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【誘引】5回目7

 鈴木からカメラを投げつけられた上にビンタをされるという暴力をうけたのは、理不尽としか言いようがない。



 だが再び泣きくずれる気にもならず、どこが痛くないのか探す気にならない身体で泡壁を確認しに戻る。

 既に普通の壁と同じように滑らかに固まっていた。その中にいるはずの老人がどうなったのかは確かめるまでもないだろう。


 通路が塞がったこともあり、中野の無事を確かめる方法も戻る方法もない。



「あぁ……また鞄がどっか行ったか……」



 せっかく戻った鞄も投げつけてしまった。中野が生きていれば回収してくれるかもしれないが。



「あ。あたしも鞄」



 鈴木も言われて気づいたらしい。泡壁を叩いて通れないか確かめたり、同じ方向の壁を叩いて開かないか試したりする。



「まぁ、運が良ければ届けてくれる人の良い奴もいるだろう。それよりも出口だなぁ。どっちかの道にあればいいんだが」



 手にしたカメラを構えたが簡易印刷カメラだったのでズーム機能がない。ついでに撮影されたものを印刷して見ればナイフ振る老人が写っていた。そういえば、ファミレスにいる間はずっと雨が降っていたのだが、雨具もなさそうな老人は濡れていない。

 雨が止んでから【誘引】されたとしても、どうしてピンポイントに鈴木がいる場所に出てこれたのかわからない。

 何か方法があるのかもしれないと考えていると、鈴木がうろうろしているのが見えた。


 首を傾げてみたり、ちらちらとこちらを覗き見てみたりと奇行に走っている。

 まぁ、加害実績がある老人に遭遇したのだ。多少の混乱や奇行は起こすのかもしれないので、放置しておく。

 携帯を取り出してズームしたカメラで通路の奥を映すと、その奥に非常口らしい扉が壁面に見えた。



「ついてるな。さっさとオサラバできそうだ」



 早く現実に帰って、一服しながらいつもの蕎麦屋で蕎麦を啜りたい。そんな思いを込めた呟きのどこが気に入らなかったのか、なぜか鈴木の蹴りが飛んできた。

 奇行は仕方ないが暴力は勘弁して貰いたい。それでも刃物を出さなくなった分マシになったのだろうと思ってしまうあたり、大分【地下迷宮】に毒されているような気がした。



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