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討入りでござる

 私は高揚していた。

 何故だろうか。

 答えは当然、久しぶりに戦えるという状況にあるからだ。


「貴様らの悪事はとうに判っている……!」


 堂々たる意志で件の商人の門を叩き割り、訪問をしている。

 違法ではないのを確信しての行いだ。


「いきなりの来社に驚いたものが、さてさてどういうことですかな、元・ご家老の七尾様……!」

 

 出てくるは、商人。

 でっぷりとした体に、油の乗っている肌をしている。

 手には扇子とデジタル算盤、服は金ピカと典型的な豪商だ。


「そなたのところで民同士で売買取引をしてはいけないと通達していたモノの権利を売買していると聞いておってな。それも多くの民、地域を対象とし、農業が成り立たなくなるレベルで」

「はてさて、それは使用権ではなく、所有権のみのお話では?」


 ニヤリと笑う商人は、デジタル算盤をしまい、キセルを蒸かし始める。

 こちらが法に疎い侍崩れと言わんばかりの眼差しだ。


「使用権は各自で問題ない様に扱えとの通達をそなたはどう考える」

「問題ないでしょうに、お金を出せば自由に使用権を行使できるようにしてますんでねぇ? 払えないのは彼らの都合ですねぇ?」

「なるほど、そなたの言う事は一理ある」


 すなわち解釈の違いを持ってきた。

 具体的にお札を立てなかった地球政府の失策とも言える。

 否、奪い合いが基礎にある環境への理解不足ゆえに下した失策ともいえるのかもしれない。

 自分の場合もそうだ。

 働いていた場所を年齢制限だけで奪われた。


「さて、農業に関わる資源の独占は御法度であったことを忘れたか」


 そう、これだ。

 農業は各藩の主な収入源かつ、全員の生死にかかわる問題であったためだ。


「過去の法であり、誰が守るというのですか? 七尾殿はまだ大政奉還前だと思いで?」


 事実だ。

 この御法度は既に無効に等しい。だから、私も……


「七尾様も水で商売をなさっている……同じことでしょうに、ぷふー。水源を開放すればいい事では?」


 商売が出来る。

 勝ち誇った顔で私を見る商人。


「何が違うというのですか、七尾様のされている水源の確保による商売とワテの権利を行使する商売と」

「……違うな」

 

 そう言われることは想定済みである。


「そなたの言われることには根本的な勘違いがある」

 

 そして、三つ、指を立てて見せる。


「一つ、地球政府が水生成装置を各地域に配りなさった理由に背いている。それはこの星の荒れ果てた大地の緑化、ならびに食物生産の改善を行うことでより住みやすい環境を作るためだ。空気中の水分量も黒船は技術的に増やしているのはそれだ。貴様・・の行いはその趣旨に反している」


 一つ折る。


「二つ、水源の水と生成装置の水は用途と価値が違う。これを売ることでより多くの貨幣を民に還元することで、より豊かにするのが私の目的と叶う道筋だ。貴様も商人なら判るであろう、どっちがより多くの金を外から持ってきて、それを開発や治安に使えるかを」


 二つ折る。

 これはこの前の討入りで決めたことだ。

 金は貯まっているが、そもそも自身の目的と擦り合わせるためにはどうすればいいかを考えた結果だ。


「三つ、今、ここで私が貴様を切り伏せても問題ない事実だ」


 三つ目を折る。

 そして抜刀の構えに入る。


「よもや討入りもどきを元家老の方が行われると?」

「今は藩やショーグネートの御法度も取り下げられ、事実上、無法状態。そして元々の御法度には資源の独占については重罪……つまり、どちらでも貴様を切るには十分だということだ……これはショーグネート前では当然に行われてきた戦じゃ!」


 黒船が来て、御法度が取り下げられた弊害だ。

 この星は資源が少ない。そのため少ない資源の取り合いのため、現在のオーエドショーグネイトが納める二百年前まで、随時戦場、弱肉強食であった。それに戻っているだけである。

 人員が足らず捜査もできないため、討ち入り、一揆、戦も常に発生しており、用心棒の需要は増えるばかりである。

 バレなければ良いと弱きモノは奪われ、埋められることもある。

 オーエドならば流石に地球政府の治安部隊が動くが、この地方藩程度には来ないし、法も通用しない。

 

「……ちっ! であえ! であえ!」

「後ろ!」


 気配を感じ、愛刀『ムラサメ丸』を抜刀し、電磁の力で速度を上げた抜刀は後ろをとろうとしたニンジャに叩きつける。

 手ごたえあり。

 機械の砕ける鈍い音がし、同時に電磁の力が光る。

 視線を向ければ、機械の右腕が砕かれたニンジャだ。強烈な電気の力を流し込むことで全身が動かなくなり、ビクンビクンとしている。

 敵も義体技術、すなわち機械絡繰りに体を入れ替えているのだ。

 黒船語で言うとサイボーグだ。

 この星は資源が少ない。そのため少ない資源の取り合いのため、現在のオーエドショーグネイトが納める二百年前まで、随時戦時であった。

 この星の技術は不時着した移民船が元ではあるが、星間航行はもとい、大気圏突破能力すら失われている。

 しかし、デジタル算盤は勿論、機械技術は残っており、全日戦時という環境によりサイボーグ技術などは独自の発展を遂げている。地球政府が個々へのサイボーグ技術は命や生命への道徳観で遅々として進んでいなかった生命への冒涜がいとも容易く行われていた結果だ。


 商人を守るように浪人が四名、出てくる。知ってる顔は無く安心した。

 問題ない。

 油断を捨てろ。

 他にニンジャの気配は二だ。


「掛かってこないのか、私は一人であるからに……腰抜け」


 徴発してやる。

 浪人達の顔が怒りに染まる。

 彼らの足に違和感。駆動音がする。


「うら!」


 一人が足裏に仕込んだ発条バネで、反動をつけて突っ込んできた。

 すれ違いざまに顎に一線を叩き込み気絶させる。

 その彼を目くらましに他が突っ込んでくる。

 後ろから足に格納していた車輪を展開し、初速は一人目に劣るモノの、加速が十分になった彼らは続けざまに切り結んでくる。

 さすがに三人の突進を捌ききれず、服と肌に赤い線が入る。

 効果があったとみているようだが、深追いをしてこず、グルグルと砂煙をあげながら私の周りを回り始める。


「「「これぞニュートウバジュツドウ、三位一体攻撃ジェットストリームアタック!」」」

 

 有名な機兵戦術で、ニュートウバジュツドウは三人いれば並みの使い手を無傷で切る伏せることが出来ると言われている。

 しかし、疑問。

 私は当然にそれの対処方法を知っているし、相手もそのことを当然に知っているだろう。


「……」


 納刀。眼を閉じ、集中する。


「「「お命頂戴!」」」

 

 三人同時に地を蹴って飛び掛かってくる。

 その場合、普通は相手より上に飛ぶのがセオリーだ。

 だが、それは罠なのは判っていた!


「秘術、電磁目くらまし!」


 抜刀、そして瞬時の納刀で電磁による発光を起こすだけの技だ。

 しかし、それは猫騙しのように集中していた相手の虚を突き、眼を潰すことが出来る。


「「「「な!」」」」


 襲い掛かってきた四人はそれを見、驚いた。

 そう四人だ。

 彼らの砂ぼこりの裏に一人ニンジャがおり、彼らの飛び掛かりと共に上を塞いできていたのだ。

 彼らより上に飛ぶだけでは、その上昇の勢いを失った瞬間にニンジャ相手に不利を強いられ、そして着地を狙われるところであった。


 眼が見えない彼らをいなすのは簡単だ。

 四人にムラサメ丸を当て、機能不全に落とす。


「さて、どうする」

「ひ、ひぃいいいい」


 立ちふさがると、商人は土下座をしてくる。


「判った、権利は全部渡す、だから……! 油断したな!」

「油断なんぞしておらぬわ」


 残り一人、土の下から飛び掛かってきたニンジャを足で叩き伏せ、抜刀する。


「コレハヨソウガイダロウ!」


 商人の姿が膨れ上がり、異形の機械の姿を見せた。


「もう終わっておる」

 

 納刀。

 すると、商人の機械の体が吹き飛び、頭だけが転がる。


「ば、化け物……!」

「流石にもしや殺すかも知れぬと考えておったが、重鎮。予想通り、頭だけでも生命維持装置が働くタイプのようであったな」


 そしてその頭を掴み、言う。


「私は弱い方であったが故に貴様の命が残ったものと思え」

勢い小説は何処まで続くのだろうか……

続く!

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