最低の結果6
量産されてタッチパネルを操作する複数のくそったれと、何故かこちらを睨み続けるくそったれ。壇上に腰掛けた無表情なくそったれの言葉に合わせてそれぞれが思い思いに説明を始めたのを聞き流しながら、しがみついて泣いているパンクに解放してほしいと思う。
四方八方から、つらつらと語られる言葉のほとんどは全く意味のわからない話だ。
へー、ほー、と適当に返しながら聞き流す。
「伝達物質である人間の維持に消費されるデータが現実にも反映されるのはキミたちが知る通りだ。その差異があれば【おとない】と同質の【箱】が認識すると判断したのだろう」
「認識言語数の少なさという怠慢により、ボクが入り込む余地ができた。調査役にねじ込むための資金にはキミの親が遺したタンス預金も役立っている」
「時空間が異なる【現象】を活用する方法はいくつもある。だが命を尊重するあまりに人体実験を拒む選択はあまりに愚かだ」
「私は【おとない】を活用することにした。伝達物質を把握する伝達物質は【おとない】にも利用価値がある」
「全人類の体質と疾病。その発生差異と致死傾向を調べるのに【誘引現象】は実に役に立っている。後天的疾病は数種類、根絶システムを構築して検証中だ。先天と精神の部分はまだ実験不足だが、依存性に関する情報は集まりやすい。薬物系なら体質の変異でも足りる」
「被験体は傾向で区分。無意識化への刷り込みにより、殺傷犯罪傾向は同区分の被験体同士で減少を誘導してあるが、やはり現実では数値の増加は緩やかだな」
「各国で【地下迷宮】に実験設備構築を目論んでいる。食糧難対策などの平和利用からドラッグ精製まで多岐に渡る。だが【おとない】との意思疎通は停滞しているな」
頭に入ってこない言葉の羅列に、これを耳に推理小説を読みタバコを吸っていた日々を思い出していた。
あの頃のタバコは美味かったのに、最近ではタバコを吸っても不快感が先に立つ。
「全部、元に戻ればいいのにな」
懐かしさにそんな言葉を漏らしてしまい、全員が黙る。こちらを凝視されて気恥ずかしさを感じていると、ようやくパンクが身体を離した。




