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SIDEフオウ:日常1

『昨夜未明、シンキング・セル生成施設【ノアの箱舟】で爆発事故があり、職員、警備兵、合わせて103人もの……』


「ふぁ……」


 この日、何度目かになる欠伸を盛大にやってのけ、ダイニングルームの椅子に腰掛けた少年は、テーブルに突っ伏すようにしてテレビに目を向けた。

 【ノアの箱舟】といえば彼を生んだ父、レイル・ディック居る場所だ。

 朝っぱらから嫌なニュースだね全く。と少年は一人ごちる。


 レイル・ディックは彼の生みの親だ。とはいえ正確に彼が生まれたのは培養器の中だ。

 なにせ彼は今話題のシンキング・セルの一人。

 №444フオウ・ワウンと呼ばれる人に似た生物なのだから。


 彼はただ、女性体のシンキング・セルたちの交配種として生成された存在であり、子を成す事だけを目的としているのだ。

 まぁ、生まれたときは喜ばれはしたものの、実際にはもう興味もなくされドラ息子と呼ばれて疎まれているのが現状。


 一応、生活面でのお金とかは用意してくれてはいるものの、ここ数年、顔もろくに合わしていない。

 フオウの顔を見ると居なくなった知り合いを思い出しちまうらしいからと、レイルに嫌われているのだ。


 別に彼が悪い訳ではなく、レイルが悪い訳でもない。

 ただ、フオウが生成された時、すぐ横で時空石という鉱物と共に消えた存在がいたそうだ。

 その犠牲により生まれたのだとフオウは幼少より教えられてきた。

 幼少といっても身体は今と変わらない。

 そもそもシンキング・セルは体つきを指定した後でその段階まで成長させてから外に出される。


 確かにフオウが生成されてから数年経過はしているものの、実際彼は生まれてから10年も経ってない。

 人間なら背丈も120前後だろうが、彼の背丈は既に160を越えていた。

 りっぱに17、8の身体付きで生まれた時から生殖能力も存在している。


 ことんっと、大口開けてテレビに見入っていたフオウの目の前にお茶の入った湯呑が置かれる。

 湯呑みからは湯気が立ち上っていない。

 いつものことなのだが、フオウは思わず相手に視線を向けた。


「お兄ちゃん、朝はハムエッグでいい?」


 顔を向ければ、そこにいるのは小柄な少女。

 フオウの正真正銘双子の妹、キリス・ラーニリアである。

 学生服にエプロンを着ている。

 手にはいつものごとく握られたお玉……ハムエッグでなぜソレがいる?


 肩にすらかかってない自称ストレートヘアに左右から青いリボンを結び付けたいつもの髪型で温和な笑顔を浮かべる自慢の妹だ。

 かなり規則に煩いためうっとおしくはあるけれど、掃除洗濯家事勉強、卒なくこなしてくれるので、一家に一人は欲しい逸材だった。


「お~、適当にしてくれぃ」


 双子の妹というのは簡単だ。フオウが生成された時、雷鳴が研究施設に襲い掛かったそうだ。

 その雷鳴と、消えたレイルの知り合いの持つ時空石が何かの化学反応を起こしたらしく、目の前に会った培養器にあった一つの細胞が突然変異を起こして二つに分かれた。

 それで生まれたのが、フオウ、そしてキリスである。


 初めて生まれた男性体。レイルは子供の様に喜びながら、少し離れた場所に居た知り合いに視線を向けた。

 この喜びを分かち合おう。そう思ってのことだった。

 でも、そこで彼は目の当たりにする。時空石という鉱物の特異能力が発動したことを。


 それが……時空移動。

 知り合いは、その妹、そしてもう一人の研究者共々この世界から別世界へと飛ばされたそうだ。

 どの世界へ行ってしまったのかすら不明。

 フオウが出来たため終了しようかと考えていたシンキング・セル計画がすぐに再開し、今度は時を越える能力を求めレイルは数々のシンキング・セルを生みだして行った。


 つまり、キリスはフオウから見れば双子の妹というリア充的存在なのである。

 名前が違うのは本当の子供ではなくレイルたちが創りだした存在だからだ。

 数々の失敗体がいる中、いくつか成功した個体がいたので、その者たちに名前を付けて行ったらしいのだが、途中からあいうえお順に名前と名字を付けて行こう。とエリアンと相談して決めたそうだ。


 よってエンドを含め、46体のシンキング・セルがそれぞれあいうえおの名前を付けられた。今、世界に放たれているのは44体、エンドは【ノアの箱舟】で生成中、そしてもう一人は、シンキングセル養成所【チャクラポット】にて最終調整の段階でこれから世界に羽ばたこうとしている個体がいた。


 さて、このシンキング・セル。ただ世界に多種多様な絶滅動物を作りだす為だけの存在ではない。

 その細胞内に件の時空石を取り込み作られた彼らは、特異な能力を持っていた。

 その一つが、変態能力である。

 変質者の意味じゃない。

 姿を変えるという意味の能力である。


 人型、素体となった動植物。そしてその両方の特性を持つ半人半獣状態。

 この三種の形態を取ることが出来るようになった。

 例えば、双子であるフオウとキリス。彼らの素体はドラゴン。つまり龍である。


 どこから手に入れてきた遺伝子なのか、それとも何体かの動物の遺伝子を混ぜて作り出された遺伝子なのかは分からない。

 とにかくキリスは人の形と龍の形。それから半人半龍の言うなればドラゴニュートってのになれる。

登場人物


 №444 フオウ・ワウン 龍の因子を持つ男性体。

   能力名:???


 №445 キリス・ラーニリア 龍の因子を持つ女性体。

  肩にすらかかってない自称ストレートヘアに左右から青いリボンを結び付けたいつもの髪型の少女。

   能力名:???


 №999 オメガ・エンド 人間の因子を持つ女性体

   能力名:???&???

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