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 後輩を宙に舞わせ、その後を追うように長机を渡ろうとする姿が消える。



「ふむ。顔が歪むまでに変質させると、やはり行動も準じたものになるね。要望外のものや事切れたものは除外するよ。聞こえているかい?」



 目の前を飛び越し、落下した先の長机に後輩が身体を打ち付けて弾かれる。脱力した姿はまるでダミー人形のようだ。そのまま長机の隙間に飲み込まれるように転げ落ち、水たまりが跳ねたような音がした。


 その様子にパンクが立ち上がり、心配そうに呼びかけた。顔が腫れるほどに殴られてもまだ心配するのかと、パンクの人の良さに驚きと呆れを覚える。それだけ深いのだろう、愛か依存かはわからないが。


 ふらついて崩れてくるのを、立ち上がって支える。

 じっとりと睨めつけるような顔の量産型のくそったれを無視して、後輩のところまで連れて行く。



 長机の間に落ちた後輩の背後に、泡壁がのぞいているのが見えた。このままだと呑み込まれるだろうと思って、パンクを長机にもたれさせる。

 狭い隙間に無理矢理足を入れて、動かない後輩の呼吸が止まっているのではないかと手を伸ばす。

 どうやら気絶しかけているだけらしい。


 懐にある膨らみが気になり取り上げてみると、タバコの箱にライターと金属板が入っていた。

 ようやく一服できそうだと思いながら、それを長机に置いて後輩を起こそうと向き直ると、目があった。



「ズルっすよ、先輩……なんすかあれ……」


「あー、ついてなかったな」



 朦朧としたままで呟く声に、返せる答えはない。

 くそったれを相手にするなど、【誘引】されるのとは比較にならないほどの不運だろう。

 胸倉を掴んで後輩の上体を引き起こし、しゃがみ込んで右脇に右腕を通す。立ち上がりながら背負うようにして引き上げるが、脱力した身体は重い。



「あんなの……俺のより…………じゃ……っすか」


「あー、そーだな」



 雑に相槌を返しながら、長机に腰で寄りかかり足の位置を変える。こちらの身体もあちこちを痛めていると再認識させられて、少し乱雑に担ぎ上げた。

 泡壁が足元を這い上がる感触と、踏み出した足が途中で一度止まってから沈む感触を踏み越える。


 それだけで既に尽きかけた体力が呼吸を乱し、倒れそうになるのを無理矢理踏ん張って階段まで足が進んだ。

 反対側の足も泡壁から抜け出して、階段の段差に躓きそうになる。


 その揺れで意識を戻したのか。


「なぁ先輩。俺のとアンタの女、替えてくれよ」



 後輩が、そう言って俺の首に腕を絡めた。



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