最悪の結果2
こちらの困惑など他所に、パンクとくそったれは打ち解けたようだった。
「視界に入った時点で【誘引】するように設定しておこう。何、礼にはおよばない。言わなければならないことを言うきっかけを貰った礼だと思ってくれ」
「あんがとね。今度うちに来なよ。飲み明かして先輩……ってもうあたしが呼ぶのも変なのか。色々聞かせてよ。馴れ初めとか、好みとか」
「それなら本人の家に行くのがいいだろう。アルバムやビデオなどの資料もあるし、当人に確認も取れる」
共通の話題として【迷宮】よりはマシなのだろうが、間違ってもその場には居合わせたくない。とりあえず帰ったら色々と処分しよう。
「他にも【迷宮】内で関わりを深くした二人と共に囲うといい」
「あんたもだよ。四人で先輩囲んで酒飲もうぜ」
肩を組んで笑うパンクと、無表情に揺られるくそったれ。
他の二人とは鈴木と中野姉のことだろうか。そんな地獄に飛び込むくらいなら【地下迷宮】を歩き回る方がいい。
「……帰っていいのだろうか?」
その地獄絵図にうんざりとした顔をしていると、揺られ続ける無表情から珍しくしおらしい言葉が出た。
呆れとバカバカしさに頭を抱えながら、溜まっている疲れに足を引きずるように階段を降りていく。
くそったれは無表情のまま目を逸らさない。
勝手に家から金を持ち出して、勝手に婚姻届を出し、勝手に家からいなくなって、勝手に帰ってこなくなった。そうしてやっているのは全人類を検体にした人体実験である。
だが、くそったれは自分勝手だからそれを改めるつもりもやめる気も謝る気もない。
ちくしょう、くそったれめ。
しおらしくへこんだ姿など、量産されたくそったれ以上に違和感まみれで見てられない。
「本当にお前は……頭いい癖に頭悪いな。……お前が迷惑なのはわかってんだよ。わかってて迎えに来てんだ。アホ言ってないで帰るぞ」
「……そうか。キミは本当に不合理だ」
「うるせぇよ、くそったれ」
全く変わることのない無表情だが、安堵していることくらいはわかる。
そんな無表情が揶揄する言葉を聞いて、思わず笑いが溢れた。
なんだか、ものすごく久しぶりに笑えた気がした。