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僕のハンター日記  作者: 羊歯けんじ
20/26

動いているシカを仕留めた

日の出の一時間前に出猟した。

午後から雪の予報。

だから午前中いっぱい使って狩猟する。

今日はやらなきゃいけない気がしたのだ。

獲れる予感というわけではない。

なんとなく、夜明け前の薄暗い中、森林をさまよう自分の姿が見えた。


猟場は、歩き慣れた場所ではなく、昨日下見したばかりの場所に決めた。

いるかいないかわからない。これもなんとなくだ。

林道に入り、間も無く車を降りる。

昨日の自分の足跡がはっきりと残っている。

その上にシカの足跡。

完全に僕の足跡の上から踏みつけている。

今朝通ったばかりの足跡だ。

不思議。シカも、誰かの足跡を追うようで、きっちりと人間の靴跡を辿っている。


この猟場は、入り口の標高が一番高い。

奥へ進むにつれて谷を下る。

とりあえず、シカの足跡を辿って谷底まで下りた。

ここで足跡は入り乱れる。

さらに奥の湿地帯へ進む道、沢沿いの谷底の極まで進む道。

判別は難しいが、一番新しいと思える足跡を追って、沢沿いを進んだ。

ここまでの道のり、シカの気配を感じたのは一度だけ。

ザザザという音だけ聞こえて、目視はできなかった。

早朝の森林は静かだ。

時折、鳥がため息を漏らすように鳴くだけで、他は風の音しかしない。

と、こちらからは斜め上の斜面で突然シカが躍り出た。

こちらの気配に気づいて慌てて逃げ出す。

距離は50メートルか。ストンと上半身を落とし膝打ちの姿勢を取る。スコープは6倍。左から右に斜面を移動するシカに銃を向ける。

スコープがシカを捉えた。

先日の教訓。照準が合ってからでは遅い。

即座に撃った。

だがシカは変わらず走った。

どっちだ?

当たった感覚もあったのだ。

こちらもダッシュする。

見失わないように、当たったか当たってないか、見極めるために。

すると、シカは斜面を崩れ落ちた。

こちらからは見えない影に落ちたようだが、これは完全に当たったのだ。


シカはまだ足をばたつかせていた。

見ると、腹に当たったようだ。

酸っぱくて苦いメタン臭が漂っている。

銃痕を見ると胸にも見えるが、胃の極を貫通したのだろう。

だからある程度走ったのだ。

首に当たれば即倒れる。胸に当ててもほとんど走れない。これが、腹に当たったということ。

早く解体しなくてはいけない。

きっと内臓はダメだろう。肉もあばらはダメだろう。それ以外、取れる肉は取ろう。

気づけば雪が降って来た。

吹雪けば帰るのも困難。とにかく迅速に解体しよう。

冷静だ。喜びも興奮もない。

動いているシカを仕留めることができた。

だいぶ射撃にも自信が持てるようになった。

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