新年
もうそろそろ獲れない記録2ヶ月を更新しようとしている。
依然として獲れないまま新年を迎えた。
晦日にちょっとだけ出猟した。
谷の反対側に群れがいて、気づいて逃げられた。
元旦にそこを狙いに行った。
時間帯だろうか、一頭も出会えなかった。
二日は出猟しなかった。酒を飲むばかり。
その夜、雪が降った。
北日本は連日大雪と報じられているが、北海道の東部は嘘のように雪が降らない。
それが、ようやく降ったのだ。
待ちに待った雪。
これで足跡追跡が容易になる。
興奮してまた酒を飲んでしまった。
案の定、翌朝起きれなかった。
一応午後から出猟した。
新雪の足跡が新鮮だ。
ひたすら足跡を追う。
谷を下りる。
沢で水を飲んだ形跡。
ここからどこへ向かったのだろう、しばし考える。
と、「ピー」と鳴かれた。
沢向こうに鹿がいた。
射程距離内だ。
だが、鹿はすぐに逃げた。
くそ、すぐ近くにいたのに、また向こうから気づかれた。
その後の追った。
足跡は確実に追える。
別の沢まで来た。
沢に出ると足跡を見失う。
すると、またしても「ピー」。
鹿は逃げた。
近いはずだが、目には見えない。
やはり相手の方が上手だ。
悔しくはない。
初鹿だ。鹿を追って、見て、鳴かれた。
心地よい汗もかいて、清々しい気分。
これが朝ならもっと遭遇できるのだ。
酒のせい、というよりは安易に酒を飲んでしまう己の精神力の弱さを恥じる。
今年の抱負は酒を断って鹿。
酒より鹿だ。
帰り道、国道脇で鮮血。
新雪に血の色が生々しい。
きっと誰かが撃ったのだ。
位置から見て、路上発砲、かつ車上発砲だろう。
堂々とやるということはまだ暗いうちか?
おそらく時間外発砲なのだろう。
国道沿いを鹿がうろつくのは夜明け前だ。
ああ、鹿を撃ったのだな。
違反までして撃ちたくはないが、どうしても心がうずく。
僕も撃ちたい。
獲るまで酒やめてみようかな。




