SIDEフオウ:拉致 / SIDEエンド:追跡
「うっわ、ホントに向かってきてる! 追いつかれるぞ!」
フオウは背後から迫るイルルを見ながらメイリィに報告する。
「そんなの分かりきったことじゃない、私のは舞うように飛ぶしか出来ないからスピードでないんだよ、相手が私に合わせてくれてるの! 悔しいけどッ!」
そろそろ郊外にでたところで、少し遠くに【チャクラポッド】が見える。
「この辺りなら良いでしょ? 落とすよふ~ちゃん」
「落とす……って嘘だろ? おい、 マジか!?」
必死に掴まれた手を放さまいと力を入れるフオウだったが、主導権はメイリィにあった。
ブンと振られてゴム手袋ごとすっぽ抜けるようにメイリィに飛ばされる。
「ぬわあああああああああ!?」
命綱もパラシュートもない空中からの自由落下。
下は砂地とはいえ固い地面、 助かるはずも……
「あ、つい自分の能力忘れてた……」
意識集中……はしてる暇ないから即席で空間固定。
とりあえず目線の真下で……四角い空気の層をイメージする。
「弾力ある空気!」
別に言葉をかける意味はなかったがついついいつもの調子で即席で考え技名を叫んでしまう。
我ながらかなり焦ってたんだな……とついつい笑いたくなったフオウだった。
安心するのも束の間、徐々に地面が近づいて……
(って……あら!? 落下地点ずれてる!? 即席だったから目測誤った!?)
やばい、ぶつかる。地面が目の前まで迫ってきてもうダメだ……と思った瞬間、 赤く巨大な何かがフオウと地面の間に割り入ってきた。
風圧でそいつの上に巻き上げられ背中まで転がる。
とっさに手にしていたものを全て放り投げ羽を数枚握り、そいつに掴まった。
「いったい何が……」
落ち着いて状況を確認。
今さっきまで追われていたはずのイルルの背中に乗せられていることに気付いた。
「え……どうなってんの?」
「どうもなにもフオウが死んでは意味が無いですわ」
風音に遮られて聞こえづらいがイルルの声が聞こえた。
(そういえば、彼女の目的は俺だったんだっけ……)
シンキング・セルたちの行動原理はいつだってフオウの確保。自分の子を産む為に子種を回収することである。
獣化しているおかげでなんとか触っていられるものの、一命を取り留めたことにひとまず安心するフオウだった。
……あ。メイリィの服……放り捨てちまった……
と思わず青くなる。実際はそれより危険な状況なのだが、おそらく気が動転していたのだろう。
後々の電撃パンチを想像して恐怖するフオウだった。
「まぁ 目的であるフオウを回収できたことですし、撤収いたしますわ」
「……へ?」
ぐるりと旋回を始めるイルル。対抗しようとしていたメイリィを無視して来た道を戻り始める。
「ああ!? ちょっと! ふ~ちゃんどこに連れてく気~ッ!?」
慌ててメイリィが追ってくるも、鳥と蝶では速さが違う。
当然イルルが加減してわざわざ追いつかせるわけもなく、即座に豆粒くらいに遠ざかってしまった。
……何? 俺もしかしてまた拉致られてる?
「さあ 私たちの愛の巣にゴーイングですわぁぁぁッ!!」
「待て! だから待てェ!! 俺は女性拒絶症なんだぁぁぁぁぁ……」
悲鳴は尾を引くように風に流れて消えていった。
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ふと、何か絶叫のようなものが木霊すのが微かに聞こえた。
エンドは慌てて走るのを止め上を見上げる。
今日も天気は快晴だ。雲が全く見当たらない青だけが広がるその光景の中で、太陽の光だけがさんさんと輝いている。
そして綺麗な赤い鳥が大空を滑空して……
殆ど豆粒のようなその鳥から微かな悲鳴は鳴り響いていた。
「もしかして……あれ? お兄様はよく鳥に拉致されますわね……鳥に好かれているのかしら?」
駆ける方向を即座に変えて鳥の後を追うように走る。
今の自分に何が出来るかは考えにも及ばなかった。
ただ……エンドの中にあったのは、お兄様を助けたい。ただそれだけ。
夢中に走る。息が切れ、心臓が激しく音を立てる。
これが疲れるということなのだろうか? それでも足だけはしっかりと動いてくれている。
鳥はさすがに速度が速く少しづつ視界から小さくなっていく。
それでも追いつけないとは思わなかった。
エンドは自然足が前に出るのを感じる。
フオウが助けを待っている。それを思うだけで、自分が彼を助けだす。そう決意するだけで、足は自然と動いてくれた。
懸命に走る。心臓が張り裂けそうなくらいバクバクと音を立てているのが自分で分かるのに……息が続かなくなるくらい荒くなっているのも分かるのに……
自分の体はただ目の前の鳥に追いつくように足だけを前へと押し出していた。
徐々に鳥の高度が下がりだす。
やがて郊外のはるか遠く、一つの豪勢な館へと消えていった。
「アレが……イルルお姉様の隠れ家。いえ、むしろあれは屋敷ですね」
少し遅れるだけでフオウの貞操はそれだけ危機に陥る。
エンドは前に出る足をさらに早める。
「待ってなさいイルルお姉様。今度こそ、引導を渡して差し上げますから」
登場人物
№001 ヲークス・ヲルディニア 蜉蝣の因子を持つ女性体。
能力名:??? 死亡
№274、 ケリアル・ツェマド 梟の因子を持つ女性体。
茶色の髪の毛と鳳眼ともいえる鋭い瞳。ヨーティ・ヒュリケを思わせるほどの妖艶なスリーサイズだった気がする
能力名:風流操作
真空の鉤爪
:真空波によりカマイタチ現象を引き起こす特技。
№275 ミディ・ネリィ 燕の因子を持つ女性体。
背丈は百四十前後で肩までの切り揃えた蒼い髪にカチューシャを填めた女の子
能力名:防御膜生成
遍く全てを防ぎし壁よ(トランス・ルゥセントウォール)
ミディのみ出入り自由な隔壁膜を生成する。内部の者はあらゆる攻撃から身を守ることが出来るが、効果が切れるまで脱出も不可。
地面の中も合わせた球体状のため、土を掘って脱出という方法も使えない。
№441 イルル・キリク 鳳凰の因子を持つ女性体。
麦藁帽子を目深に被った白いワンピースの少女。炎の様に赤いストレートヘア。
能力名:再生の焔
優雅なる火炎の灯
:掌から発生する炎の玉。
消える事無き命の焔
:再生の炎に包まれることで自身を完全に復活させる能力。自動発動。
№444 フオウ・ワウン 龍の因子を持つ男性体。
能力名:空気操作
失われし真空
:特定空間の空気を押し出し真空を作りだす。
弾力ある空気
:空気の密度を固める事で足場を作る。
№445 キリス・ラーニリア 龍の因子を持つ女性体。
肩にすらかかってない自称ストレートヘアに左右から青いリボンを結び付けたいつもの髪型の少女。
能力名:禁止
我は汝の行為を禁ず(プロハビット・アラウズ)
:シンキングセルの能力を禁止する。禁止日数は最大で一年。
№446 メイリィ・スウ 蛾と蝶を持つ女性体。
ショートカットの黄色の髪の活発な少女。
能力名:電撃
雷撃を纏いし拳
№482、ヤオ・ソーティア ???の因子を持つ女性体。
ポニーテールの女。
黒のタンクトップと太股の部分で乱暴にちぎり取ったようなジーンズを着ている。
能力名:???
運命の三択
:能力とは少し違うが性格上三択として相手の未来を告げる。
告げる事による運命改変はなく、ただ相手への注意喚起にすぎないが、抽象的すぎて相手に伝わらない事が多い。
№998 ヨーティ・ヒュリケ 鶴の因子を持つ女性体
金色のロングストレートに優しそうな眉、意志を宿した瞳、薄紅の柔らかそうな唇、170くらいの背丈に爆乳を持つ。
エンドのプロトタイプとして作られたためか容姿はそっくりになっている。
能力名:光線操作
駆け抜ける閃光
:光を集め照射するレーザービームを放つ。
№999 オメガ・エンド 人間の因子を持つ女性体
金色のロングストレートに優しそうな眉、意志を宿した瞳、薄紅の柔らかそうな唇、小柄な体躯に胸は動きやすさを追求しこじんまりとしている。
能力名:コピー&ペースト
我は汝が力を複製する(コピー)
:シンキングセルの能力または身体の状態をコピーすることができる。
コピー済み能力
駆け抜ける閃光
:光を集め照射するレーザービームを放つ。




