???登場。えぇーご町内の皆様ぁ、ファイヤーボールにご注意下さい
日は落ち、装備していたマリアンをおんぶし、身を潜める。
マリアンは全く起きる気配がない。まるで屍のよ……。
暗黒と言って言い程、今日は暗い。
暗くてバレないのは助かるが、代わりに見通せない。
騎士達の巡回する足音。あまりにも数が多いので、城内の騎士も来ている事が推測される。
「やっぱり、アルちゃんとマリアンの魔力の匂い。何してるの?騎士さんが、マリアンを探してるょ」
背後から流れる声はどこかゆるい。
闇から、人が姿を表す。小柄な人だ。
段々と見えてくる風貌。
魔法使いらしい使い込まれた黒のローブ、
黒の三角帽子を身にまとい、
肩まである黒髪、だるそうな黒目、
四色ブラックの知った顔だ。
4Bのミーナ。
魔道学校四年B組、あるいは、ある国の筆と間違えそうだが、通り名だからしかたがない。
もし、ミーナが男だったら…………Bだマンだ。
ミーナは戦友である。
魔法の知識や魔力はこの国随一であり、その才能は勇者と共に戦える程だ。
ただどんな時も、動じない、体力ない、帰りたいの帰宅特待生である。
自分の唇に指を当て、シーッと合図を送る。
ミーナはこくこくと頷き、簡単にこれまでの経緯を説明した。
「マリアンが起きてさえくれれば、事は収まる」
「わかった。ミーナ手伝う」
ミーナは俺の背で寝ているマリアンの頬を、ペチペチとを叩き出す。
痛そうではないが、止めようとすると、
「やっぱり。魔力がすごく乱れてる。これはおそらく精神的な物が原因。たぶん、今日は起きない。」
………。
嘘だピョーンって言って魔法使いミーナ。
嘘だと言ってま、ま、魔……マミー(略)
ここで頭脳明晰勇者、重大なる事に気づく。
ハイッ、今ピーンッと来ました。
マリアンじゃなくても、ミーナに、俺が元勇者だと証人して貰えばいいじゃん。
焦っちゃってごめんねぇ。
「ミーナ、俺を元勇者だと騎士達に証人してくれないか?俺が元勇者だとわかれば事は済む」
ミーナは、こくこくと頷く。
「わかった。大丈夫。」
ヨシッと気合いをいれ、騎士の灯りに向かっておーいと声をかけるが、遠い。何より、暗い。
「ミーナ、騎士達の所まで、足元を魔法で照らしてくれるか?マリアンを背負っているから手が使えない」
ミーナはまた、こくこくと頷く。
「わかった。大丈夫。」
おぉーいともう一度言うと、騎士達は気づいたようだ。
灯りが近づいてくる。
「ミーナ灯りを頼む」
こくこく。
ドヒュンッ…………。
音と共に火の玉が駆けた。
わぁー目の前が、すっかり明るいなぁ……さすがミーナ。
海。騎士達の前に、火の海が広がってるね。
ミーナさんを横目で確認する。
俺が頼んだのは足元を照らす灯りだよね?
攻撃魔法なんて頼んでないよね?
なーに、一人で手配者ランクSにしようとしての?
瞳で訴えてみたが、ミーナは気にしていないようだ。
「間違えた」
……以上。
騒ぎを駆けつけた騎士達が集まって来る。
足音も近い。
「ミーナ、俺は逃げるぞ。もう騎士に何を言っても信じて貰えそうにない。このまま街を抜け、ほとぼりが覚めるまで身を隠す。明日以降、マリアンが目覚めれば状況は間違いなく変わる。お前はどうする?」
「アルちゃんと、行く」
頷く。
「わかった。反対側の道から進んで門を出よう。ミーナ、暗いから灯りを頼む。今度は集中して、間違っても人に向けるな」
「わかった。今度は本気でやってみる」
俺達はゆっくりと歩き出す。
ミーナは集中している。今度は無詠唱ではなく、詠唱している。
暗闇を歩き続けるが………。
それにしても長い。詠唱が長ーいよっ。
不安だが、ミーナは詠唱を終えた。
パーッと街全体が明るくなり、空を見上げる。
おかしいな、夜なのに太陽が見えるよ。
まんまるなお月様と思ったら、まんまるなファイヤーボール。
ボール………じゃないよねこのサイズ、巨大な岩石か隕石?
「ミーナ、これ、落ちてこねぇだろうな」
ミーナはこくこくと頷く。
「大丈夫。今の所」
デッドワード入ってるじゃねーか。
イチオシかな?