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地下迷宮5

 サバイバルゲームという遊びがあることは知っていた。

 この国でも要件を満たして手順を踏めば銃が手に入る業種があることも。


 だがそれらのことと、狙撃してくる男の行動は全く別の話だ。


 円柱に隠れながら様子を伺う。こちらが扉に向かうと確信しているらしく、ゆっくりと歩くその足取りには迷いがない。

 既に壁ガラスの位置も把握しているのか、迂回するのを見て間に合うだろうかと考えつつ円柱に沿って足を出した。

 その足が空を切り、円柱にしがみつく。床ガラスがない場所があると予想はしていたが、全く区別がつかない。

 どちらにしても降りないと扉には辿りつけない。男がこちらを注視していないのを見て床ガラスの縁からぶら下がる。降りた時の音に反応して銃口がこちらを向いたのを見て、反射的に円柱の影へと移動した。


 何も考えない行動だったが、運良くそこにも床ガラスがあり円柱の影へと隠れられる。もし床ガラスがなければ落下して、無防備な姿を銃口に晒していただろう。


 ガラスを撃ち抜いた弾丸が円柱に当たったのか、先程までとは違う音が響く。まるで石をハンマーで打ってような音だと思ったが、それと大差ないことが起きているのだ。円柱の表面を削って弾かれた弾丸は他のガラスに突き刺さったのか、跳弾化したのは一瞬だった。


 フロア差が一つに減ったことで射程距離にいると明確に自覚させられる。先程砕かれた照明のようになるのかと無意識に向いた視線が、そこから泡壁が湧いているのを捉えた。


 照明が砕かれた鉄棒からガラスの壁と床へ広がっていく泡壁は蜂の巣を思わせた。


 もし他の通路の時と同様に壁に沿って広がるなら、あの区画は重さで落ちるのではないかと思いついて、そこに誘導することを考える。

 違う意味を連想する蜂の巣という言葉に、そうなる前に対処する方法を考えたが走って逃げるくらいしか選択肢がない。


 円柱の影から覗いてみれば、銃口がすぐに反応する。

 しかし弾丸が放たれないのは、確実に仕留めるつもりなのだろう。


 円柱の影に戻って少しでも身軽になろうと背負い鞄を下ろした。落ち着こうとして深呼吸をして、視界に入った男の姿に慌てて円柱を回り込む。

 しかし弾丸は飛んでこない。再び覗いてみると、こちらをみて楽しげに笑う男の姿が見えた。



「くそっ、遊んでやがる」



 逃げ場がないわけでもない。扉のある壁がそれ以外にあり、見つけるまでの間に狙撃をいなすことが前提になるだけで。

 ただその前提は円柱から離れた瞬間に崩れそうなほど儚い。



 他に何か役立つものがないかと探して彷徨った視線が、厄となりそうなものを見つけた。



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