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記憶の少女

作者: 池田圭

 俺は幼いころからホラーが苦手だった。特に突然大きな音で出てくるものやグロテスクな風貌をした生物が大嫌いで、テレビの夏休み特集で紹介されていたお化け屋敷のゾンビを見てパニックを起こしたこともあったほどだった。そんな俺だったが、祖父の家に遊びに行った際の遊び場は近所のお寺で行くたびに境内で遊んでいた。


 ある日、いつものように一人でお寺へ遊びに行った俺は白いワンピースを着た一人の少女に出会った。小さなお寺だったため参拝者も多くない、少女は一人で境内の隅のほうで地面にお絵描きして遊んでいた。当時の俺は一緒に遊ぼうとすぐに声をかけに行った。幼いころの俺はナンパ体質だったらしく、まだ喋れないころ家族で旅行に行ったニューヨークでベビーカーの中から声をあげては振り向いてくれたお姉さんにニコニコと愛想を振りまいていたらしい。そんなマセガキだった俺は、はじめは戸惑っていた少女とも短時間で仲良くなり一緒に遊んだ。俺の持っていた子供用のサッカーボールで遊んだり、地面にお絵描きしたり、マルをたくさん書いてケンケンパをしたり、草むらで四葉のクローバーを探したり、半日ほど遊んだ。


 日が傾き俺の親が迎えに来るまで二人で遊んでいた。俺は少女とお別れをして親と一緒に家まで帰った。帰る途中で親に少女と遊んだ内容をいろいろ話していて、少女の名前を聞き忘れたことに気づいた。お互い名前を気にせずに遊んでいたのだろう。よほど楽しかったのか家に帰った後も親戚みんなに今日のことを話していた。


 翌日、法事で家に来ていたお寺の和尚さんが用事を終えた後の談笑の際にこんなことを言った。曰く、近頃お寺に少女の幽霊が出ると。実害があったわけでもなく、ただ隅のほうで地面にお絵描きをしているため、はじめは遊びに来ている子供かと思っていたらしい。しかし、親が迎えに来ることもなくずっとそこにいるらしい。「お盆が近いですし帰ってきているのかもしれませんね」なんて言っていたが、それを聞いたとき俺は意味が分からなかったが、親戚一同は肝が冷えたそうだ。


 残念ながらそれ以降俺はその少女にあったことがない。最近は親戚一同集まる機会も減りなかなか祖父の家に行くこともなくなったが、少し前に行った際にお寺に遊びに行ったが境内が過去の記憶より小さく感じただけだった。昔はなんでもできるよい遊び場だったのになあ、っと感傷に浸った記憶がある。ふとこんなことを思い出し、もう一度会って見たいなと思いつつこんなものを書いてみた。


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