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SIDEエンド:最初の目標

 平坦に続く道を歩きながら、エンドは手に持つ書類に目を通していた。

 まず、最初に目に入ったのはエンドの生成理由。

 レイルの言っていた通り、エンドの力で他のシンキング・セル……主に唯一の男性体から男性という能力を奪うこと。


 エンドがその力を奪えばお父様の理想はすぐにでも叶うらしかった。

 なぜならば、エンドに付加された特殊能力はコピー&ペースト。

 シンキング・セルに触れる事で相手の能力を手に入れ、さらにそれを相手に分け与えることすらできる能力。


 どの能力も奪っていない今の状態では最弱ではあるが、コピーさえしてしまえば最強になれる、まさに全智全能へ至るための能力である。

 エンドとしても自身の能力がこれであってくれたことは父親であるレイルに感謝している。


 男性体は№444のフオウ・ワウン。

 書類に書かれていた情報では№445キリス・ラーニリアと共に生まれたらしい。

 まぁその辺りはどうでも良いので飛ばし読み。


 さて、彼がレイルに失敗作扱いされたきっかけ。

 それが初めて掛け合わせをさせようとした先輩シンキングセルによる奴隷扱いにも似たイジメ。

 これによる重度の女性恐怖症。いや、それはもはや女性拒絶症といってもいいかもしれない。そのくらい女性体にとっては最悪の症状をこじらせてしまった。

 半年くらい前までは双子の妹ですら話すことも出来なかったらしい。


 これにより彼は完全に出来損ないに成り下がった。

 お父様は彼を立ち直らせることを諦め、新たな男性体を作る決意を固めたらしい。

 しかし、お父様の思惑は実現せず、997体目を造った段階で踏ん切りをつけ、今度は現存する男性体から男性という能力を別のシンキングセルに移すことを考えた。


 そうして造られたエンドのプロトタイプ。№998のヨーティ・ヒュリケ。

 彼女は鶴という素体をベースにしたシンキングセルだった。

 そして、レイルが試した実験。

 それがレイルの思惑通りの能力を付加するというもの。


 今まで培ったシンキング・セル創造技術を駆使しレイルはヨーティを製造した。

 レイルは光を操れるようにと付加させて、成功。

 確信を得たレイルはエンドを造る決心を固めたのだ。


 ちなみにエンドの素体は人間だそうだ。

 レイルとエリアンの遺伝子の掛け合わせ。

 本当の子供のようなものらしかったが、エンドとしてはすでにどうでもいい事実。神になることに支障など全くありはしない。


 ふぅと、エンドは息をついて顔を上げる。

 読み物は結構目にくる。

 少し目を休めて、また落ち着いたら次のページを見よう。とエンドは遠くを見つめる。


 目指す建物も既に目で見える範囲。

 焦ることはないのだ。彼女はまだ生まれたばかり。

 一歩づつ。そう、一歩づつ確実に足場を固めて行けばいい。


 エンドの寿命はまだまだある。

 寿命……そういえば、お兄様はどれくらいの寿命があるのだろう? ふとエンドはそんなことを思ったが、男という能力を奪うだけの存在なのだから相手の寿命など気にする必要が無いと気付きすぐに忘れることにした。


 結局、レイルの思惑通りとはいかないまでも子を産めるくらいまでの成功体になったのはエンドを含めたったの46体。

 内、現存するシンキング・セルは45体。


 初期の段階だったため、寿命に関するDNAをいじっていなかった蜉蝣の因子を持つヲークス・ヲルディニアは、当に蜉蝣の一生。

 たった7日で死を迎えた。


 次に造られたシンキング・セル№002はせっかくの成功体にもかかわらず、予定していた素体とは違った素体になったために破棄。

 生成途中に蠅が紛れ込んで蠅女が出来てしまったらしい。


 レイルは蠅を後世に残す気は全くないと即座に破棄したとか。

 だから名前すら付けられなかったようだ。

 彼女はこの46体のシンキング・セルには含まれていない。


 №003から006までの一応、成功したシンキング・セルにも名前は付いていない。

 TCシンキング・セル何々という識別番号は付けられているものの名前をつける前に実験中に死んだらしい。

 その実験が人間や現存動物との交配実験だったらしいが、折角成功したというのに毒物混入で死亡と言うのはやるせない。エンドとしても同情は禁じえなかった。


 で、いくつもの失敗を重ね、結果、成功と呼べる段階に到達したのが45体。

 と最初のヲルディニアを加えた46体。

 あ~んまでの46音を同じ言葉から始まることのないよう振り分けて名前と苗字を与え、【チャクラポット】で成長が完全に安定し、最終的に世界に馴染めるように訓練して、男性体が出来上がるまで気ままに暮らさせた。


 名前と苗字って言うのは、例えばエンドは、オメガ・エンド。

 名前であるオメガの一番最初、オから始まる名前を持つシンキングセルはエンドしかいない。

 苗字も同じ。エから始まる苗字はエンドしかいない。


 そうやって46体のシンキングセルに46の異なる名前と苗字を付け、フオウ・ワウンを越える男性体の成功体を待ち望んだ。

 ちなみに、その他の№の成りかけシンキングセルは、さっきも言ったTCシンキングセルに素体に使われた動植物の名前をつけている。


 例えば№002はTCF‐01。Tはシンキング、Cはセルの略で、Fはフライ。つまり蠅。

 最後の01は同じ略式のアルファベットがあるので間違えないようにだとか。

 例えば狐もフォックスでFだから、下の01、02で区別するという構造らしい。


 普通にFRYとかで区別した方がいいんじゃないだろうか? まぁ、私にはどうでもいいことなのだけど……とエンドは思いながら足を止めた。


「さて、それでは……」


 手にした資料から目を離し、エンドは目の前の建物を見た。

 シンキングセル養成所【チャクラポット】。

 資料によればまだ、ここにいるらしい。


 エンドの……プロトタイプ、ヨーティ・ヒュリケ。

 研修期間は約半年。そろそろ新しく世界に羽ばたこうというところ。

 待っていてお姉さま。今から私が……奪いに行くわ、あなたの全てを。

登場人物


 №444 フオウ・ワウン 龍の因子を持つ男性体。

   能力名:空気操作


 №445 キリス・ラーニリア 龍の因子を持つ女性体。

  肩にすらかかってない自称ストレートヘアに左右から青いリボンを結び付けたいつもの髪型の少女。

   能力名:禁止

     我は汝の行為を禁ず(プロハビット・アラウズ)

       :シンキングセルの能力を禁止する。禁止日数は最大で一年。


 №998 ヨーティ・ヒュリケ 鶴の因子を持つ女性体

   能力名:光線操作


 №999 オメガ・エンド 人間の因子を持つ女性体

   能力名:コピー&ペースト

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