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SIDEエンド:入れ替わり・前編

「それじゃあ、さっき伝えたこと、フオウ君に教えておいてくれるね」


「はい。ええと……№999のオメガ・エンドは私と同じような容姿を持っていて、ノアの箱舟から脱走、父さんとエリアン・モートリアを殺害した危険な出来損ないで……見かけ次第処分するように、ですね」


「ああ。頼むよ、住所はさっきのメモを確認して、それから……」


 エンドがそこに着いた時、この施設の役員か何かだろう男と、ヨーティ・ヒュリケが会話を交わしていた。

 間に合ってよかった。とエンドは醜悪な笑みを浮かべる。


「残念、その伝言は届かないわ。お姉様」


 声をだしてようやく気付かれる。

 ここに来るまでエンドは幾らかの役員を始末した。

 純白だった白衣には既におびただしい数の赤い飛沫が斑に付いている。

 エンドの体自体にも嫌な赤い斑点がついていて、攻撃に使った両手については既に血塗れだった。


「あ、貴女は……」


「オメガ……エンド!?」


 役員がいち早く反応してエンドの前に飛びだし両手を広げる。


「は、早く行きなさいTCC‐87、ここは私がぁっ……」


 男が言い終えるより先に、腹にヅブリと腕を突き入れる。


「ごふッ!?」


「い、いやぁぁぁぁぁッ!?」


 エンドは血を吐き出す男の耳元に口を寄せる。


「ここは私が? どうするの?」


 腕を引き抜く、男が倒れる。


「さぁ、お姉様。その力、名前、役目、全て私が貰ってあげる」


「あ、貴女が……オメガ・エンド?」


「そうよ? そっくりでしょ?」


 エンドとヨーティは着ている服こそ違うものの、顔は同じ、金色のロングストレートに優しそうな眉、意志を宿した瞳、薄紅の柔らかそうな唇、どれも同じ。ただ……身長はヨーティの方が高い。

 エンドは160前後なのに対して、彼女は170程度。さらに、貧乳気味のエンドに比べて、衣装からでも盛り上がりすぎている爆乳……なんだかちょっと羨ましい。


 どうにも腑に落ちないものの、より動きやすく改良した結果、エンドの身長や胸のサイズが出来上がったらしい……

 なぜだろう、エンドは彼女と自分を見くらべる程にレイルへの憎悪が募る気がした。

 せめて、胸はもう少し欲しかった……と恨み事を呟くが、既にレイルは存在しないのでこの恨み事が聞き届けられることはない。


「それじゃ、いただきますね、お姉様」


「何を……? ええい、迷うな私。相手は敵、相手は敵なんだからッ!」


 走りだしたエンドにヨーティは掌を向ける。

 確かこの女の能力は……光!

 気付いたエンドは咄嗟に掌の向いた方向から逃れる。

 一瞬遅れて光の筋が頬を掠めた。


「うくッ!?」


 ま、眩し……

 目の近くを通った光に思わずエンドは目を瞑る。


「もらった、そこッ!」


「しまッ……」


 かろうじで見えたのはヨーティの掌。

 真っ直ぐに伸びる光がエンドを突き抜ける。

 エンドの太股に大きな穴が開く。傷口から赤い液体が奔流する。

 エンドはその場に崩れ落ち、動かなくなった。


「や、やった……え? こ、こんなに楽でいいの?」


 嬉しそうに喜びながら、ヨーティはエンドの元にやってくる。

 死んだかどうかの確認でもするのだろう。けれど……

 近寄ってきたヨーティの足をぐっと掴む。


「あ、ま、まだ!?」


「お姉様……なぜ、私が貴女を最初のターゲットに選んだか……分かります?」


「な、何のことよ、離して、離しなさい! それ以上はもう一度光を打ち込みますッ!」


 掌をエンドにかざすヨーティ。でも……とエンドはほくそ笑む。

 心の中で罵倒する。ヨーティ、我が姉ながらあなたはなんと……稚拙。愚鈍ッ。幼稚ッ!


「よく……お聞きなさい……お莫迦なお姉様」


 意識集中。能力発動。


「私はね、この世界で最強のシンキングセルでありながら最弱のシンキングセルでもあるの。それはね、初めは攻撃的な力は全くないから。でもね、こうやって相手に手が触れたとき、私の力は発動する」


 エンドに与えられた、全てを集める超常能力。コピー&ペースト。

 役立たずのフオウから男と言う名の能力を奪い取り、全てのシンキングセルに子を成す事の出来る、レイルが逆転の発想で作りだした能力を持つ最後の子。


「我は汝が力を複製する」


 見た目で変化はない。でも、彼女の力を複製した。

 ただ、それと一緒に彼女の足の状態も複製させてもらったので、エンドに開いていた大穴が消えた。


「お返しよお姉様ぁ!」


 ヨーティの足を離し際、掌に意識を集中。

 ヨーティの太股に向けてソレを放つ。少し前のエンドと同じ空洞が開く。

 突然の痛みに一瞬ヨーティは何も感じることなく自身に開いた穴を見る。


「ひッ!? あああああああッ」


 痛みに仰け反るように、エンドから慌てて距離を取る。

至近距離過ぎて何をされたか分からないらしい。


「な、何今の!? あ、え? 攻撃された?」


 しきりに太股に目をやって何が起こったのかを確認する。


「何これ? どうして!? 貴女が受けたはずの傷がこっちに……」


 彼女の疑問には答えない。代わりにエンドは見下すような笑みを浮かべる。

 その顔は、これから絶望へ突き落とすと決めた相手への優越を含んでいるように見えた。

登場人物


 №001 ヲークス・ヲルディニア 蜉蝣の因子を持つ女性体

   能力名:??? 死亡


 №444 フオウ・ワウン 龍の因子を持つ男性体。

   能力名:空気操作


 №445 キリス・ラーニリア 龍の因子を持つ女性体。

  肩にすらかかってない自称ストレートヘアに左右から青いリボンを結び付けたいつもの髪型の少女。

   能力名:禁止

     我は汝の行為を禁ず(プロハビット・アラウズ)

       :シンキングセルの能力を禁止する。禁止日数は最大で一年。


 №446 メイリィ・スウ 蛾と蝶を持つ女性体。

  ショートカットの黄色の髪の活発な少女。

   能力名:???


 №998 ヨーティ・ヒュリケ 鶴の因子を持つ女性体

  金色のロングストレートに優しそうな眉、意志を宿した瞳、薄紅の柔らかそうな唇、170くらいの背丈に爆乳を持つ。

  エンドのプロトタイプとして作られたためか容姿はそっくりになっている。

   能力名:光線操作


 №999 オメガ・エンド 人間の因子を持つ女性体

  金色のロングストレートに優しそうな眉、意志を宿した瞳、薄紅の柔らかそうな唇、小柄な体躯に胸は動きやすさを追求しこじんまりとしている。

   能力名:コピー&ペースト

     我は汝が力を複製する(コピー)

       :シンキングセルの能力または身体の状態をコピーすることができる。

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