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装備しちゃいけない者?を装備しちゃいました

 俺の声は、教会内に響いた。


 おかしいな。今俺、すごく、物凄くかっこよかったよね?勇者様ここにアリって感じだったよね?


 騎士は動じること無く、剣を構えている。

 集中して聞いていなかったのだろうか。


 剣先を見て、あれっと思う間もなく、目の前の風景がかわる。


 肉体にピッタリとフィットしたシャツを着た、筋肉質な男女。


「ワーォ、良く切れそうな剣だねハニー」

「ええ見てダディ、今日紹介する剣、これ一本でなんと、スライムから魔神、人間だってスパッと気持ち良く切れるのよ」

「なんだって!?そりゃー女神様もビックリだ」

「私でも斬れちゃう所を、今からあなたに見せるわ。

 これを見たら、ダディ、あなたは必ず欲しくなるはずよ」


「そして、あ、な、た、が思っているより」


「安いはずよ!今ならなんとこの―――」


 止めろ、止めろ、俺がわーぉだよ。

 男女共々ウィンクまで再現しやがって。

 極度のストレスのせいか、剣の実演販売を見てしまっていたようだ。


 隙ありッと騎士が剣を振るが当たらない。

 避けつつ後ろに下がる。

 騎士達と僅かながら距離が開ける。


 マリアンの所まで下がれた。


 マリアン、すまないが人質として、盾にさせて貰う。


 マリアンの首根っこを左手で掴むが、彼女はまだ熟睡している。


 気持ちの良いピロンッと言う音と共に音声が聴こえる。


「ステータスが更新されました」

 装備「聖女の盾」

 防御力+2

 特殊効果

 聖女を傷つけてはいけません。


 ……マリアンの身を盾として「装備」……していた。


 人様を装備って、物扱いっておかしいよね。

 神聖な名前だけど、「聖女の」じゃなくて「聖女は」だよね。

 まず、特殊効果ではないよね。いけませんって誰の言葉よ?

 防具屋で、新作の聖女入りました、って売ってる店なんて見たことないよね。



 騎士達が聖女様を放せと言っているがお断りだ。

 聖女の盾のお陰で、騎士達に動揺が見える。


「聖女の盾の特殊効果発動。聖女様を、傷つけてはいけません」

 盾にしてもいけません。と自分にだけ言っておこう。


 騎士達の合間を縫いながら走り抜ける。


「えぇー。こちらの聖女様がめにはいりませんこと?ふふっ」


 卑怯とかの罵声が飛ぶが、大人数で来ようとしたお前らもまた、卑怯なんじゃいぃー。


 聖女の盾を装備し、元勇者である俺の速さについてこれる者はいない。


 騒がしい教会を後にした。



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