地下迷宮の売店2
帰宅に備えて店内を見て回ったが、ダンボールも台車もなかった。
スタッフ用の場所にあるのかもしれない。
「すいませーん。ちょっとお邪魔しますよー?」
別に誰もいないのだが、つい断りを入れてしまう。
レジ内の棚にタバコが置かれているのを確認して、手持ちの残り本数を確かめる。四日分には全く足りない。
購入するのは確定なのだが、チャージ金額が足りるだろうか。
店内のATMがレジ同様に機能するのか、掲示板に書かれていたか覚えていない。
とりあえずはダンボールを求めてスタッフルームらしき場所のドアを押し開く。
コンビニの中を見たことはテレビドラマくらいしかない。思ったよりも狭い部屋には入口付近に簡素な机とPC。奥一面に大型冷蔵庫。その間の床に積まれたダンボールが壁を隠していた。印字された商品名を見ると、菓子とドリンクの在庫らしい。
冷蔵庫の中を確認すると、補充用の弁当に混ざって賞味期限切れの弁当があった。食品廃棄というやつだろうが、半日程度過ぎて冷蔵されていたものなら食べられそうに思える。
他の場所に保管庫があるのか、思ったよりも在庫の量は少ない。積まれたダンボールを少し移動すれば、寝るくらいはできそうだ。
急いでも意味はないし、落ち着けるところで一晩休む方がいい。通路で寝るのは身体が辛くなるのだ。
寝床を整えて一服しようとして、流石に寝タバコは危険だと起き上がる。
店外に出てタバコをふかしても景色は同じ。T字路を見比べても動くものは現れない。
別の道には違う路線への案内看板が出ていたが、どれも距離は書いていなかった。
タバコを踏み消して、イートインで充電させたままだった携帯を回収する。カメラを起動して望遠ズームを最大にしても、ゆるいカーブのせいで果ては見えない。
それでも、どの通りも似た構造らしく、一定距離毎に空調機があるのはわかった。そしてトイレは見える範囲にはないこともわかった。
もしかしたら、この店内にあるトイレが唯一の駅中トイレという可能性に背筋を震わせて、もう一本タバコに火をつけた。