消滅した町 §13 釣り堀にて
現地到着して3日が経った。
この辺りは生きたギモーヴが多く生息しているらしく、何度も遭遇した。
オオカミモドキの遺体にも生きたギモーヴが群がったりしていた。
他にはイノシシモドキ類がうろついていた。コイツらは、獰猛そうな姿とは裏腹に、草や木の実などを主食にしてるらしく、生きた獲物には、あまり興味を示さない。だたし、腐肉を喰らう奴らもいる。食べれるなら、何でも食べてしまうみたいだな。
毎日、生きたギモーヴを追い払っては、ガツガツとオオカミモドキの遺体に喰らい付いている。
匂うしなー。早く完食してくれよな!
捜索の方はほぼ進展は無かった。
エルザとパブロとが1回、サラディオールが数回、マリとノリリンタとが数回、例のトケークンらしき人影を見かけたらしい。が、それっきりだった。
俺のとこには来ないの?来てもいいのよ。
他には目ぼしい事と言えば、ドトンタ爺ちゃんが、この辺りの地図を完成させたぐらいだ。
巨石列柱群の円環が、空き地になってる部分以外にも幾つかあって、それらを合わせると、概ね、ウリューンの町のあった場所とほぼ一致するらしい。
どういう事ですか?
物凄い魔法で町とか城とかを地底に沈めるみたいな話はたまに聞くけど、そういうのとも違うらしい。
地上との連絡通路みたいのが一切見つからないので、可能性は低いっぽい。
浮遊城みたいに空に飛んでいったというのも可能性は低いらしい。町ぐらい大きければ、誰かがとっくに見つけているし、ウリューンの町ほどの大きさを浮かべ続ける魔力は現実的でないらしい。
異世界にでも町ごと飛んでったとかどうなんだろう?
あり?なし?これも可能性低いんだろうなー。
爺ちゃんの説明がまた始まっちゃうので、言うのはやめておこうっと。
そういう訳で、トケークンさんとお話しするのが頼みの綱みたいな雰囲気になっているんだ。
人見知りなヤモリの民、おーい出てこいやー。
お!気配!森の木陰に何かいる。
忍び足で近づいてみよう。
森の木陰を抜けると、小さな池があった。
1体の両棲類っぽい小柄なヒトガタが釣りをしている。
こちらにはまだ気付いてないっぽい。
あれがトケークン?
でもカエルっぽいよなー。ガマじゃ無い方のカエルな。ガマの民だったら大変だ。
爺ちゃんが、争いを好まないって言ってたので、友好的に話しかけてみますか?
「釣れますか?」
カエルのヒトガタが振り返る。
たぶん警戒はされてない。
表情分からないけどな!
「くぱあ」
え?言葉通じないの?意味わからん。
「言葉通じてます?」
「けろけろ」
発声が鳴き声っぽく無いんだが…
喋ってるよね?
人見知りさんめ!
「けろけろ?」
「けーろけろ!」
「言葉分かりますよね?」
「うん、分かるよ」
カエルのヒトガタが、ようやくまともに喋ってくれた。
つーか、分かったんかい!
「俺たち、ウリューンの町に行きたいんですけど、何か知ってます?」
何気に本題に入ってみた。
「ウリューンの町、昔ここにあった」
「うん、知ってる」
「君たち、どうしてウリューンの町、行きたい?」
どうしよう。話してもいいよね?
「上エルフのお嬢が依頼人でしてね、ウリューンの町にいるお父さんに会いたがってるんですよ」
「なるほど。わかった」
うん、分かってくれて良かった。
………
「あの…俺たち、ウリューンの町に行きたいんですけど」
「それさっき聞いた」
………
「あのー?」
「お前たち、ちょっとせっかち。俺、トケークン達に話しておく。待て」
「ん?あなたトケークンじゃ無いの?」
「俺か?俺、トケークン違う。俺、ケローニンのケロキチ」
「ケローニン?」
「そう、俺たち、ケローニン。トケークン、友だち」
「出来ればトケークンさん達にも会いたいんですが…」
「分かった。それも伝える。じゃあ、俺、もう行く」
「え?行くってどこへ?」
ケロキチが立ち上がる。
瞬きする瞬間に、ケロキチは消えていた。
「?????!」
消えちゃった!
でも、大きな手掛かりだぞ!
俺の手柄?ねえ、褒めて!




