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地下迷宮のファミレス2

 泣き続ける女を前にして、ここにいる男二人にできることは少なかった。

 座らせて、おしぼりと温かい飲み物を用意して、近くに座って話したいことを話すのを静かに待つだけ。



 大人ならなんとかしてくれという視線に、友人ならなんとかしろよと返して、いたたまれない状況をごまかし続けることしばらく。

 泣き止んで落ち着いたらしい鈴木が、恥ずかしそうにおしぼりで顔を拭うのを見ながら、むしろ安堵していたのは男たちのほうだっただろう。



「えへへ……すいません。ちょっと、色々と思い出して……。あたし、あの後コンビニでノート見たんですよ。最初はあいつと同じかグループなのかと思って、何かやりとりしているのかと思って。そうしたら、出口があるって書いてあって。罠かもしれない、って思ったけど、違うかもって……」



 恥ずかしいのを誤魔化すように鈴木が喋り出したのは、完全に忘れていたことだった。鈴木が納戸に隠れているとも知らずに、念のためにとコンビニのノートに書いた、初回の【誘引】から脱出した出口の場所。俺が逃げ出した後に鈴木はそれをアテにして、【地下迷宮】を進んだらしい。


 誰と比較されているのかはわからないが、迷わず逃げた姿を見たことで賭ける程度には信用されたのか。無様を晒した意味があったと言われても、正直嬉しくはないが。



「ほとんど書いてある通りの道で、距離は違いましたけど、でもおかげで無事に逃げ切れて…………本当に、ありがとうございます」


「あー、何日かかったのか知らんが、まぁ役に立ってよかったよ」



 再び涙声になる鈴木におしぼりを渡しながら、誰かに追われていたから凶行に及ぶ精神状態になっていたのかと理解する。普段から刃物を突きつける女子高生は実在しなかったのだと、少し安心できた。



「あ、私、結構走るの得意なんです。疲れはありましたけどフルマラソンくらいの距離でしたし、三時間ちょっとでつきましたよ」



 何故俺は四日で女子高生は三時間なのだろうか。理不尽に苛立ちを覚えた指先がタバコを取り出す。

 しかし禁煙席に座っていたために灰皿がなかった。指先の感触が唇の感触を誘発しても、戻すしかない。



「あの……追ってきたグループっていうのは、なんですか?」



 全く空気を読まない中野の追求に、やめてくれとため息が漏れた。



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