表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

基礎知識

 カルネルの発言に、理解が追い付かない。

 俺は一般人だ。ライトノベルを書くこと以外、そこいらの人間と変わらない、特別でも何でもない存在のはずだ。顔面偏差値の中間あたりに位置する程度の容貌を持つ、引きこもり気味でなんの特殊能力もない普通の日本人だ。


 それが、創造主……?


 「待ってくれ。俺が創造主って、何かの間違いなんじゃないのか?」

 「いや、間違いなくお前さんは創造主だろう。胸元を見ればわかる」


 胸元……?

 俺は死の瞬間に着ていた、お気に入りのTシャツの襟を引っ張り、自分の胸元を覗き込んだ。

 俺の胸元には、生前にはなかった、まるで中世の貴族の紋章のようなものが刻まれていた。

 これがなんなのか、見当もつかない。


 「カルネルさん、これは一体なんなんだ?」


 「なんだ、創造紋のことを知らないのか!?」


 カルネルは驚いて、俺のことを注視した。

 そして、テーブルに置かれていた謎の飲み物を一気に喉に流し込むと、落ち着きを取り戻して


 「待て、お前さんは創造主やこの世界についてどこまで理解しているんだ?」


 と、さっきまでのように柔らかい口調で質問してきた。


 「創造主とやらも、このよくわからん場所も、何も知らない」

 「……」


 カルネルは考え事をしているような仕草をしたのち、口を開いた。


 「ひとまず、説明が必要なようだな」


 そして、カルネルは長時間、詳しく説明してくれた。


 まず、創造主という存在について。生前物語を綴っていた人間が、何かしらの条件を達成した状態で死の危機に瀕したとき、自らを"オリジナル(起源)"と名乗る存在に選定され、資格を得たのちになる存在だとか。

 

 ーー俺たち以外にも創造主は存在するのか。

 

 死の危機に瀕することが条件らしいが、実際に死んだはずの俺が選ばれるというのはどういうことなのか、よくわからない。そもそもその"選定"とやらを受けた覚えがない。

また、物語を綴った人間が選ばれるから『創造主』というのは納得だが、条件とは何なのか。そこに関してはカルネルも知らないようだ。


 創造主として選ばれた者は、各々が創造紋と呼ばれる証と強力な力を与えられ、生前の物語が元となった世界を運営していく役割を任される。カルネル曰く、運営しなければならない理由もわからないが、ほかにやることもないのでやっているのだとか。


 運営していく世界についても、特異な点がいくつかあった。その中でなによりも奇妙な特徴としては、定期的に大災害が起こることが挙げられる。

 大災害といっても、土砂崩れや地震のような類ではなく、怪物、要するにモンスターが大量発生する現象らしい。数多くある世界ごとで呼び名こそ違えど、現象自体は共通して発生するらしい。

 

 ーーモンスターが発生するってことは、どんな世界観でも結局はファンタジーってことね……


 創作された物語がもとになっているとしても、世界観が共通しているだけだったり、逆に物語通りに事が進むこともあるらしい。また、基本的に十分な設定をしていなかった部分は補填されるらしい。

 何かの間違いで物語の範疇から世界が逸脱した場合、段階的に世界は終わっていくという。


 創造主の重要な役割、つまり世界の運営とは、世界がベースとなる物語から逸脱した場合に軌道修正をしたり、災害による被害を抑えることらしい。


 ただ、ゲームや作り物と考えてはいけない。世界は確かに実在する。生命が生まれ、終わっていく。営みがある。世界とはそういうものらしい。


 ここまで基本的な説明を受け、少しずつ状況を理解してきた。


 しかし、俺がオリジナル(起源)なる存在から、創造主に選ばれたこと、創造主の役割、世界の運営方法などを教わっていないことは、異例のことらしい。


 「そこが謎なんだ。創造主というのは、基本的にオリジナル(起源)から与えられる役割だ。もちろん、与えられる以上奴との何かしらの接触はあってしかるべきなんだ。お前さん、日向とか言ったか、本当に奴と会ってないのか?」

 「あぁ、これっぽっちもな」

 「それが本当なら、かなり異例の存在(イレギュラー)だぞ、お前さんは」


 こんなことになっている時点ですでに特異(イレギュラー)な存在だと思うが、と内心ツッコむ。


 「それより、基本的な説明を受けてなかったのなら、自分の世界への行き方なんかも知らないんだろう」

 「全然わからん……」

 「感覚的な話になるが、頭の中で強く『メニュー』なる言葉を意識するんだ。そうすれば、あとは説明せずともわかるだろう」


 ーーは?……今、なんて?

 

 今、威厳と貫禄を感じさせるカルネルの口から、あろうことか『メニュー』なる現代用語が出てきた。

 その様子から、カルネルは言葉の意味をあまり理解していないように見える。仮に選定の対象者に時間の概念が適用されていないとするなら、別の時代からも選ばれるだろう。つまり、カルネルもそういった人間なのかもしれない。

 しかし、意識しろと言われたからには、言われた通りにするしかない。驚きつつも、頭の中で『メニュー』と唱える。


 瞬間、唐突に、視界内に言葉通りの『メニュー画面』が浮かび上がった。

 

 「……なんで?」


 視界を覆わないようわざわざ半透明になった文字が、強烈な違和感を発している。

 いつぞやにプレイしたゲームのメニュー画面にそっくりなレイアウトだ。


 「見えたか?」

 「あぁ、恐ろしくはっきりと見えるよ」


 『世界名:ミーミル』と、何かの冗談のように自分の著作の名前が記述されていた。 

 異世界転生もののラノベみたいな展開を、半ば呆れつつ受け入れる。


 「そこから世界を渡ることができるぞ。どうすればいいかはわかるな?」

 「あぁ」

 

 生前、さんざんプレイしたオンラインゲームのフィールド移動みたいなもんだ。確かに説明を受けなくても、どうすればよいかは理解できた。

 

 「あっちに渡ったら、ここにはもう来れないのか?」


 俺は視界内のメニュー画面のカーソルを動かしながら、カルネルにそう尋ねる。もし何かあった時、逃げ込める場所があることは重要だ。


 「ここは誰の世界でもない、創造主用の休憩室みたいなもんだ。いつでも戻ってこれるぞ」

 「そりゃよかった。」


 言いながら、カルネルとともに小屋を出た。地を踏みしめ、やわらかい風を受け、雄大な自然を見ながら一呼吸。覚悟はできた。

 成り行きで拒否する機会もなかったとはいえ、なってしまった以上、創造主としての役割を果たすしかない。それが今の自分の延命につながるのだから。


 「色々教えてくれて、ありがとな」

 「また会ったときは、お前さんの世界がどんな世界だったか、教えてもらうからな」

 「わかった。それじゃ、行ってくる!」

 「達者でな!」

 

 いろいろと教えてくれたカルネルに、別れを告げる。

 自分の創り上げた世界へ意を決して渡ろうと、目を瞑り、意識内のメニューから転移キーを選択した、そのとき。


 ーー脳を焼き切るような、痛みが走った。


 ーーっ!?


 痛みのあまり叫ぼうとするも、口を開けるより早く視界が暗転し、意識は途絶えた。

話を作ることの難しさを身をもって体験してます。がんばろ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ