【誘引】三回目3
行き先に確実なあてはなく、たどり着く可能性が高いのは案内窓口しかない。
そこまでの【地下迷宮】の構造が同じことを願いながら、おそらく昨日と同じ階段を下りる。
「そういえば、【誘引】されてから売店までは同じだったな」
すっかり酒の抜けた頭で振り返り、降りた通路を振り返る。
逃げていた時は必死だったため、あまり覚えていなかった通路を見渡す。
登り降りの二路線に分かれたホームに向かうような、それぞれ二つ配置された階段。
別の路線で見覚えのある景色に案内看板を探してみれば、階段の手前に見つけられた。
それが指し示す別路線への連絡通路を覗いてみる。本来なら地上出口への階段がある場所は壁に変わっていた。そして奥へと伸びる道は果てしない。
残った分かれ道の一つを見れば下り階段が見えた。その果てに地下通路があるのかもしれないが、踊り場のない階段は果てしなく続いている。
「転げ落ちたら下に着く頃にはミンチになってそうだな」
そんな感想を漏らして、昨日歩いただろう通路を探していく。
しかし、似たり寄ったりの道が七つも見つかった。入口から覗いた程度では全く先がわからず、怪しげな記憶ではどの道だと言い切れる確信がない。
それでもあたりをつけて歩いていけば、だんだんと目眩を感じるような気がして壁に手をついた。
空調設備が止まっているわけではない。変わらず一定距離に置かれている物が噴き出す風は他の物と大差ない。
たぶんカーブだけでなく傾斜しているのだろう。そんなことを思いながら歩き続けて、背後に通り過ぎた空調設備を振り返る。
突然、その音が途絶えたのだ。