最低と最悪7
後輩は長机を降りつつ、俺とくそったれを見比べるようにしながら語っていた。
それはカレーショップで見た死体が、死ぬまでにどれほど怯えていたかというものだが、全くイメージできない。
それが壇上の机に腰掛けた当人にも伝わったのだろうが、導き出した回答は最悪だった。
「口頭説明よりも、実践した方が伝わるだろう。ほら」
そんな言葉とともに並んだ長机の一角を指差すのにつられて、目を向けた。
「……ひっ!? や、やだぁ!」
最上部に近い長机の前に、いつから立っていたのだろうか。
壇上にいるくそったれと全く同じ姿をして、後輩の視線を受けて悲鳴を上げた女が腰を抜かして倒れるのが見えた。
長机の下から命乞いをする声が漏れ聞こえてくる。
「何度も、だったか。とりあえず五つで足りるかい?」
その言葉に数カ所で短い悲鳴が漏れた。
すり鉢状の講堂のようなこの場所には出入り口は見えないのに、気づけばいくつかの長机の影から怯えながら覗く、泣き顔のくそったれがある。
後輩と目があったのだろう。その一つが息を飲んで長机の影を這って逃げるのにつられて、ほかも慌てて隠れたり逃げたりを始める。
怯えられている当の後輩に目を向ければ、長机を渡る途中で振り返りかけた姿勢のまま固まっていた。
先程まで楽しそうだった笑みがまだ張り付いていたが、若干引き攣っている。
そんな後輩に容赦なく追い討ちをかけるのは、やはりくそったれがくそったれたるところだろう。




