動いているシカを
新年早々シカを奪ったという事実、一転して獲れない期間に突入、早くも二週間だ。
ほぼ毎日出猟している。
実りがないわけではない。行った日だけシカに出会えているし、そのどれもが感動的だ。
だが、撃つまでには至らない。
全ては、野生動物であるシカが一手も二手も上手だということだ。
考えていたことがある。動いているシカを撃てないだろうかと。
僕の銃はショットガンだが、狙撃用の銃だ。ハーフライフル。スコープを覗いての精密射撃。静止している獲物に対して威力を発揮する銃。
だが、これから、長い目で考えてハンターを続けて行くには動いているシカも撃てるようにならないといけないのではないか、そう考えるようになった。
そしてその考えを試す機会が訪れた。
正午、メスジカの群れが移動するポイントがある。
最低でも5度、その習性を確かめた。
そこで待った。
耳を澄ました。
ザザザと葉を揺らす音が聞こえた。
シカ群れが移動を始めた。
最初の5頭が通り過ぎた。
もうダメだと思った。
だが、左の視界に後続の群れが見えた。
これも5頭はいた。
スコープを固定した。
左目で俯瞰しながら右目で倍率6倍の地点を見据えた。
シカがスコープに入った。
撃った。
銃声が響く。
だが、シカ群れは、列車のように通り過ぎる。
青い空が知らんぷりする。
と、タンタンタンと乾いた音がした。
わからない、が、ひょっとしたら当たったんじゃないかと思った。
銃弾を受けて、身動きの取れないシカが、ジタバタ脚を蹴って身近な樹木を叩いてるのではないか?
そう考えたのだ。
だから走った。
シカ群れの軌跡を辿って走った。
しかし血の一滴もない。
落ち着いて考えたら、タンタンタンという音はキツツキの音だった。
銃声に反応してドラムを叩き始めたのだろう。
そのタンタンタン、いやカンカンカンが青空に響き続けた。
なんだか虚ろな気分になった。
決して悪い気分ではない。
とにかく動いているシカに向けて撃ったのだ。
もう一間早く撃つべきだった。
スコープに捉えるか捉えないかの瞬間、そこを狙って撃つのだ。
それが動いているシカを撃つということ。
目に入ってから撃ったのでは遅い。
時を、シカの動きを制する。
そのコツだけでも学習できた。
今日は記念すべき日になった。
カンカンカン、キツツキのドラムが記憶をより強くした。




