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SIDEエンド:来訪者2人目 / SIDEミディ:宣託の時

 チャイムが鳴った。

 先ほど出て行ったヤオと入れ替わるようにタイミングよくエンドの思考を邪魔してくれる。

 苛ついたままに玄関先まででて、先ほど不用意に開けて失敗したのを思い出し、覗き窓から外を見てみる。


 青い髪とカチューシャが見えた。

 ミディ……ネリィ?

 なぜこいつが真正面からここに? こいつは馬鹿か? ああ、お馬鹿なミディとかケリアル姉様に言われていたな。とエンドは苦笑する。


「何か用?」


 ドアは開けずに外に聞こえるように声をだす。


「あ……あの……その……」


 力いっぱい声を出し、でも言いだせないのか結局押し黙る。

 不安げな顔で、意を決し、口に出そうとしながらも、最後の一押しが出てこない。

 もどかしさが伝わってくるエンドだが、なんとなく言いたい事を察したエンドは機先を制する事にした。


「開けませんよお姉様」


「……え?」


「当然でしょう? 貴女はお兄様の敵ですから」


「そ、そんな……」


 なんだか泣きそうな声で扉を叩く。

 もちろんだからといって入れてやる義理はない。


「どしたのエンドちゃん?」


「どうしたもなにもありません! ミディお姉様が……って、ヤオお姉様ッ!?」


 後ろからかかった声に慌てて振り向く。

 丁度トイレのドアを開き、手をハンカチで拭きながら妙にすっきりした顔でヤオが現れた。

 帰ったとばかり思っていたエンドにとっては寝耳に水で驚きを露わにする。


「なんで? 帰ったんじゃ……」


「いや、ドア開けた音聞こえてないっしょ? トイレ借りてたのよ」


「ッチ。なんでまだいるのよ……」


「いいじゃない。可哀相だから入れてあげれば。彼女ケリアル姉さんに捨てられたみたいだしさ」


「信用できません。お姉様もでて行ってくださいません? 貴女は今、私にとって一番の邪魔者なのよ」


「あ~、はいはい。邪魔者は大人しく退散するわよ。あ、でもねエンド、今の貴女の邪魔者は私じゃないわ」


「はぁ?」


「イルル姉さん、兄さんを襲ってるわよ。現在進行形で……ね。ま、知ったところで意味は……あら?」


 最後まで聞く必要はなかった。

 ドアを思いっきり開き、ミディが弾き飛ばされるのも気にもせずにエンドは家を飛びだす。

 防犯上の居残り任務など頭の中から抜け落ちていた。


「次から次へとウザいったらないわ。私の見てない場所でお兄様を襲うなんてっ!

 待ってなさいよイルルお姉様! 今度こそ息の根止めてやるわ!」


 自分が能力を封印されている等という事すら頭から抜け落ちていて、エンドはただフオウの無事を願いひた走るのだった。


 ------------------------


「あららぁ、戸締りくらいしなさいよ。ど~すんのこの家……まぁ、留守番するけどさ」


 ヤオは開け放たれた扉を見ながら小さく呟いた。


「ふふ。妬けるわねぇー。殺す殺すといいながら身を案じて飛びだしちゃうなんて」


「あ、あの、フオウさんは大丈夫なんですか?」


「学校よ、おそらくその近辺を逃げ回ってるかな? 今は……まだね」


 ヤオはミディの頭をポンと叩いて背中を押して家に連れ込む。


「まぁ、留守番役がいなくなっちゃったから一緒に臨時留守番しときましょ姉さん」


「え? え?」


「あ、それとも姉さんも一緒に行く? 場所教えるけど」


「え? あの……あなたは……?」


 居間に通されたミディは目の前に置かれた湯飲みにお茶が注がれるのを見ながら呟く。


「ヤオ・ソーティア。兄さんの生みの親を連れ戻すために作られた……ただの出来損ないよ」


「出来……はぁ……?」


「ねぇ……一つ聞いていい?」


 肘を突いて両手で顔を支えながらヤオがお茶をすするミディに聞いた。


「え? なんですか?」


「貴女は……最も親しきものが知り合いに取られたとき、知り合いを許すことは出来ますか?」


 今までののんきな雰囲気を一変させ、ヤオは真剣な表情で意味不明な質問をしてきた。

 質問の意味すら分からずミディは戸惑ってしまう。


「へ? え? えと……」


 答えに窮するミディはそれから十分以上悩む。

 しかし、質問の意味すら理解できない彼女の頭では、答えなど出るはずもなかった。

 予想通りだなとヤオは溜息を吐き、少し優しげに言葉をつづけた。


「貴女には……三つの未来があるわ」


 戸惑いを浮かべるミディを、ヤオは真剣な瞳で射抜く。

 ミディは考えるのを止め、思わずこくこくと頷きながら話を聞く。


「一つは滅び……残るは無」


「え? えぇっ!?」


「一つは共存……残るは悔やみ」


 戸惑うミディはいきなりの言葉にさらに困惑を深める。


「一つは獣……残るは――――狂気」


「あの……何のこと……ですか?」


「近い……未来のアドバイスよ。 私は……時の管理者だから」


 ヤオは目を細め、悲しそうな瞳を一瞬だけ覗かせた。

 意味が分かりかねず、ミディは小首を傾げる。


「さぁ、それじゃ姉さんにフオウ兄さんと仲良くなれる方法を伝授しちゃいますか♪ ふっふっふっふっふ……」


 次の瞬間には笑顔満面にミディの手を取り気味の悪い笑いを浮かべていた。

 ミディは彼女のテンションに付いて行けずに終始戸惑ってばかりだった。

 結論的に、ミディはヤオを苦手な部類にカテゴライズするが、それは本人にしか分からない事だった。

登場人物


 №001 ヲークス・ヲルディニア 蜉蝣の因子を持つ女性体。

   能力名:??? 死亡


 №274、 ケリアル・ツェマド 梟の因子を持つ女性体。

  茶色の髪の毛と鳳眼ともいえる鋭い瞳。ヨーティ・ヒュリケを思わせるほどの妖艶なスリーサイズだった気がする

   能力名:風流操作

     真空の鉤爪エア・スラッシュ

       :真空波によりカマイタチ現象を引き起こす特技。



 №275 ミディ・ネリィ 燕の因子を持つ女性体。

  背丈は百四十前後で肩までの切り揃えた蒼い髪にカチューシャを填めた女の子

   能力名:防御膜生成

     遍く全てを防ぎし壁よ(トランス・ルゥセントウォール)

       ミディのみ出入り自由な隔壁膜を生成する。内部の者はあらゆる攻撃から身を守ることが出来るが、効果が切れるまで脱出も不可。

       地面の中も合わせた球体状のため、土を掘って脱出という方法も使えない。


 №441 イルル・キリク 鳳凰の因子を持つ女性体。

  麦藁帽子を目深に被った白いワンピースの少女。炎の様に赤いストレートヘア。

   能力名:再生の焔

     優雅なる火炎のエクセレンス・フレア

       :掌から発生する炎の玉。

     消える事無き命のザ・ニューライフ

       :再生の炎に包まれることで自身を完全に復活させる能力。自動発動。


 №444 フオウ・ワウン 龍の因子を持つ男性体。

   能力名:空気操作

     失われし真空ヴァニッシュ・エア

       :特定空間の空気を押し出し真空を作りだす。


 №445 キリス・ラーニリア 龍の因子を持つ女性体。

  肩にすらかかってない自称ストレートヘアに左右から青いリボンを結び付けたいつもの髪型の少女。

   能力名:禁止

     我は汝の行為を禁ず(プロハビット・アラウズ)

       :シンキングセルの能力を禁止する。禁止日数は最大で一年。


 №446 メイリィ・スウ 蛾と蝶を持つ女性体。

  ショートカットの黄色の髪の活発な少女。

   能力名:電撃

     雷撃を纏いしライトニング・ナッコ


 №482、ヤオ・ソーティア ???の因子を持つ女性体。

  ポニーテールの女。

  黒のタンクトップと太股の部分で乱暴にちぎり取ったようなジーンズを着ている。

   能力名:???

     運命の三択

      :能力とは少し違うが性格上三択として相手の未来を告げる。

       告げる事による運命改変はなく、ただ相手への注意喚起にすぎないが、抽象的すぎて相手に伝わらない事が多い。


 №998 ヨーティ・ヒュリケ 鶴の因子を持つ女性体

  金色のロングストレートに優しそうな眉、意志を宿した瞳、薄紅の柔らかそうな唇、170くらいの背丈に爆乳を持つ。

  エンドのプロトタイプとして作られたためか容姿はそっくりになっている。

   能力名:光線操作

     駆け抜ける閃光フラッシング・レーザー

       :光を集め照射するレーザービームを放つ。


 №999 オメガ・エンド 人間の因子を持つ女性体

  金色のロングストレートに優しそうな眉、意志を宿した瞳、薄紅の柔らかそうな唇、小柄な体躯に胸は動きやすさを追求しこじんまりとしている。

   能力名:コピー&ペースト

     我は汝が力を複製する(コピー)

       :シンキングセルの能力または身体の状態をコピーすることができる。

    コピー済み能力

     駆け抜ける閃光フラッシング・レーザー

       :光を集め照射するレーザービームを放つ。

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