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幻想世界探訪録  作者: ゆう@地球
第1章
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彼岸(その2)「ここはどこだ?」

 目が覚めると、どこかの岸辺に倒れていた。


「ここはどこだ?」


 霧が深く対岸が見えない。川なのか湖なのか判別出来ない。


 立ち上がり辺りを見渡す。


 陸地には草地にまばらな樹木。

 やはり霧のせいで遠くまでは見渡せない。


 他には、対になった立石が何列か続き巨石列柱群(メガリス)を作っている。

 環状にはなってない。

 まるで通路のようだ。

 遥か太古〜エルフの時代の遺構だ。


 途方にくれる。そしてふと思い出す。


 「戦いはどうなった?!」


 そう。俺は戦場にいたはずだ。

 どれぐらい気を失っていたのだろうか?

 戦友たちはどうなった?

 戦いの行方は?


 混乱した記憶を呼び起こす。


***************************


 中央本隊があえて敵のV字突進を受ける。

 両翼から囲み、挟撃する。

 シンプルな戦術なはずだった。


 俺たちの隊は左翼側の第二陣に組み入れられた。


 本隊とは別枠で個別にはぐれた敵を遊撃するのが役目だった。


 ところが今回の相手は異種族混成。

 いつものヒト・オークの統率された敵とは勝手が違った。


 あまり統率の取れてない敵方は、早々に拡散した。

 そうなると、陣形など意味をなさない。

 序盤から泥試合となってしまったのだ。


 俺たちの隊はみなそれなりに経験を積んでいた。

 そこそこの強さを誇っていた。

 2〜3体であればオーガも屠れる程度の強さだ。


 しかし単独では厳しい。


 押し込まれ劣勢になった味方の別の隊。

 これを援護しようと隊列を伸ばしてしまった。

 失敗だった。


 俺とジョン・スミスは味方の隊に合流できた。

 しかし自分たちの隊からは逸れてしまった。


 抵抗虚しく倒れていく名も知らぬ友軍の兵たち。

 血と肉と革と鉄の匂いが充満する。


 刹那、オーガの一撃でジョン・スミスが倒される。

 声にならぬ叫び。阿鼻叫喚。


 フェイントからの薙ぎ払いで俺の剣がオーガの脇腹を引き裂く。

 トドメには至らない。


 不敵な笑みをうかべる食人の悪鬼。

 振り抜かれた巨大な棍棒をモロに受ける。


 吹き飛ぶ俺。


 宙を舞う。

 そして地に伏す。


***************************


 覚えているのはそこまでだった。


 しかしここはあの戦場では無い。

 見覚えも無い。


 剣は落としてしまったのか、手元に無いことに気づく。


 よぎる不安。


 再び途方に暮れる。


 岸辺に座り込み、幾ばくかの時が過ぎる。


 深いため息。


「一体どうなってるんだ…」


「お兄さん、大丈夫ですか?」


 慌てて振り返ると年端もいかない少年が立っていた。

 後ろには杖をついた老人。

 それにそこそこの年齢のふくよかなご婦人。

 いずれも戦場で見かける類の人々ではない。

 冒険者にも見えない。

 付近の村人だろうか?


「ああ大丈夫だよ。それより君たちはどうしてここへ?」


「一人見つかったようじゃな」


とのたまうご老体。続けて少年。


「お兄さんたちを探してたんだよ」


 少し怪訝に思う。この人たちが不審ということでは無い。

 村人に兵の捜索を任せるまでの状況とは一体?


 勝てたのか?それとも?


「近くで戦いがあるのは聞いているよね?避難はしなかったのかい?」


「近く…では無いと思うけど…戦争なのは知ってるよ」


 どういうことだ!?

 話が噛み合わない。


 よもや奇跡や魔法の力で長い間眠っていたのだろうか?

 いや流石にそれは無いか。無理がある。

 それではあのジョン・スミスの持ちネタのようでは無いか。

 皆を笑わせてくれる異世界から来たという与太話。


「ああ、いたいた。三人ともダメじゃ無い。勝手に先に進んじゃ」


 霧の中、巨石列柱群(メガリス)の方から人影が近づく。

 黒髪の若い女性だった。

 魔法の小杖(ワンド)を腰に吊るし、触媒入れコンポーネントボックスのポーチを装備している。

 三角帽子は被っていないが、魔法使いなのだろう。


「あー、姉ちゃん。遅いよ」


「サラ坊、怖くなかった?お漏らししてない?」


「してない!怖くない!」


 本能的に警戒していた緊張を解く。

 少年の家族か同郷なのだろう。


 そこへ、次々と人影が現れる。


 各々に武装した屈強な戦士たち。

 剣と弓を携えたレンジャーたち。

 鎖帷子(チェインメイル)戦槌(メイス)で武装した数名の修道騎士(クレリック)たち。

 金属の品を一切付けていない仙人(ドルイド)

 剣と琴を携えた吟遊詩人(バード)

 エルフやドワーフの戦士たち。ノームもいる。


 そうか!『五族連合』の義勇兵たちだ。

 友軍だ!


「我が名はグレン・ラインバルド。

偉大なる父ゾンガーの子。ノルドガルドの戦士。

どなたか私にも武器を貸してもらえぬだろうか?

私も共に戦いたい!」


 しばしの沈黙。

 神妙な空気。


 黒髪の魔法使いの女性が口を開く。


「戦うって言っても…貴方もう死んでるのよ」


 突然の、そしてにわかに信じられない発言。


 もう訳がわからないよ。


【次回予告】

予想出来る展開で目の肥えた読者の声が怖い作者!

気にするな!

なんとかなるさ!

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