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母子
また獲れない時期に突入した。
正直、意地でも獲ってやるという気持ちでもなかった。
遭遇はしている。
むしろ以前より出会いは多い。
この時期、子連れの鹿が多い。
母と子。
撃つのをためらってしまう。
前回、撃ち殺した母ジカに寄り添ってきた子ジカ。
その光景が脳裏から離れない。
自分が母子家庭で育ったせいもあるのだろうか。
きっとあると思う。
母一人子一人の鹿は撃てない。
何を甘いことを言っているのだと思われよう。
慣れれば撃てる日が来るのかもしれない。
そうなるべきだとわかってはいる。
出猟範囲もかなり狭めた。
遠出はしていない。
決めた場所でもっぱら忍び猟の訓練。
しかし何度山に入っても帰り道は迷う。
同じ道で帰って来れない。
早く帰りたいからスマホのGPSを使ってしまうのがその理由だ。
鹿道と航空写真とでは違う。
鹿道を通ったほうがスムーズだ。
GPSに頼らないほうが良い。
だがつい野生をおざなりにしてしまう。
鹿道を信じなければいけないのだ。
という獲れない時期。




