすぐさま臨戦態勢を取る。

 やがて耳障りな鳴き声が聞こえたかと思うと茂みから一羽の大きな鳥が飛び出してきた。


「おわ!」


 こちらを蹴り飛ばさんとする勢いで襲い掛かるダチョウに似た姿の鳥から慌てて前転回避で距離を取る。

 地面を抉りながら反転するダチョウモンスターは、斧のような形をした嘴を頻りにカチカチと鳴らし鳴き声を上げまたもや突進を開始する。

 今度は冷静に回避したレイヤの背後で木が薙ぎ倒される音が響く。

 見るとモンスターの突進と嘴による攻撃で、木の幹が圧し折られていた。


「クワァァァ!!」

「おいおいめっちゃ()()()に来てんじゃねえか。俺は喧嘩売った覚えはないんだが」


 空間に”アックスビーク”と名前が表示された興奮状態のダチョウモンスターは地面を蹴り、その名の通り(アックス)(ビーク)をレイヤに叩きつけようと頭を振りかぶる。


「早速スキル試させてもらおうか!」


 レイヤはここで【格闘家】の攻撃スキルの一つである”チャージステップ”を発動。

 敵の攻撃を躱すと同時に次の一撃に威力を上乗せするというスキルで、今まさに吶喊してきたアックスビークの横をすり抜けると同時に闘気(オーラ)のエフェクトが集中する拳を構える。


「どっせい!!」


 正拳の一撃が隙だらけのアックスビークの胴体に突き刺さる。


「ギュワアァァッ!?」


 苦悶の悲鳴を上げ、正拳突きの衝撃と自身が付けた勢いで横倒しに吹き飛ばされるアックスビーク。

 追撃を入れようとしたレイヤだったが、聞こえてきた別の鳴き声がその手を止める。


「新手か!?」


 その方角を見たと同時に、緑色の肌を晒した小鬼が3体藪から飛び出してくる。


「「「グギャギャギャ!!」」」

「今度はゴブリンか!」


 ファンタジーRPGのド定番モンスター”ゴブリン”の登場とそれらが手にした得物で襲い掛かってくる様子を見て再びレイヤは回避して距離を取る。

 すかさず石斧を手にした”ゴブリンウォリアー”と表示された個体が獲物(レイヤ)を逃すまいと一気に距離を詰めてくる。

 直線的な動きを体裁きでいなすと間髪入れず”ゴブリンアーチャー”の放った石矢がレイヤの頭部を射抜くために飛来する。

 ”チャージステップ”はまだクールタイムが終わっていないため、すぐさましゃがみ込むことで石矢はレイヤの頭上を通過していく。


「っと!危ねえな!!」

「グギイ!?」


 ”ゴブリンランサー”がしゃがみ込んだ隙を狙って放った槍による鋭い突きは、【格闘家(グラップラー)】の別の攻撃スキル”アームズブレイク”による闘気を纏った拳による裏拳によるカウンターで、穂先からバラバラに砕け散ったことで無意味となった。


「捕まえた!」

「グゲ!?」


 すかさずレイヤは武器を失ったゴブリンランサーの首根っこを鷲掴みにする。


「ちょっと雑に扱うけど悪く思うなよ!?」

「グゲ~~!?」

「グゲゲ!!??」


 レイヤはそのまま捕まえたゴブリンランサーを次の矢を番えていたゴブリンアーチャー目掛けてぶん投げた。

格闘家(グラップラー)】が持つ職能アビリティ”グラスプ&スロウ”により格闘ゲームのように相手の身体を『掴み・投げる』動作(アクション)に補正がかかり、ゴブリンランサーの身体は弾丸のように吹っ飛ぶ。

 投げられた仲間の姿と悲鳴にギョッと目を見開くゴブリンアーチャーは、驚いたことによる硬直でその場から動けずまともに吹っ飛んできたゴブリンランサーと衝突する。


「「グギャブへ!!」」

「グ、グギャァ!!?」

「よそ見してる場合じゃないぜ!!」


 ゴブリンウォリアーが仲間を心配する声を上げる最中、レイヤは素早くゴブリンウォリアーの背後に回る。


「グ、ギャヴェ!」


 断末魔の悲鳴と共にウォリアーの頭部はレイヤの踵落としにより、ゴブリンウォリアーのHP表記が0になった瞬間、熟れた果実のように弾け潰れた。


「う、想像より表現がリアル!」


 見た目はスプラッタ染みた光景ではなくポリゴンとモザイクノイズ表示で暈かされているとはいえ、やけに生々しい音と手応えに思わずレイヤは顔を顰める。

 すると起き上がったアックスビークとゴブリン2匹が怒りの声を上げる。


「クワァァァ!!!」

「「グギャァ!!」」

「おいおい何だよ。そっちが喧嘩売って(エンカウントして)きたんだろうが。逆ギレは流石に受付ねえよ」


 やれやれと言った様子で首を振ると、2匹と1羽が同時にレイヤに狙いを定める。


「つーかこれチュートリアルだよな?の割には中々ハードな状況じゃね?」


 ポツリとレイヤが呟くと同時に再びモンスターが襲い掛かる。

 先陣を切るのは強靭な脚力による速度のアックスビークによる突進。


「ほいっと!」


 しかし怒りで単調になっているのか、ゴブリンよりも直線的な突進だったためレイヤは脇をすれ違うように回避する。

 続いて砕けた槍の代わりに手近な枝を乱雑に折り取り即席の槍を作ったゴブリンランサーが跳躍し頭上から強襲を仕掛ける。

 回避後の隙を狙った一撃は確かにレイヤを捉えていた。


「ふん!」


 しかしレイヤは冷静にクールタイムが終了していた”チャージステップ”を発動。

 効果によりレイヤの身体はステップにより前進し、ランサーの一撃は虚しく空を切り枝の槍は地面に突き刺さる。


「グギャァ!?」

「よ、悪いね!」


 そしてステップにより一気に距離を詰めたことでレイヤはゴブリンアーチャーの目前に迫る。

 驚きと悲鳴が入り混じった鳴き声を上げるアーチャーだったが、そんなことお構いなしとレイヤに首をむんずと掴まれる。

 すぐさまレイヤは振り返ると地面に突き刺さった槍を何とか引き抜こうとしているランサーと、その奥で突進の勢いを踏ん張って殺し終えようとしているアックスビークを一直線に見る。


「グ、グギ」

「せー、の!!」

「ギャァァアアア!!」


 これから自分に起こることを悟ったアーチャーが抵抗しようと藻掻くがそれも虚しく、”グラスプ&スロウ”アビリティにより強化されたアンダースロー投法による地面スレスレの超低空飛行を味わうことになった。

 そのまま槍を引き抜こうとしていたランサーに再び激突し、団子状態でバウンドしながら地面を転がる。


「「グギャアアァァア!!!!」」

「クワァァァ!!!??」

「ストラァイク!!」


 勢いの付いたゴブリン団子は丁度制して硬直していたアックスビークの身体にボーリングのように衝突し、アックスビークの身体を下に折り重なるように倒れこむ。

 3体のモンスター目掛けて駆け込んだレイヤは”チャージステップ”の効力による闘気(オーラ)のエフェクトを足に集中させる。


「おおおっるぅぅらぁぁぁああ!!」


 赤い闘気(オーラ)が迸った脚による飛び蹴りは未だに見悶えている3体のモンスターを捉え、体力が無くなると同時にモンスターの身体はポリゴンをまき散らしながら弾け飛んだ。


「うん、綺麗に決まった!……お?」



 着地を決めたレイヤがモンスターの身体があった場所を見ると、そこには紫色の光る石のような物が落ちていた。

 それを拾おうとする前に石が独りでに砕け、中から光の粒子が現れるとレイヤ目掛けて飛来する。。


「おお!?お?」


 驚くレイヤだが、光の粒子はレイヤの身体の中に溶け込むように入り込むとレベルアップの表記が出る。


「成程、今のが戦闘終了時の経験値獲得するところってわけか」


 そう言いながらステータス画面を開くレイヤ。


 PLAYER:レイヤ

 LV.3

 JOB:拳闘士 

 所持金:0円

 HP(体力):60(+10)

 SP(スキルポイント):20(+0)

 STR(筋力):20(+10)

 DEX(技量):40(+15)

 VIT(生命力):15+2(+5)

 AGI(敏捷性):40+2(+15)


 どうやら職能と出自毎にステータスの成長具合が異なるらしく、DEXとAGIが良く伸びた半面、VITの項目はあまり伸びていない。

 一通りステータスの確認を終えたレイヤはコキコキと首を鳴らして肩を解すと、地面に散らばったモンスターの戦利品(ドロップ)を回収する。


 ・ゴブリンの破損した武器×3を入手しました

 ・ゴブリンの小角×3を入手しました

 ・アックスビークの斧嘴を入手しました。

 ・アックスビークの肉を入手しました。


 システムメッセージの表示を見ながらインベントリに収納されたアイテムをチェックしたレイヤは大きく伸びをする。


「さて、これからどうするか。取り敢えず王国に行っても良いんだが、無一文に等しい状態だったからこいつらから手に入れた金でも買い物すら碌にできないし」


 戦利品から得た通貨(コイン)が入った小袋の中身を確認しながらレイヤは呟く。

 ゴブリン3体とアックスビーク1体の合わせて300(ゴールド)の獲得金額だったが、レイヤとしては装備更新やアイテム補充、そして宿代を考えたらもう少し欲しいと感じたところであった。


「ひとまずここらのモンスターを倒して稼ぐとするか。あんまり深追いしないでいざとなったら逃げるとして、素材も集めて売れば少しでも金策なるし」


 今後のざっくりとした方針を決めたレイヤが歩き出そうとした直後、森の奥から轟音が響き渡る。


「いやあああああああ!!」

「え?何今の爆音?鳴き声、いや悲鳴か!?」


 爆発音と悲鳴が聞こえた方角を向いたレイヤは森から鳥が大量に飛び去るのを発見する。


「おいおい、行き成りイベント発生か?こちとら生まれたばかりのビギナーだってのに!」


 そう言いながらもレイヤは既に駆け出しており、声の主の元へ茂みを掻き分けて突き進む。


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