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鷂チャゲのSS作品倉庫  作者: 鷂チャゲ
5/6

付箋


「これは、これ……これは、こんだけ……」


 ぺら、ぺら、と。

 乾いた音が室内に響いていた。


 目を開けた先には、見慣れたお姉さんが台所で作業している。


 ご近所に住む彼女は時間があるとき、いつもこうして家へ招き入れてくれて、勉強や美味しいご飯を振る舞ってくれる。優しいお姉さんだ。


 何をしているのだろう。

 少し霞む目を凝らせば、付箋に何やらメモをしていた。


 『スジ肉』『ハツ』『レバー』など。

 書かれた付箋は、綺麗に包装されたお肉に貼られ、その個数や賞味期限まで、丁寧に記されていた。


 ぼくの視線に気づいたお姉さんが振り返る。


「あぁ、起こしちゃった? ごめんね」にこりと微笑んで、

「私ってさ、忘れん坊でしょ? お料理のとき、こうしてると間違えなくて済むんだよね」


 もう少し待っててね、と相変わらずの柔らかい声で、お姉さんは作業に戻る。


 彼女は優しく親切なお姉さんだが、おっちょこちょいでドジなところがある。だからよく付箋を用いているのを、ぼくは知っていた。


 そうだ、どうせならお姉さんのお手伝いをしよう! そしたら、ぼくとお姉さんの時間を作れる!


 そう思い、立ち上がろうとして、ぼくは気づいた。


 ──動か、ない?


 疑問に自然、ぼくは自分へ注意を向ける。


 なかった。

 手も、足も、お腹も。


 途中から千切れて、削がれて、抉られて。


 はみ出した肉と血溜まりの上に、ぼくはいた。


「ちょっとダメだよぉ、じっとしとかないとぉ」


 そんな柔らかい声が、台所から届いて。

 びくびくと、目と身体を震わせながら、ぼくはお姉さんを見た。


「──きれいに、分けられないんだから」

読んでくださってありがとうございます、鷂チャゲです! 


今回も650字以内のSSですね!


付箋である必要を感じないとかそんなの知ったことない!!!←

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