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討入りでござれば

すんません、前後になりませんでした。

「今日の収入はと……」


 地球の今係留している黒船二台には百万人がおり、半分が女性だ。

 空気中から生成した水とは当然に『みねらる』が違うと評判となった『さめらい水』、日に一升が二十万缶ほど売れる。効能は美容、飲めば『まぐねしうむ』、『かりうむ』なるモノの効能で排便が良くなる。料理に使えば肉質を柔らかにするのも好評だ。

 さて、水料を考慮しなくてもいいので、竹缶なら一缶十円、ボトルなら一缶三円ほどで郵送料込みの費用だから、そして基本的には二百円販売だ。

 あと、工場の人件費二十人分、絡繰りを駆使した工場のため、人を少なく生産量をあげることが出来ている。主に輸送人員と工場の管理者だけで済んでいる。


「他に諸々引いて、三千五十万程っと……」


 他にかかる費用と言えば、主に工場の割賦、輸送費、そして地球政府に払う『税金、ゴミの処理の依頼、そして為替代』だ。『ぼとる』の作成機並びに充填機を黒船側に依頼して作ったはいいが、ゴミ処理が面倒なため、ボトルには一缶五円の処理費を税金という名目で支払うことになった。

 これらの費用というのも意味があるらしい。橋本殿曰く、『地球側の統括局はほぼ無料の技術で安定的に収入を獲得出来るので旨味がある業者として認識して貰えた。そして為替料も現二ホン政府に恩を売ることが出来た……!』

 事実、他の業者が気付いた時には、もうすでに知名度や癒着度で差別化が出来ている状態になり、あえて他の業者を入れる必要が無い、独占事業と成りおおせていた。

 果てなる過去、地球の見聞で言う、独占禁止法成るモノはこの世界には無いのである。

 勝てば官軍。先んずれば人を制す。


「順調であるな」


 一人、社長室で座りながら貯蓄高を見る。

 十二億円ある。

 まだ、橋元との会話から一年だ。企業を立ち上げてからだと、半年というのにだ。

 企業税を引く前の利益とは言え、半分にしても六億。

 十万缶体制が出来たのが二か月前。一年で考えれば……百億円を超える。


「ここからとなるがどういたそうか……」


 悩んでいた。

 確かに黒船の来航回数を増えるであろうし、『みねらるをーたー』の需要も増えるであろう。それに対してはある程度の投資、水源の確保と人員の確保をしていくのは間違いない。

 飲用目的で活用していない水源はまだまだ有る、そう難しい事ではない。

 しかし現状では今の本数がほぼ需要曲線のマックスだ。これ以上伸ばすには需要を伸ばすか、他事業へと移行が必要となる。

 ならばかねてから考えていた新たな水商売に手を出す必要があるかもしれない。


 バタバタと廊下から足音が聞こえたと思ったら飛び込んできたのは、運送頭の渡だった。


「大変です……討ち入りです!」

「なに、討ち入りとな?」


 外に行けば百人ほどの農民たちが居た。

 こういう状況は久しぶりである。


「汝ら、人の領地に入ること、刑罰に処されるわ覚悟の上であろうな? ニューシャドウケンドーの師範代、七尾が相手いたすがどうする!」


 抜き放つは愛刀、『ムラサメ丸』。

 仕込んだ絡繰りにより、電磁を纏わせることが出来、峰打ちならば気絶させるだけで済む。

 よもや、武力を持った私が出てくるとは思わなかったのか、動揺がはしるのが見える。


「よもや貴様ら、弱きを叩けば、利益が出てくるなどど非道を考えていたのではあるまいな? 手討ちにすることは今の法出来ぬが、番所へ叩き出すことは容易ぞ、モノ申してみよ!」

「……何卒、農業のために水をお分けください!」


 土下座だ。

 後ろに赤い髪を束ねた少女がするとそれに合わせ、皆が行う。

 見れば、数は多いが確かに武装はしていない。


「面を上げなされ」


 少女の顔は自分より若いがその眼に強い意志を感じた。


「地球政府から各村ごとに配布された水生成装置はいかがしたか、ここに頼みに来るのは筋違いであろうに」

「……奪われました」


 聞けば、所有している鉱泉や水源がある村のモノだった。

 生産性の上がるという機械を紹介してきた商人が居て借金をしてもすぐ返せるとの話だった。

 確かに二期作の内、一期目は生産量が上がったモノの微々たるものだ。

 しかし、すぐに壊れ、それを動かすためにはレアメタルが必要だと言われた。

 生産量も修理の話も言っていたものと違うとモノの証文には小さく書かれており、どうにもならず。

 結局は、商人に修理を頼み、その代わりとして水生成装置の使用権を奪われたとのことだ。


「自業自得と思われまするが」

「そこにご慈悲を……!」

「生成装置がある、それなら貸しあたることは可能である」


 ふと思いつき、試験用にと買い取った生成装置を取り出す。


「しかし、タダでは貸せぬ」


 これを見逃せば人は死ぬかもしれぬが、甘いとみられるは話が違う。

 今は浪人に近く、武士とはメンツを大事にするものである。


「1.今後起こす事業のために女性を貸して頂ければと思う、給金は払おう。」

 

 先ずこれだ。丁度いい、兼ねてから考えていた水商には必要なのだ。


「2、その商人の情報を集めて頂きたい」


 そして大政奉還は大殿が戦乱を起こさぬため、太平のための決断だ。

 元は藩制に関わっていたものだ。ならばその御意図を汲まなくてどうするというのだろうか。

 そう熱い感情が沸いた。


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