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野良猫の縁側2

 背中を引かれる感覚に振り返ると、怨霊が震えていた。


 ヒョウやライオンよりも大きなそれがその気になれば逃げるのは無理だろうし、簡単に殺されるだろう。


 だが元々はただの野良猫だった筈だ。


 そして、本来なら既に死んでいるのも知っている。底が赤く滲む箱を見せられて問いかけられた記憶は、さっき見た夢ではない。

 それに、わざわざ呼びつけたからには何か別の目的があると確信していた。


 ましてやこの場所。手入れが悪く伸び放題の庭木と草。穴の開いたブロック塀。縁側に腰を下ろして野良猫をあやしている姿も、まるで再現したように似通っている。

 違うのは全体のサイズと、そこに座るのが石像だということか。



「ヒャー、ヒャーン。んにゃ」



 鳴き声で道を示した黒猫は、今は何やら色々と鳴いている。鼻先と左目の下だけ濁点のように白く、サイズ以外はうちに訪れていた時と変わりない。



「んにゃんむ、ヒャー、ヒャー、ヒャム?」



 しばらく石像の胡座の中で鳴き続け、気まぐれを起こしたように起き上がる。軽く伸びとあくびをして、石像の隣へと座ると毛繕いを始めた。

 それをただ眺めているこちらに気づいたのだろう。



「ヒャー」



 強めに一声が発せられ、こちらをじっと見つめる。



「……いや、何を言いたいのか全然わからないんだが」



 ずっと思っていたことを口に出すまで、タバコを吸うこともその箱をしまうことも忘れていた。



「ヒャー」



 満足気に目を細め、ごろごろと音を立てて喉が鳴り出す。再び石像の膝にあがるのかと思ったら、そこにかけてあった布に爪をかけて引きずり下ろしながら揉み始める。

 そうして見ているうちに寝入ってしまった。



「……どうしろって言うんだ?」



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