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SIDEフオウ:日常4

 ホウオウ・フィーハットという男がいた。

 フオウとよく似た顔だったらしい。

 レイルが言うには、フオウの生物学上の父親に相当するらしい。


 フオウとキリスの遺伝子を人の遺伝子と合成する際に使ったのが、この男の遺伝子らしかった。

 そもそも、シンキングセルというのは、基と為る人の遺伝子入りの細胞に素となる動植物の遺伝子を組み込んで、さらにその細胞にあるものを注入することで増殖を開始する。

 その後、コンピューター制御で目的の身長や体重、胸の大きさなどになるようだ。


 あるもの、というのは、少し前まで実在するのかどうかすら疑問視されていた鉱石。

 名はエアメタル。あるいは時空石。この二つ名で呼ばれている。

 文献では、遥かな昔に六人の神様を乗せてきた船だってされるこの時空石、一定量の雷を吸収することで時間を超えることが出来るらしい。


 発見当時は躍起になって時空石の謎を解明しようとしていたようだが、ランダム性が強いことと、実験を行った被験者が一人たりとも戻ってこなかったために時空石は雷を急襲して時間を超越するのではないか? という疑問は疑問のまま謎の時空を越えるらしい(・・・)鉱物というなんともあやふやな説明で研究がとん挫した。


 だが、レイルは実際に見たらしい。

 ホウオウ・フィーハット、レイルの最大の親友とも呼べる存在が、光り輝く時空石と共に消える瞬間を……

 その日の事は何度もなんどもフオウは聞かされていた。


 その日はとても薄暗く厚い雲に覆われていたらしい。

 レイルは新たなシンキングセルを見せるため、彼と妹をカプセル前に呼んだ。 

 そのときだ。雷が施設に直撃し、直後シンキングセルの細胞に、今まで見られなかった変化が起こった。


 男性体の誕生である。しかも、キリスというオマケつきだ。

 レイルは奇跡に喜んだ。しかし、隣を見て愕然とした。

 隣では、ホウオウ・フィーハットのポケットに輝きが生まれていたのだ。


 偶然にも見学した後の学会の発表で使用する予定だったらしい。

 時空鉱石エアメタルの発動。

 効果は一瞬。光に包まれたホウオウ・フィーハットたちはその場から消え去った。

 それ以降、彼らは姿を消したまま、もう二度と、この時代に帰ってくることはないだろう。


 その後、レイルは躍起になって彼らを元の時代へ戻すことを研究し始めるのだが、フオウにはそんなことは関係ない。

 フオウの名前はそいつの名前から付けられた。

 ただ、【ほ】から始まるシンキングセルが既にいたのでフオウとなったらしい。

 ホウオウ・フィーハットとの関係とはそれだけの関係なのだ。


「ふ~ちゃん、帰ろ~」


 席から立ち上がったフオウに、メイリィが上機嫌で声をかけてくる。


「なんでお前は授業前よりも元気になってるかな……」


 メイリィはいつも元気だ。

 ただ、授業中はノートを取らず、睡眠だけを取っているので、授業終了後は何時にも増して元気だった。

 シンキング・セルの知識量は学生と余り変わらないのだが、その覚える要領のよさはケタ違いのため睡眠学習でも普通に好成績が取れたりするのである。

 フオウは出来損ないなのでそこまでの能力が無いので勉強も苦労しているのだが、頭の出来に関しては恨み事を言っても仕方ないので溜息と共に劣等感を押し流す。


「むふふふふ。私はいっつも元気溌剌でございますよふ~ちゃんさん」


「そーでござーますか……亮、お前はどうする?」


 隣で朝方とは別の雑誌を読んでいる級友に目を向ける。

 正直驚いた。彼のカバンには一切の勉強道具が存在していなかった。

 カバンの中に目一杯詰め込まれていたもの。

 シンキングセル関連の雑誌、約二十冊。

 お前は一体何しに学校へとやってきているんだ……


 すでに今日だけで六冊教員に見つかって減ってしまったにもかかわらず、明日もまた補充されていることだろう……ある意味尊敬に値する。

 どうやら勉強する気はないようなのだが、それでも彼はシンキング・セルおっかけを行う資金を稼ぐため頭の回転は速かった。大体いつも学年平均より上をキープしている。


「俺はシンキング・セル教会に寄る。お前も来るか? 今ならもれなく教祖様じきじきにおもてなしされるぞ」


「おもてなしだけで済みゃ行くけどな……あの教祖さん俺を祭り上げてご本尊にしようとしやがるから遠慮する」


 フオウは前に亮の勧めで一度だけ顔をだしたことがある。

 シンキング・セルを救世主と崇めるシンキング・セル教会。

 その教祖は物凄い熱意と礼節を持ってフオウを待遇してくれた。


 しかし、御神体にしようという画策があったらしく、教会脱出に五時間かかった。

 結局キリスがフオウを探して乗り込んでこなかったら、フオウはそのまま御神体として祭り上げられていたんじゃないだろうか?

 龍神様のお怒りに触れた教祖様はしばらく引き籠りになったらしい。

 そんなとこにもう一度行くとなれば、それこそ飛んで火に入る夏の虫だ。


「おぉっし、今日はふ~ちゃんとふったりっきり~」


 メイリィが喜ぶが、女性拒絶症のフオウにとっては正直どうでも良かった。

 何が起ころうとも決して間違いは起こり得ないのだから。

登場人物


 №001 ヲークス・ヲルディニア 蜉蝣の因子を持つ女性体

   能力名:??? 死亡


 №444 フオウ・ワウン 龍の因子を持つ男性体。

   能力名:空気操作


 №445 キリス・ラーニリア 龍の因子を持つ女性体。

  肩にすらかかってない自称ストレートヘアに左右から青いリボンを結び付けたいつもの髪型の少女。

   能力名:禁止

     我は汝の行為を禁ず(プロハビット・アラウズ)

       :シンキングセルの能力を禁止する。禁止日数は最大で一年。


 №446 メイリィ・スウ 蛾と蝶を持つ女性体。

  ショートカットの黄色の髪の活発な少女。

   能力名:???


 №482、ヤオ・ソーティア

  ポニーテールの女。

  黒のタンクトップと太股の部分で乱暴にちぎり取ったようなジーンズを着ている。

   能力名:???


 №998 ヨーティ・ヒュリケ 鶴の因子を持つ女性体

  金色のロングストレートに優しそうな眉、意志を宿した瞳、薄紅の柔らかそうな唇、170くらいの背丈に爆乳を持つ。

  エンドのプロトタイプとして作られたためか容姿はそっくりになっている。

   能力名:光線操作


 №999 オメガ・エンド 人間の因子を持つ女性体

  金色のロングストレートに優しそうな眉、意志を宿した瞳、薄紅の柔らかそうな唇、小柄な体躯に胸は動きやすさを追求しこじんまりとしている。

   能力名:コピー&ペースト

     我は汝が力を複製する(コピー)

       :シンキングセルの能力または身体の状態をコピーすることができる。

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