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僕のハンター日記  作者: 羊歯けんじ
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惜しかった

頭をかきむしるほど惜しかった。

初めて入った林道でメス二頭、オス二頭と遭遇した。メスらは例の如くピーと警戒音を発して逃げた。オスの方は車のドアを開けるまでは気付かれなかった。外に出たら逃げた。惜しかったがこれらは予想の範囲内。逃げるだろうと思っていた。

別の林道に行ってみた。中ほどまで進むとメスが一頭いた。のんびりと日に当たっていた。そうっとドアを開けて銃を構えたが逃げる気配はなかった。こちらを見ている。距離の問題だと理解した。こちらの動きもだいぶ自然になったのだと思う。立て膝でスコープを覗いてみた。やはりまだ揺れる。そうだ、今日は三脚を持ってきたのだった。カメラ用のものだが、家で試しに銃を載せてみたところかなりの安定を感じた。だが、これがいけなかった。車に戻り、三脚を持って戻った。鹿はまだ逃げない。銃を乗せた。スコープを覗いた。いい感じだ。レティクルが静止している。だが逃げた。

スコープの中で時が止まった瞬間、鹿は飽きてしまったかのようにいなくなった。惜しかった! と言うよりもつくづく愚かだ。シカが撃たれるのを待ってくれるわけがないではないか。スコープで捉えたら即座に撃つ。安定しようがしまいが撃つ。安全確認を済ませて即座に撃つ。これがディアハンターだろう。

しかし、スコープの中の鹿は素晴らしく美しい。狩猟をやる者にだけ与えられる感動的な瞬間である。そのまま時が止まって欲しいとさえ思う。それに、僕はどうしても発砲音が好きになれない。銃というものはあまりに無遠慮な代物だと思う。僕は猟銃を撃つ側の人間だが、相反する考えが混在している。それはそれで正しいことだと思っている。

それにしても惜しかった。撃っていれば当たっていたかもしれない。そうすると今頃祝杯を上げていたかもしれない。だいじょうぶ。次がある。好機は確実に増えてきている。

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