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SIDEエンド:入れ替わり・後編

「なぜ貴女を襲うのか……それはお姉様が私と瓜二つだから。姿を偽って無力な人間のフリをして他のお姉様方に接触するよりも、苦労して正攻法で攻めて殺すよりも、名前を変えて近づくだけで済むわ。なにせお姉様はまもなく世界に羽ばたきお兄様に会いに行くのだから。だから私が伝えるわ。フオウお兄様に危機が迫っていると、オメガ・エンドがあなたを狙っているから気を付けてって。本当楽よね、まさか危機を伝えに来た女性がお兄様を狙う相手だなんて、予想もできないでしょうし。それからもう一つ……」


 エンドはヨーティに掌を向ける。


「貴女が一番実践に不慣れ。もしさっきみたいに相手が倒れた状況なら、私なら迷わず頭をぶち抜くわ。相手の能力も知らず不用意に近づく愚鈍さ。愚か、阿呆、間抜け、愚図! だから私は、オマエを一番初めの贄に決めた」


 収束。

 掌に集まる光。

 これは面白い。なかなか貴重な体験だわ。とエンドは悪魔の様な笑みをヨーティに向ける。

 発射。


 思っても見なかった反撃に、ヨーティは避けることすら出来ない。

 それはそうだ。誰だって自分しか扱えないはずのものを使われたら逃げるより先に思ってしまう。

なぜ? なぜお前がその力を使うのか?


「これが私の力なのよ、お姉様。そしてありがとうお姉様、バカで居てくれて、私にわざわざ光線を扱う能力を捧げてくださって。お姉様の御蔭で私は最弱から脱却したわ。そして……さようなら」


 ニヤリと微笑むエンドの前で、心臓付近に穴を開けたヨーティが静かに倒れた。


「あら? 少しずれてる……次は確実に仕留めないといけないわ。ねぇ、お姉様?」


 狙いを定め、光を収束。

 トドメを刺すべく顔面目掛けて光を放とう、エンドはそう思った。

 でも……


「そこまでにしといたら?」


 不意に背後から声をかけられる。ゾクリとエンドの背中を悪寒が駆け抜ける。

 なぜ? もう、この施設に生き残りはいないはず……

 即座に振り向き掌を向ける。

 そこには、ポニーテールの女がいた。

 黒のタンクトップと太股の部分で乱暴にちぎり取ったようなジーンズ。


「何時の間に?」


「さっきから居たんだけど? お取り込み中だったみたいだからさ」


「貴女は……まぁ、こんなとこに来るくらいだし、お姉様でいいのかしら?」


「№482、ヤオ・ソーティア。貴女は№999のオメガ・エンドね」


 壁にもたれて腕組みをしたまま無防備に佇むヤオ。

 自分のことを知っていることに驚きつつも、相手の無防備さに思わず笑みが込み上げる。


「まぁいいか、まさかここで一度に二人の力を貰えるとは思わなかったわ」


 エンドはゆっくりとヤオの胸に照準を合わせる。


「そいつは良かったわね、でも……私の力は安くはないよ」


 光の収束。次いで発射。

 ヤオに当たる瞬間、光が不自然に曲がった。

 同じ場所に無傷で佇むヤオが不敵に微笑む。


「驚いた、どんな力なのかしら? 見えない防壁?」


「持っていても大して良い力ではないわ。それよりも、今日はあなたに伝えておくことがあってきたのよ」


 と、腕組みを解いて、エンドに身体を向けた。


「貴女には三つの未来が用意されている」


 指を三本立ててエンドに向ける。


「はぁ? 宗教勧誘でもする気?」


「一つは獣。残るは孤独」


 一歩一歩近づいてくる。光を放つ、ヤオの目の前で二つに割れた。

 ヤオの指が一つ折り曲げられた。


「一つは人。残るは後悔」


 ヤオが跳んだ。瞬きの間にエンドの目の前に姿を移す。慌てて仰け反る。

 だけど……


「一つは共存。残るは……残滓」


 逃げ切れなかったエンドの額に当てられる掌、何かの力が注がれる。

 頭が白くなる。真っ白に染められて、一瞬にして元に戻った。


「今の貴女には前者が一番近く、後者がもっとも遠い未来。あなたはどれを選ぶ?」


 エンドは慌ててヤオの手を振り払う。

 エンドの手が触れる寸前、ヤオは擦り抜けるようにエンドの背後に跳んだ。


「一度だけ、やり直す機会を与えてあげる。それを使うかどうかはあなたしだいよ」


 後ろから声が聞こえた。思わず振り返る。

 ヨーティを抱えるヤオがいた。

 いつ、どうやって消えた?


「その時が来るまで、きっと私があなたに関わることはないわ。それじゃあまた、いつか会いましょう、オメガ・エンド」


 言葉だけを残し、ヨーティもろともに消え失せる。


「ヤオ……ソーティア……一体どんな力を持っているの……」


 疑問に答えられるものはその場には存在しなかった。

 エンドは踵を返し、当初の予定どおりに行動する。

 計画が失敗したら……その時はまた別の計画を考えれば良い。


 今大切なことは一つ。

 唯一生存している男性体、フオウ・ワウンにどうやって取り入るか。

 別にこいつを一番に殺しても良かった。


 でも、製作者であるお父様が死に、男性体が一人になった以上、必ず他のシンキングセルたちは、自己の生存本能に忠実に、子を残すためにフオウ・ワウンに接触してくる。

 だから、エンドは男性体に取り入り、無防備に生殖のために近づいてきた奴から順に殺していくだけ。


 男性体を先に殺して団結されたり、隠れられたりするよりは確実に能力も集まるし、数も減らせる。

 最後に男性体を殺してしまえば……


「そうして……私は全てを滅ぼし唯一の神になる。ふふ。あはははははははっ」

登場人物


 №001 ヲークス・ヲルディニア 蜉蝣の因子を持つ女性体

   能力名:??? 死亡


 №444 フオウ・ワウン 龍の因子を持つ男性体。

   能力名:空気操作


 №445 キリス・ラーニリア 龍の因子を持つ女性体。

  肩にすらかかってない自称ストレートヘアに左右から青いリボンを結び付けたいつもの髪型の少女。

   能力名:禁止

     我は汝の行為を禁ず(プロハビット・アラウズ)

       :シンキングセルの能力を禁止する。禁止日数は最大で一年。


 №446 メイリィ・スウ 蛾と蝶を持つ女性体。

  ショートカットの黄色の髪の活発な少女。

   能力名:???


 №482、ヤオ・ソーティア

  ポニーテールの女。

  黒のタンクトップと太股の部分で乱暴にちぎり取ったようなジーンズを着ている。

   能力名:???


 №998 ヨーティ・ヒュリケ 鶴の因子を持つ女性体

  金色のロングストレートに優しそうな眉、意志を宿した瞳、薄紅の柔らかそうな唇、170くらいの背丈に爆乳を持つ。

  エンドのプロトタイプとして作られたためか容姿はそっくりになっている。

   能力名:光線操作


 №999 オメガ・エンド 人間の因子を持つ女性体

  金色のロングストレートに優しそうな眉、意志を宿した瞳、薄紅の柔らかそうな唇、小柄な体躯に胸は動きやすさを追求しこじんまりとしている。

   能力名:コピー&ペースト

     我は汝が力を複製する(コピー)

       :シンキングセルの能力または身体の状態をコピーすることができる。

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