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汚ばーばばんびーの

 これまでの発言から、マリアンが教養を受けていない、または、変な教わり方をした事は頭が痛い程わかった。


 悪気があった訳ではない。間違いは正せばいいじゃないか。強い意思を持て俺。


 マリアンの両肩を掴む。

「マリアン、良く聞いてくれ。人のお金を取っちゃダメなんだ。」

「はい。だから寄付と言う事にしました。」


 何か問題でもありましたかと言いたげなマリアンは、きょとんとしている。


 本人の了承のない寄付ってこの世にないんだよマリアン。天使の笑顔が悪魔の微笑みに見えるよ。


「勇者様の多大なる慈悲に、神も喜んでいる事でしょう。」


 慈悲ではなく、マネーの方の自費だね。それ。


 わかる。わかるよ。救える命、救いたいよね。

 たまには聖女様でも、羽目を外したいよね。

 その通りだと思うよ。

 ただ、人のお金を勝手に使ったら不味いでしょう。


 まずは、俺の(いのち)を救って下さい。


「言い難いんだが、本人の了承のない金を使う事は罪になるんだ。あのお金は大事なお金で、マリアンに寄付出来る物じゃないんだ」


 マリアンは口に手をあて、信じられないと呟き、段々と目がうるうるしていく。


「まぁ…私は何て事を…そうだったのですね。婆やは……寄付にすれば問題ないと言っていたのですが……」


「婆や?そいつがそう言ったの?」


「はい……困っている私を……勇者様は見捨てる事はないのでと言って下さいました。あの日の事を思い出し……私は…」


 その場に崩れ、泣き始めたマリアンの言葉は聴こえにくい。


「婆やは教会の寄付金を管理し……」


 マリアンがチラリと後ろを見たのを、俺は、見逃さなかった。

 振り返ると、後ろには俺を案内した老婆が端からこちらを伺っている。


 マリアンの心を汚したのはお前だな?

 婆さんならぬ、汚ばあさん。


「ばあさん、やってくれたなあ。俺の金を返せ」


 声を張り、強い口調で言った。

 ばあさんは、盗んだ事がバレたと悟ったようだ。

 だが、悪びれる素振りもなく、むしろニヤニヤと笑っている。


「はて?勇者様の金とは?もしや、寄付した物を返せとは言われますまい。」


「寄付?マリアンに空間魔法の干渉までさせて奪っといて、何を言いやがる」


「勇者様、証拠もないのに、そのような事を神の前で言ってはなりませんて」

 ケッケッケと気味の悪い笑いかたをしている。


 神様、女神様よ。見てる?今の現状を見てる?

 あんたの信者はどうなってんのよ?


 おーい留守ですかー?

 それとも、出たくなくて居留守ですかー?


 やれやれだぜ。


「証拠ならあるぜ、ばあさん、空間魔法に干渉した証拠であり、寄付していない俺が寄付した証拠。爪がガバガバなんだよ」


 勢い良くマリアンの直筆の紙を見せる。

 これが無かったらワンダーランド・ニワニワ・ワニワニ――――る。

 略してパニックだったぜ。


 年貢の納め時だなと思った時、ばあさんの様子が変だ。


 先程までの笑いから、今度はグッ……グッと喉の奥から声を絞り出していて、不気味さが怖さにかわる。


 悪魔に変身するのではないか、と思われた時、ばあさんはツバを撒き散らしながら叫ぶ。


「神に……使えて数十年………私だって男達にちやほやされたいんじゃー。」


 語尾が教会内に反響し、こだましている。


 えっ何?

 ここの信者さんは欲望に忠実すぎないか?

 ばあさん、欲望のバランスおかしいよね。


 明らかに性格がマリアンに移ったよね。

 いらない所似ちゃったパターンだよね。


 もうヤダよこんな宗教。

パンチが弱い

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