消滅した町 §15 境目にて
現世すなわち現実世界と重なり合い、隣り合う世界〜幽界。
広大な幽界のうち現世と重なり合う領域を、『幽界の境目』とも言う。
『幽界の境目』からは、現世を視認出来る。が、不思議な事に現世からは、特殊な感知能力や魔法などの助けがない限り、『幽界の境目』を見る事も触れる事出来ない。
幽玄なる霧に満ちた薄暗い世界。
ゆらゆらとゆらめく何か。
霧の狭間には、重なり合う現世の様子が伺える。
幽界には、現世の理りとは異にした様々な『生き物』が生息していた。
幽界ギモーヴも、幽界に巣食う奇妙な生態の『生き物』の一つだ。
現世の親戚たちとは違い、奴らは魔力や精神力などを喰らう。
幽界の門をくぐると、そこはもう異世界。
現世側ではうっすらとしていた幽界ギモーヴが、はっきり見える。
逆に現世の存在が、透き通って見える。
まとわりつくギモーヴを、サラっちが駆け抜けて振り落としたわ。
脱落したギモーヴを、クラリスちゃんが槌矛で殴り倒す。
パブロも長めの片手剣で、ギモーヴを斬り伏せるの。
サラっちは、振り落とした後、間合いを取りつつ長束の片手半剣で斬り伏せてるわ。
もちろん、あちしも小剣を振り回してるわよー!やっちゃうんだからねー!
魔力や精神力を吸い取るのは厄介だけど、強さはいつものギモーヴと変わりないわ。簡単に倒せるの。
すぐに片付いたわ。
「ふう、何とかなりましたね」
微笑むクラリスちゃん。
「そうね。クラリスちゃん、いなかったら危なかったわね」
「感謝します。クラリス」サラっち。
「待って下さい。新手が来ます」パブロ。
やだわ。また来るの。
ぴょんぴょん跳ねながら、霧の中から群れで向かってくるわ。
「奥の手を使います。少しの間、離れていて下さい」サラっち。
また、何をするのかしら?
武器を構えず、つかつかと歩いていく。
集中してる。気パワーかしら?違うわね。呼吸法を使ってる様子が無いのよー。
十分に惹きつけて、何かを放ったわ。いえ、正確には何かを放った様に思えたの。何を放ったかは見えなかったもの。
バタバタとギモーヴ達が倒れていったわ。
「お見事ですわ」クラリスちゃん。
「何をしたんです?」パブロ。
「サラっち、異能持ちだったのね。平気だったのは精神防御系かしら?それにクラリスちゃんは、結界術師でもあるのね。だから空間操作術を使えるのも納得なのよー」
「バレましたか」
「気付かれましたわ」
てへぺろな2人よ。
「異能と言うのは、恩寵や気パワーの様なものですか?」パブロ。
「少し違うけど、似たようなものよ。異能持ちも、結界術師も、異世界からの来訪者に狙われやすいのよ。良いことばかりじゃないわ」
「なるほど。そう言うことなら、ここだけの話にしておきましょう」パブロはホントに紳士ね。
「感謝する」サラっち。
「よしなに」クラリスちゃん。
現世側で、他のメンバーが異変に気付いた様子が見えるわ。
お嬢も目が覚めた様で良かったわー。
門をくぐって、ジョナサンがこちらへやって来たわ。
「何ここ?どういうこと?」
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4人が、お嬢に感謝されながら、ハグされてる。
何かやばい事になりかけてたっぽいぞ。
幽界って、異世界だよね?
サラディオールの兄さんが、灰色のギモーヴ、いる人いないか確認してる。爺ちゃんとクラリスの姐さんが欲しがってる。
灰色のやつは食べれないらしい。俺は要らないかな。
今晩の見張り、早番だし、ちょっくら見廻ってくるか。といっても野生動物しかいないんだよな。ギモーヴは野生動物じゃないか?いや、待て。そもそもあいつら動物か?生き物かどうかも分からないな。
ん?誰かいるな。あのシルエットはケロキチか?
「おーい!ケロキチ!お前どこに消えてたんだよ!」
ケロキチらしき人物に近づく。
あれ?違うな?何人もいるぞ。別のケローニンかな?
それはケローニンとは似て非なる存在。
体躯の大きなガマのヒトガタ。
「カタカングン!!」
「キシャー!!!」
「敵襲!!!!カタカングン!!複数!!」




