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くそったれ

 俺たちが家に帰ってから二週間ほどが経った。

 その間は親戚や隣近所に結婚していたことの報告と、質問責めを躱すことに費やした気がする。


 仕事を丸投げしていた同僚がかなりキレまくっていたが、結婚祝いという理由を押し付けて納得させた。流石に少しだけ申し訳ない気もするため、今度蕎麦屋で昼飯を奢ろうと思う。


 地上げ狙いの隣人は結婚詐欺だと喚き散らしていたが、くそったれの一言で逃げていった。



「人は訴え、猫は祟る」



 それが訴えるという脅しなのか、野良猫を殺したのがお前だという脅しなのかはわからない。


 わかるのは、週末の朝早くから来客があり今すぐにでも逃げるべきだと言うことだ。

 くそったれの仕業かグループチャットで連絡を取り合った四人が、俺がのんびりと家で寛ぐのを狙って囲みに来ている。


 既にパンクが来訪しており、見た目とは違う礼儀正しい態度に少し面食らった。後輩とは完全に縁を切ったらしい。

 職場の喫煙所で後輩に、家を追い出されたと泣きつかれたのを思い出す。完全に奴の自業自得で笑えもしなかった。親しげに接するパンクを相手取り、助けを求める無表情を尻目に席を立つ。



「タバコを買ってくる」


「主役がどこに行こうというのかね?」



 そんなベタな言い訳を残し、呼び止める妻の声から逃げて家の外へ出る。


 いつのまにか梅雨が抜けて夏空に変わりつつある中を、中野姉弟が歩いてくるのが見えた。

 弟の恋を応援すると俺に暴露され、狼狽る姿は哀れみを誘う。是非頑張ってくれと励ましつつ、家の中に押し込める。


 逃げようと振り向くと元地上げ隣人がいた。くそったれがいないとわかるなり、すり寄って来て騙されているから別れろだの離婚弁護士を紹介するだのと難癖を吐きまくる。



 ガン無視で歩くと、突然脇道から腕を取られた。

 鈴木がこちらの腕を抱くようにして間に入り、こちらが先約だと言って真っ向から立ち向かう。


 その腕をやんわりと解き、既に他の面子が揃っていることを伝えて家に向かうよう促すと、去り際に買出しに行くならケーキも欲しいと命じられた。たぶんこいつが一番遠慮がない。




 どうにか俺の家の土地を手に入れようとして下らない交渉をする隣人が耳障りで、それを理解するのが少し遅れた。





 金属板を失っても鈴木のストーカーをやめていなかったのだろう。腕を絡めて家に行くように言われた鈴木の姿を見た老人が、俺に対して抱いたもの。



 それはナイフという明確な殺意だった。



あと二回で終わりになります。

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