〜手紙〜
誰もが1度は夢見る「異世界」「魔法」「ファンタジー」しかし、実際に異世界に行ったり、魔法が使えたりしたらどうだろう?きっとその人は困惑し、苦労するであろう。これは普通の学生である俺が体験した不思議で、現実味のない、ただし俺にとっては紛れもない現実の話だ。
「ただいま〜」
俺が学校から帰宅すると奥から声が返ってきた。
「おかえり、ユウ!手紙届いてるよ?」
俺は俺に届いたという手紙とるためにを居間に向かった。
(俺に手紙?送ってくるような人いたっけ?)
考えてみても俺に手紙を出すような人は周りにはいない。友達同士なら電話などでいつでも連絡できるし、おじさんとかだとしても俺には出さないだろう。そんなことを考えていたら通り過ぎてしまった。
ーー誰からだろ…とりあえず手紙もらうか!
居間に着くと母さんは不思議そうな顔でその手紙を俺に渡す。
「誰から?」
「知らないよ、俺だって」
渡された手紙はなにやら見た目からして高級そうな封筒に包まれていて、光にすかしてみても全く見えない。
「とりあえずありがと。部屋でゆっくり読んでみる」
俺は手紙をひらひらさせて言う。
「ん、わかった」
母さんも頷いて、晩ご飯の用意をするのかキッチンに向かった。
俺も部屋へ戻り、手紙を持ったままベッドへ寝転がる。
「しかし、こんな手紙誰が出すんだ?」
ベッド上で手紙を弄びながら考えていた。
(見てみれば…わかるよな?)
色々怪しい…というかおかしいが、俺は中身が気になるので開けるとことにした。
そして、封筒から丁寧に中身を取り出すとそこにはーーー
」
3つ折りにされた請求書が入っていた。
(いや、こういうのってなんかちがくね!?なんでこんな封筒に請求書なんかいれるの!?)
そもそも俺は請求書来るようなことはやっていない。………はず。
「すっげー期待はずれというか…うん、思ってたのと違う」
がっかりと肩を落とす。俺は請求書の内容を確認しようと中身を見る。
「ん?金額が書いてない?」
請求書とだけ書かれていて、金額やなんの請求かは全く書かれていない。
「……捨てていいかな?」
流石に何も無い請求書の用紙を取っておくことは出来ない。クシャクシャに丸めてゴミ箱に投げ入れた。
ーーなんで捨てたんだい?ーー
どこからかそんな声が聞こえた気がした。
「空耳かな?」
はっきり聞こえたわけではないから空耳として対処しようとした。
ーーなんで捨てたんだい?ーー
同じ言葉が同じように繰り返される。
「…!どこから聞こえるんだ…?」
ーーボクはなんで捨てたか聞いているんだ。聞こえてないわけじゃないんだろう?ーー
部屋を出ようと立ち上がった時、また同じ声が聞こえてきた。
(どこから声をかけてる?)
キョロキョロしていると窓枠に1匹の烏が止まっていた。
「君が声をかけているのか?」
俺が聞いても、烏はなにもせず、ただそこに止まっているだけだ。
ーー違うよ。確かに見た目は烏だけど、ボクは烏じゃないし、君の近くにはいないよーー
「じゃあどうやって俺に話してるんだ?」
ーーそうだな…いいけど、その前になんであの紙を捨てたのか聞きたいなーー
「なんでって…それは白紙の請求書だったし…持ってる意味なさそうだし」
ーー請求書?あれ?書類間違えたかな?ーー
(書類間違えたってなんで手紙と請求書同じとこにおいてあるんだよ…)
ーーちょっと待っててくれるかい?探してくるよーー
「あ、おい!」
しばらく声は聞こえてこなかったが、絶対また声が聞こえるのはわかっていたので、黙って待っていた。
ーーごめんごめん。遅くなったねーー
10分くらいだった頃、少し息を荒いが、またあの声が聞こえてきた。
ーーあったよ。君へ送るはずだった手紙ーー
「ちなみにどこにあったかは聞いて大丈夫?」
ーーえっとね…自分のズボンのポッケに入ってたーー
おかしいよね〜と言いながらははっと笑う。俺は烏と会話しているような状態なので、声で判断するしかないが、確実にこの声は笑った。
「ポケットにあったら10分間何してた…」
どこか知らない場所から烏を使って話をしている時点でおかしいとは思っているが、しかし頭が悪いことは全く予想していなかった。
「それで?アンタはどうやって俺と話してる?」
めんどくさいので単刀直入にそう切り込む。
ーーせっかちだなぁ〜そんなんじゃ女子にモテないよ?ーー
「余計なお世話だ」
こいつにだけは言われたくない。人を食った様な調子だ。ほんとに調子が狂う。
ーー手紙の内容はいいのかい?ーー
「いや、教えろよ…俺に出す予定だったんだろ?」
かと思えば唐突にアホな質問をしてくる。なんなんだ、コイツ。
ーー手紙の内容、気になる?ーー
「当たり前だろ」
しつこい。とりあえず1発殴ってやりたい。
ーーじゃあ、手紙の内容聞くか、それともボクがキミとどうやって話しているかを聞くか、どっちがいい?ーー
「なんでだよ!?どっちも教えてくれないのか?」
完全に謎の声の会話のペースになっていた。
ーーこっちの事情でね。ただ、キミが正しい方を選べばもう片方のヒントはあげられるかなーー
(ほう…どちらか一方で正しい選択をすればもう片方もヒントが得られると…)
こんなの考えるまでもなくどちらが正しい方か分かるだろう。
「わかった、手紙の内容について教えてくれ」
ーーおお!よくそっちを選んだねーー
「当たり前だろ。こっちを選べばヒントも貰えると思ってな」
なぜならばたとえ謎の声が俺と会話している謎を選んだところで手紙の内容がわかるわけでもない。仮に分かったとしても、ヒントでは意味が無い。
(さらにいえばコイツが隠したがってるからな)
そんなに隠したがってるのに、答えにするはずがないという考えだった。
ーー流石だね〜。正しい判断力も持っているーー
なんかコイツに言われるのは癪だが、相手の姿が見えてないのでどうしょうもない。
じゃあ、読み上げるねと言って手紙を読み始める。
ーー拝啓、御影遊斗様ーー
(なんで俺の名前も住所も知ってんだ…)
疑問はあるが、烏を使って話すようなヤツだ。それに比べたらなんてことはないだろうと言い聞かせてスルーする。
ーーいかがお過ごしでしょうかーー
なんてことのない滑り出しで始まった手紙は今のところおかしな内容ではない。俺の体調を気遣ったり、近況を尋ねるようなごく普通の(?)手紙である。
(一体何が隠されてるんだ?)
特に変わったところもなさそうだし、本当にヒントが得られるのか心配になってきた。
ーーと、前置きはこのくらいにしてーー
(お?ようやく本題か…ってか前置きなげーよ!)
ーー御影遊斗様、あなたを我が学園にご招待いたします。ぜひ我が学園にお越しくださいーー
(ん?学園?)
ーーもちろん学費やその他費用も必要ありませんーー
(チョー怪しいんですけど!?)
いきなり話がおかしくなった。学園に招待とか、費用はいらないって、詐欺じゃないか疑っていると、
ーーっとまあ、こういうないようなんだけどーー
そのまま手紙は終わってしまい、余計に混乱する。
「いや、どういう内容だよ!学園とか費用とか、俺になんの関係が!?」
ーーそのまんまだよ。キミは学園に特待生として入学する権利があるんだーー
「だから!俺は成績良くはないし、特待生制度利用してないんですけど?」
おかしい、何かがおかしい。いや、もとからものすごくおかしかったが…
「ってか、親と相談しなきゃダメだろ」
ーーあ〜親御さんにはもう承諾得てるよーー
「はい!?」
ーーあとはキミが学園に来るかどうかだけどーー
「そもそも俺、桜月学園なんて聞いたことないし」
ーーそっか〜知らないのか。まあ、それもそうかーー
(どういうことだ?知らないのも当然?)
ーー桜月学園はほとんどの人は入れないから、こっちから推薦を出して入ってもらうんだーー
「へえ…不思議な学校だな」
相づちは打ちつつも信用はしない。
ーーまあ、そういうわけだから、ちょっと一緒に来てもらうよーー
「いやだからーー」
行かない。そう言いかけたが、もう遅かった。視界はぐるぐると回り始め、何が起こったか確認する時には自分の部屋ではなくなっていた。