表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
115/123

最低の結果4

 どうやら【地下迷宮】で人を壊すことはしても、通路を壊すことは少なかったらしい。


 いまや後輩は石の中にいる。はみ出している右足と左腕で足掻いても、そこから出て来れそうもない。水面に浮いたように前面がのぞいているが、左足と右半身のほとんどが完全に沈んでいる。

 左腕が折れていなければ踏ん張って抜け出れたかもしれない。


「あの……先輩? マジで全然動けないんすけど。これじゃ楽しめないじゃないっすか」


「あ? こっちは最初から楽しくねぇよ。少し頭冷やせ」



 後輩が埋まる床に腰を下ろしたまま、後輩の嘆きにこちらも嘆き返す。


 だが本当に深い嘆きは、言葉などでは表せないのだろう。何も言わずに後輩の頭を見下ろす、彼女の顔は見えない。ただその手にあるアーミーナイフが、刃先を揺らして迷いを伝えていた。


 その視線が逸らされないことに、多少は気まずさを感じたのだろうか。



「酷いことを言ってごめんな。本気じゃないってわかってくれるだろう? 俺が愛しているのはお前だけだよ。はしゃぎすぎて、心にもないことを言ってごめん。お前がいないと俺はダメなんだよ。だからお願いだ。俺にお前を愛させてほしい。ここから解放して、俺にお前を抱きしめさせてほしいんだ」



 その声音はとても優しく、視線も真っ直ぐに逸らさない。


 これまでにも何度となく繰り返していたのだろう、暴力後の愛情表現。それが強制的に依存させるための行為だと、彼女もわかっているのだろうか。



「お前だけが俺の一番なんだ。お願いだ。愛しているんだよ」



 涙声を出して語る後輩の声に、彼女からかすれた声が漏れる。肩を震わせているのが悲しみなのか恐怖なのか愛情なのか。それは当人にもわかっていないのかもしれない。



「ねぇ……このままだと、どうなるの」


「ここは破損もあるし、廃棄するからね。餓死するまでそのままだね。暇になったら作り直すから、そこまで生きていれば自由になるかもしれないが」



 涙を拭いながら、かすれ声が尋ねる。

 答えたのは壇上からではなく、近くにいた量産型くそったれだった。

 その答えに満足したのか、うなずいたパンクがアーミーナイフを握り締めた。

 刃物を目の前に突きつけられた後輩が再び並べ立てる愛に、パンクが笑みを返す。



「あたしの一番を上げるね。全部忘れるから。一番愛しているって、今度はちゃんと騙し通してね」


次の話からは、また毎晩1時の投稿になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ