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第8話 登場、ミサイル団!? 後編

「なによ?」

「えっ!?」

「へっ!?」

「んっ!?」

「ワッ、ワンで!?」


 僕もムルサさんもコウシロウさんもついでにワーンも、皆一様に素っ頓狂な声音が口から漏れた。


 確かにコウシロウさんの放ったモンスターポールに勇者様は吸い込まれたのに、なぜかすぐに外へ飛び出していたのだ。


「勇者様……その、どうやって抜け出したのですか?」

「え? どうって……あたしも吸い込まれたと思ったんだけど、気がついたらまたここに立っていたのよ」


 どういうことだ?

 ついこの間、僕が誤って勇者様を捕まえてしまった時には、勇者様のお力を以てしても脱出不可能だったのに……今回は意図も容易く脱出されている。


 それに……びっくりしているのは僕だけじゃない。

 ミサイル団の二人と一匹(?)も口から心臓が飛び出しそうになるほどおったまげている。


 ――ピピーーーッッ!!


「うわぁ!」

「なによこれ!」


 今度はいきなりけたたましい音が森中に鳴り響き、僕は両手で耳を塞ぎながら音の方へ顔を向けた。


 音の正体はコウシロウさんが投げたモンスターボールだ。

 地面に転がるモンスターポールの中央部が高速点滅を繰り返しながら、光の文字を宙に刻んでいる。


 僕もミサイル団の方々も文字へと駆け寄りそれを確認する。


 ――注意事項。他人のポッケモンは捕獲不可。野生のポッケモンを捕獲しましょう。


「ああ……なるほど。そういうルールでしたか」


 納得した僕は、睫毛をパチパチ鳴らす二人と一匹を横目に、コウシロウさんのモンスターポールをこっそり回収した。


 我が家の秘宝がこんな形で二つに増えるなんてとてもラッキーです。


「ど、どういうことだ!」

「なんで勇者が既に捕まってるのよ!」

「この世界にはまだワンたちしか来ていないはずワン」


 愕然とするミサイル団に、モンスターポールを持っていたと知った勇者様が不敵な笑みを浮かべていらっしゃる。


「ちょっとあんたたちに聞きたいことが出来たわ」


 ボキボキと指を鳴らす勇者様が、オーガも逃げ出す程のドス黒いオーラを全身から発している。


「な、なんなんだお前!?」

「あ、あなた一体何者よ!?」

「あたしは勇者よ! それよりも……ポッケモンセンターが何処にあるのか答えなさいっ!」

「「「!?」」」


 勇者様がポッケモンセンターについて尋ねると、明らかにミサイル団が動揺の色を隠せずにいた。


「なぜ……なぜこの世界の住人がポッケモンセンターを知っている!?」

「いいから早く教えろって言ってんのよ!」

「誰が教えるもんですかっ!」

「あらそう? なら……ぶっ飛ばすのみっ!!」


 戦闘体勢に入った勇者様を警戒してミサイル団が距離を取りつつ、コウシロウさんがモンスターポールを取り出した。


「ムルサ、ここは俺に任せろ! 来い、キングパイソン!」

「げっ!?」


 コウシロウさんが慣れた様子でモンスターポールを放り投げると、パカッと割れたモンスターポールからはばかでかい大蛇……の着ぐるみに身を包んだおっさんが出現した。


「なによ……このおっさん。こんなおっさん一人加わったところでこのあたしに勝てるって本気で思ってるわけ? 勇者も舐められたものね」

「久々に喚ばれたと思たら……いきなり戦闘でっかコウシロウはん。堪忍してぇな」


 なっ、なんなんだ……この気持ち悪いおっさんはっ!? これもポッケモンなのか?


「勇者様、お守りください!」

「くっつくんじゃないわよ!」


 煙草を吹かすおっさんのなんとも言えないおぞましさに、僕が勇者様を盾にして隠れると、おっさんが『シャー』と言いながら襲いかかってきた。


「邪魔っ!」

「あっ!?」


 押し飛ばされて後ろ手に転ぶと、おっさんが勇者様の体躯に巻きついた。


「そのまま締めつけだ、キングパイソン!」


 コマンドだ!

 コウシロウさんがコマンドでおっさんを操っているんだ。


「ちょっ、ちょっと! どこ触ってんのよっ!」

「そんなこと言われたかてわいも困りますわ。わいかて好きでこんな熟しとらん姉ちゃんにくっついとるんとちゃいますで。わい、女は五十過ぎてからが本番や思てますさかい」

「なっ、あたしを愚弄したわねっ!」


 なんとっ!?

 セクハラ攻撃をされていた勇者様が鬼の形相で軽々と、おっさんの締めつけを解いてしまわれた。

 とんでもない膂力……馬鹿力だ!


「な、なんやこの姉ちゃん!? 桁違いの馬鹿力やないかっ!?」


 僕は少しでも勇者様のお役に立てればと、『攻略本』で大蛇……おっさんの弱点を調べる。


「勇者様っ! そのおっさんの好物はお酒と煙草です!」

「……そ、そんな情報いらないわよ!」


 あっ、間違えておっさんの好物をお知らせしてしまった。


「おっさんは火の粉……つまり火炎系魔法が効果抜群と書いてあります!」

「でかしたわ! アーサー!」


 おお、勇者様が初めて僕の名前を呼んで下さいました。感激です!


(いにしえ)に眠りし邪炎なるイブリートよ、すべてを無へと還す業火の身を以て、悠久の時から目覚め来たれっ!」


 す、凄いっ!

 勇者様が詠唱を唱え終えると、煉獄の赤き炎が大気を燃やしながら辺り一帯を炎の海へと変えていく。

 そこから世にも恐ろしい炎の鬼が出現する。


「絶望の炎帝……煉獄焼失!」


 それは一瞬の出来事でした。

 勇者様が立てた二本の指がおっさんへ向けられると、炎の化身が両手一杯に炎を溜め込み、一気に放ったのです。


「そなっ……殺しはルール違反でっしゃろ――!?」


 情けない声をあげながら、おっさんが跡形無く消し炭と化した。その残虐無慈悲な勇者様に対し、ミサイル団が言葉を失い座り込んでいる。


 いや、腰が抜けていると言った方が正しいのかもしれない。

 これが、世界の救世主……人も簡単に殺めてしまう勇者様のお力。


「なぜ……だ。なぜキングパイソンが火に弱いことを知っている――!」

「それは……これですよ!」


 僕は度肝を抜かれたミサイル団に『攻略本』を掲げてみせた。


「ポッケモン……攻略本、白黒だと? なんだ……それは?」

「ポッケモンに攻略本なんて……聞いたことがないわよ!」


 瞠目する二人もさすがに『攻略本』のことは知らなかったようだな。


「誤算だワン……この世界は危険過ぎるワン! 一旦引くワン!」

「逃がすわけ……ないでしょ?」


 逃走を試みるミサイル団へ、大魔王のような勇者様が立ちはだかる。


「ワーン、煙幕だ!」

「了解だワン!」

「うわぁ!?」

「ちょっ、なによこれ!?」

「いまだっ、逃げるわよ、コウシロウ、ワーン!」


 ワーンが使用した特殊なマジックアイテムのせいで瞬く間に森中に煙が充満し、煙が晴れた時には既に――ミサイル団の姿は消えていた。


「くそっ、逃げられたじゃない!」


 怒り心頭の勇者様が地面を蹴りつけると、大地が陥没して巨大なクレーターが出来上がる。

 信じられない脚力だ。


「ん……何か落ちてるぞ」


 僕は激発する勇者様をよそ目に、巻物を拾い上げた。


「……スペシャルマシーン……空を飛ぶ? なんだ、これ?」



 僕はミサイル団が落っことして行ったと思われる、奇妙な巻物とモンスターポールを一つ入手した。

【皆様へのお願い】


面白そう。

続きが気になる。

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(……評価してもらえると、作者のモチベがめちゃくちゃ上がるので最高の応援になります)

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