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SIDEメイリィ:無謀な戦い

 メイリィは後ろから遠ざかっていくエンドを一瞥し、目の前で起き上がるイルルに視線を戻した。

 すでに全身を炎に包み完全再生を行っている。

 目も復活したエンドは、メイリィを憎々しげに睨みつけた。


「姉の恋路の邪魔など最悪ですわよ」


「それはこっちの台詞だよい~ちゃんっ!! 妹の恋路の邪魔はさせないよ!」


 拳を握りイルルに向ける。

 放電を始めたメイリィの拳に、今まで受けた電撃が蘇ったのか一瞬仰け反るイルル。

 すぐに気を取り直して怒り狂った表情になる。


「これから先はこのメイリィ・スゥが通さないんだから!」


「ふっ、所詮逃げるといったって人の足ではたかが知れてますわ。いいでしょう……先に貴女を殺してから悠々と行かせていただきますわ!」


 イルルの両手が炎に塗れる。


「さぁ……舞いましょう……灼熱の舞踊をっ!」


 駆けだすイルル。メイリィは拳を引くように腰元に引き寄せ呼吸を整える。


「駆ける稲妻……迸る雷光! 雷帝の鉄槌!!(ライトニング・ナックル)」


 メイリィの拳がこれでもかという程に輝いた。

 放電を始めた拳が黄金色というよりは黄色に近い色に点滅しながら輝く。

 一瞬しか見えないはずの雷光が拳に集まって存在する。その恐怖に、イルルは知らず怯えを感じていた。


「焼け恋がれし舞踊!(ブレイズ・ロンド)」


 雷を纏いし拳と、炎を纏いし拳の激突。

 触れれば双方焼け爛れ、片方は電撃のショックに身悶える。

 しかし……


 構わず突きだされるもう一つの炎の腕。

 焼け爛れたままの片手で受け止め、今度はメイリィの方が呻いた。

 消える事無き命のザ・ニューライフの特技を持つイルルには、どれほどの電撃を受けようと自身の覚悟さえあれば損傷を気にせず相手に攻撃が出来るのだ。

 再生能力の有無が勝敗を分けたともいえた。


「残念ね。貴女の力は確かに危険……でも、この私の再生能力にはなんら脅威に成りえませんわ!」


 確かにそうだとメイリィは納得していた。

 でも、それでも今引くことなどできはしない。

 残った無傷の拳を握り込む。


「ライトニング……ナッコォォォッ!」


「まだやりますか……」


 呆れた口調で拳を受け止めるイルル。電撃にわずかに眉を曇らせた。

 いくら再生するといっても彼女の体内に侵入して来る電撃の威力を殺せるわけではない。

 痛みはあるのだ。死ぬほどの痛みを絶えず受け取ってしまう。

 それでも彼女は死ぬ事はない。自動再生により意識諸共復活してしまう。


「もう、何度やっても意味はありませんわ、それに、電撃の威力が初めよりありませんわよ? 電力切れなのかしら。やはり電力を周りから奪わなければ力は発揮できないとか?」


「このっ」


 蹴りを放って突き飛ばす。

 焼けた両手を振って軽く冷ましつつ、イルルの行動に注意する。

 その瞳にある闘志は今だ揺るぐことはなかった。


「仕方ありませんわね……ならば……」


 両手に巻きついていた炎が膨れ上がる。

 イルルの肘へ、肩へ、全身へ……炎は勢力を拡大させて、イルル自身が炎に包まれた。

 それはつまり、イルルに攻撃を当てるには絶対に炎に巻き込まれるということを意味している。


「う……ウソでしょ?」


「さぁ。抱擁を交わしましょうか? 文字通り身も焼けるような熱い抱擁を!」


 イルルが駆ける。

 全身火達磨、さらに再生能力までも兼ね備えたバケモノに、拳一つで一体何ができようか……

 メイリィは迷わず羽を広げて飛び上がる。

 一瞬遅れてイルルが空中を抱きしめた。


「おしいッ、空に逃げるなど卑怯ですわよ!」


 地団駄踏んで悔しがるイルルに、さすがに冷や汗を流しながらメイリィは叫ぶ。


「うっさぁいっ! そんな見るからに火傷しそうな奴に抱きつかれるよりはマシだよ!」


「まぁ、いいですわ。空なら私も空へ飛べばいいだけのこと……」


 変態……イルルが見る見るうちにその姿を変えていく。

 そうして現れでたのは……巨大な炎の鳥。

 大きさからして勝敗など分かりきっていた。


 そんな巨大な鳳凰が煌びやかな尾っぽを靡かせ空へと舞い上がる。

 圧倒的な存在感。頭上に生えた触覚の様なトサカが風に揺れる。

 一声鳴けば周囲の空気をびりびりと振動させ、メイリィへの絶望をさらに強烈に意識させた。


「さぁ……どうしますの?」


 余裕満面のフェニックスがいななく。

 メイリィはグッと握り締める拳が震えているのが分かった……

 電撃も既に尽きかけている。

 イルルの言う通り、彼女の持つ電撃は周囲から手に入れなければ徐々に無くなり攻撃に使えなくなる。

 イルルのように体内生成できるものではないのだ。


「でも、ま……やるしかないよね?」


 電撃を拳に溜めて……メイリィは巨大なバケモノと対峙した。


「くらえい~ちゃんっ!」


 覚悟を決め、メイリィは拳を握り込む。

 多分、最後の一撃だ。

 そう確信して、拙く集まった電撃を握り込む。


 繰り出す拳。

 開け放たれる凶悪な嘴。

 メイリィは思わず唇を噛む。

 悔しいが、生存の目は殆どなかった。


「ごめんね、ふーちゃん……」


 吐きだされる炎の吐息。

 眼前に迫り来る灼熱の息へと、一匹の小さな蝶が突っ込んでいった。

登場人物


 №001 ヲークス・ヲルディニア 蜉蝣の因子を持つ女性体。

   能力名:??? 死亡


 №274、 ケリアル・ツェマド 梟の因子を持つ女性体。

  茶色の髪の毛と鳳眼ともいえる鋭い瞳。ヨーティ・ヒュリケを思わせるほどの妖艶なスリーサイズだった気がする

   能力名:風流操作

     真空の鉤爪エア・スラッシュ

       :真空波によりカマイタチ現象を引き起こす特技。


 №275 ミディ・ネリィ 燕の因子を持つ女性体。

  背丈は百四十前後で肩までの切り揃えた蒼い髪にカチューシャを填めた女の子

   能力名:防御膜生成

     遍く全てを防ぎし壁よ(トランス・ルゥセントウォール)

       ミディのみ出入り自由な隔壁膜を生成する。内部の者はあらゆる攻撃から身を守ることが出来るが、効果が切れるまで脱出も不可。

       地面の中も合わせた球体状のため、土を掘って脱出という方法も使えない。


 №441 イルル・キリク 鳳凰の因子を持つ女性体。

  麦藁帽子を目深に被った白いワンピースの少女。炎の様に赤いストレートヘア。

   能力名:再生の焔

     優雅なる火炎のエクセレンス・フレア

       :掌から発生する炎の玉。

     焼け恋がれし舞踊ブレイズ・ロンド

       :両腕に炎を纏う事で火炎舞踏を踊っている様な接近戦が可能。

     消える事無き命のザ・ニューライフ

       :再生の炎に包まれることで自身を完全に復活させる能力。自動発動。


 №444 フオウ・ワウン 龍の因子を持つ男性体。

   能力名:空気操作

     失われし真空ヴァニッシュ・エア

       :特定空間の空気を押し出し真空を作りだす。

     弾力ある空気バウンド・エア

       :空気の密度を固める事で足場を作る。


 №445 キリス・ラーニリア 龍の因子を持つ女性体。

  肩にすらかかってない自称ストレートヘアに左右から青いリボンを結び付けたいつもの髪型の少女。

   能力名:禁止

     我は汝の行為を禁ず(プロハビット・アラウズ)

       :シンキングセルの能力を禁止する。禁止日数は最大で一年。


 №446 メイリィ・スウ 蛾と蝶を持つ女性体。

  ショートカットの黄色の髪の活発な少女。

   能力名:電撃

     雷撃を纏いしライトニング・ナッコ

       :簡易版雷帝の鉄槌。

     雷帝の鉄槌ライトニング・ナックル

       :電気を拳に纏わり付かせ殴りつける特技。拳を前に突き出せば電撃が迸る。


 №482、ヤオ・ソーティア ???の因子を持つ女性体。

  ポニーテールの女。

  黒のタンクトップと太股の部分で乱暴にちぎり取ったようなジーンズを着ている。

   能力名:???

     運命の三択

      :能力とは少し違うが性格上三択として相手の未来を告げる。

       告げる事による運命改変はなく、ただ相手への注意喚起にすぎないが、抽象的すぎて相手に伝わらない事が多い。


 №998 ヨーティ・ヒュリケ 鶴の因子を持つ女性体

  金色のロングストレートに優しそうな眉、意志を宿した瞳、薄紅の柔らかそうな唇、170くらいの背丈に爆乳を持つ。

  エンドのプロトタイプとして作られたためか容姿はそっくりになっている。

   能力名:光線操作

     駆け抜ける閃光フラッシング・レーザー

       :光を集め照射するレーザービームを放つ。


 №999 オメガ・エンド 人間の因子を持つ女性体

  金色のロングストレートに優しそうな眉、意志を宿した瞳、薄紅の柔らかそうな唇、小柄な体躯に胸は動きやすさを追求しこじんまりとしている。

   能力名:コピー&ペースト

     我は汝が力を複製する(コピー)

       :シンキングセルの能力または身体の状態をコピーすることができる。

    コピー済み能力

     駆け抜ける閃光フラッシング・レーザー

       :光を集め照射するレーザービームを放つ。

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