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第三者監査2

 


「【誘引】先で犯罪におよぶなんて、最低ですよね」


「全くだ」



 そんな一言を投げつけて反応を観察してきたが、心底同感したこちらに呆れた顔を見せた。

 それだけで満足したらしく、特に圧が強くなることも何か話すこともない。時折こちらを見ている気配に顔を向けると、慌てて視線を逸らされた。



「……弟の好きな子も、【誘引】されたみたいなんです。それがサラリーマンから犯罪を受けたんじゃないか、って。それで、つい」


「直後に【誘引】されたヤツを見つけて、問いただしてみたわけか」



 まぁ、気持ちは分からなくもないが、この会社内だけでも何人いるのやら。たまたま目についただけで犯罪者認定は酷い話である。

 それでもこうやって第三者組織まで使って調査が入るというのは、この会社内にいるというだけの根拠になるのかもしれない。

 もし【誘引】されていれば真っ先に犯罪者になりそうな後輩の顔を思い浮かべて、対象になっていなくて良かったと思う。もしあいつと【地下迷宮】で遭遇することがあれば、その危険性は女子高生の比ではないだろう。



「むしろ俺よりも、あいつの方がヤバいぞ?」


「えー、そうですか? 彼は割と口だけにも思うんですけど」



 不名誉な誤解を解いて後輩をネタにすること十分ほど。ようやく順番が回って来たので、名前も知らないその女性社員と別れて会議室に入った。



 会議室は仕切り壁が出されて四つの部屋に分けられていた。病院の診察室を思いだしながら、促されるままにその一室へと入る。


 見ればタブレットPCを前にした男性二人。見慣れない機械と差し込み式のカードリーダー。金属板のようなカードを弄んでいた男が、ドアが閉じたのを確かめてそれをカードリーダーへとセットする。

 中央に座るよう言われて、ヘッドセットのような物と手袋のような物をつけられる。脳波計、いや嘘発見機だろうか。



 始まりは簡単な質疑応答。氏名年齢住所、通勤路線と駅名。

 PC画面と照らし合わせながら、嘘がないことを確認しているようだ。

 次いで問われたのは【誘引】について。いつから、何回、何日。

 思いだすだけでもストレスである。自然と声が重くなるのがわかった。しかし興味がないかのように、画面確認と問いかけが繰り返される。



 男達の表情から流れ作業と化しているのを悟りながら、なんだか時間を無駄にしている気になってくる。これなら漫画喫茶でサボっていればよかったか。だがこれは【誘引】被害者という事実を会社が認知するということでもある。サボって被害者から除外されるのも望ましくない。



 その後もどうでもいい質問が続いた。【地下迷宮】で利用した場所、買った物、手段。持ち出した物、置いて来た物。

 嘘発見にかけてまで問うようなこととは思えない質問に、こちらも飽きてなおざりになっていたのだろう。彼らがどんな団体の関係者だろうかなどと、どうでもいいことを思いながら答えを返す。



「何か犯罪に心当たりは?」



 突然混ざった問いに、言葉が詰まった。





週末なので次の話は一時間後に投稿予定です。

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