踊り子
俺はハンター。狙った獲物は逃さないプロのハンターだ。
プロに休みはない。今夜も獲物を求めて、俺は夜の世界に繰り出る。
夜道はしんっと静まり返り、人通りも明かりも少なく、暗く冷たい夜気だけが肌を刺す。絶好のハンティング日和だ。
「この辺りだな」
蛇行した細道を渡った先に、今回の舞台はあった。
昼間の内に罠は仕掛けてある。獲物が掛かっていなかったとしても、俺の得物で生け捕りにすればいい。
まさしく二段の構え。死角はない。油断もない。何せ俺はプロだから。
「せいぜい、元気に躍ってくれよ……?」
ニヒルに笑って。
俺は息を殺し、足音を闇に紛れこませて、忍び込む。
ズズッ、と足が沈んだ。
ぬかるんだ地面が、まるでスライムみたいに膝元からまとわりついて、離れない。
しかし、プロの俺はこんなことでは臆さない。
粘っこい足場を物ともせず、俺は生い茂る草を掻き分けながら足を運び、ズボッと手を地面に突っ込んだ。
手に確かな感触を捉えて、持ち上げる。
出てきたのは、ペットボトル。
その中で、ぴちぴちと痛快にダンスを踊る、獲物の動きがあった。
「ふ、ふははは! どうだ! 俺の手に掛かればこんなもの夜食前だぜっ!」
「だ、誰だ!?」
突如、夜に響いたその声と眩しい光に、俺は顔をひきつらせ、振り返る。
夜勤中のお巡りさんが、そこにいた。
「そこで……何をしているんだ?」
神妙な面持ちで、お巡りさんが訊ねてくる。
どうやら、俺はここまでのようだ。
観念したように、俺は目を瞑り、得物の柄杓を提げて、薄く笑った。
「田んぼで踊り子を……ドジョウを捕っていました」
ちょっとした言葉遊びで書きました!
こういう雰囲気の作品よく書くなぁ自分なんて、ふと気づきました
今回も650字以内です!