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最悪なくそったれ

 金属板に手を合わせた直後、目の前にあったオブジェはなくなっていた。

 しかし現実に帰ったわけではなく、【地下迷宮】のどこかに飛んだらしい。


 すり鉢状の造りはコロッセオもどきの場所を連想させたが、中央部ではなくその上部から見下ろしている。

 取り囲むように並んだ長机は全て中央の壇上を向き、そこには円形の机と先程ぶら下がっていたオブジェが半ば埋まるようにして置かれていた。

 講師の姿やスクリーンはないが、大学の講堂に似ている。多重円形に並べてある長机には一体化したタッチパネルがあり、それぞれにどこかの地下通路の光景が映されているようだった。



 どれだけの数があるのかと段数に目を向けていくとその中腹、少し見下ろす位置でタッチパネルを弄る姿が見えた。


 長い黒髪を無雑作にピンとゴムで後ろに流して晒した額の下。無表情にこちらを見ている顔を見て、キレた。



「このくそったれ! 見なくなったと思ったらこんなところで何やってやがる!」


「選択と修復さ。キミが壊したところも入れ替えたよ」



 再会に顔を綻ばすことも歪めることもなく、投げつけた罵声をあっさりと受け流して、タッチパネルを操作する。

 以前と変わるところのない態度に二の句が告げなくなり、そいつを目指して長机の間を歩き出す。



 長机の上に僅かに覗く黒いタイトパンツと、それを隠すような無地の白シャツ。僅かに開けた胸元からは赤い下着がそびえる山を支えており、両手が動くのに合わせてシャツに浮かぶ陰影を変えている。そのシャツの上にある首は細く、カレーショップで逆向きに捻られていた姿を思い出して胃に重いものが蘇った。


 それが苛立ちを更に増加させて、再び怒鳴りつけようとして口を開く。



「…………くそったれ」



 だが様々な感情が混ざり合って、それしか言葉にならなかった。


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