プロローグ ―人間サイド―
これからする話は、決して魔人には話してはいけない神話である。
そして、われらが教会にとっての英雄譚のプロローグである。
今から7000年ほど前、神たちはこの世界と相対する二つの種族である魔人と人間を生み出し、ゲームを始めた。3000年ほどさいころを投げ続け挙句、退屈しだした神の中の一人が、2つの種族の駒の中に特別な力を持つものを生み出した。今まであった退屈な形であった均衡が、別の形に変わる様を神たちは楽しみ地上に≪異能力者≫と呼ばれる特殊な駒たちを世界にばらまき始めた。それから4000年近く、二つの種族はどちらが勝つとも負けるともなく争いを繰り返し続けた。
最後の大戦から300年がたった時、我々人間は神に対して交渉を求めた。
『魔人を滅ぼす力が欲しい』と。
ゲームを楽しむ神の多数はそれではすぐにゲームが終わってしまうと、それを却下した。しかし、ただ一人、人間の異能力者を生贄に魔人を滅ぼしうる力を与えると約束した神がいた。無論、異能力者の力の偉大さを知っていたため、どの神も生贄など捧げられるとは思わなかった。が、次の年には異能者が一人捧げられ、その次の年にはまた一人と捧げられたのだった。
彼らはただ異能者であるだけではなく、異端者であった。魔人との友和を望むものたちだった。
狂っているが面白い、と神たちは崩れ変わりゆくゲームの均衡と我々の活躍に胸を躍らせるのだった。
そして今、新たなる「力」を手に入れた我ら人間が魔人をうち滅ぼす時が来たのだ!