2、大切なものは
人は何かを必要としている。
それはそれぞれ違う。
それでもそれを見つけようとしている。
それは人の一生の中でどれほどあり、どれだけ見付けられるのだろう。
少なくとも私はいまだに見つからない。
ともに歩むものはどうやら見つけたらしい。
「どうした?」
「見つからないと思ってな」
「人生の探し物?」
「ああ」
私が話すとこの者は一緒に考えてくれる。
それでも見つからないものは見つからない。
探し物は途方もなく広大な世界の中にある。
「う~ん、意外と近くにあったりしてな」
「よく言う、お前は見つかってるからそう言えるだけだ」
「そうかな」
「ああ」
この者の探し物が何かは私は知らない。
ただ、この者から言われただけだ、見つかったと。
それが何か聞いたら私の探し物も見つかるのだろうか。
尋ねても苦笑されるだけで終わる。
「そう言えば、何を探してるんだ」
「大切な者」
「大切な者?」
「私のそばにずっといてくれる人だ」
「へぇ~」
そっけない返事、自分から聞いてきたくせに。
私はなんだか腹が立ち、そちらを見て驚いた。
呆れているのだろうと思った、関心もないのだろうと、違った。
この者の顔はとても切なそうだった。
初めて見るその顔に心臓が痛む。
もしかして本当に近すぎて見えていなかっただけなのだろうか。
「どうした?顔、真っ赤だぞ」
「なんでもない!」
この者の探し物はなんだろう。
私と一緒ならいい。
そう思うようになってしまった。
今はもう考えたくない。
聞かない方がいいと思った。
まだ私はこの者と二人で歩んでいきたい。
だから、私が聞く勇気を持てるまで待ってほしい。
私が探すべきものが変わった、この者には言えない、言ったら変わってしまう気がする。
まだこのままで、一緒に歩もう。
そうだこの者の言うとおり、大切な者は近くにある、ただ近すぎて見えないだけだ。
だが、本当に人生で見つけるべき探し物は多くあるのだろう。




