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SIDEフオウ:発覚 / SIDEエンド:訪問者一人目

 教室に入ると、いつものように亮が自分の席で写真集を読んでいた。

 ケリアル姉さんの写真集だなあれは……と、表紙を見たフオウは溜息を吐く。

 昨日ケリアルに襲われかけたなんて言えば、彼は一体どういう反応をしてくるのだろうか?


「おはよう亮」


「ん? おお、生きてたか心の友よ」


「生きてたかとはまた凄い挨拶だな」


「そりゃ、親父さんがおっ死んじまったんだ。いろいろなとこから狙われるだろ? 昨日も休んでたし、今まで何事もなかったとかいったらこっちが驚き死んじまうぜ」


 まぁ確かに無事というわけには行かなかった。

 どっかの誰かさんには攫われたわけだし……

 その話題を言う気はなかったので別の話を挙げてみる。


「そうそう、お前の御執心だったヨーティ、家に来たよ」


「……え?」


 写真集に釘づけだった亮が驚いた顔を上げた。


「え? ってなんだよ……その顔はどういう意味だ?」


「ほんとにそいつヨーティちゃんか?」


「はぁ?」


「まだ正式報道されてないけどな……病院に入院中なんだよ……ヨーティちゃん」


 え?

 ……なんて言った? ヨーティが病院?

 何言ってんだ? ちゃんと家に来たぞ?

 フオウは友人の言葉が理解できずにしばらく呆然としてしまう。


「知ってんだろ? お前の親父さんが死んだ基地のこと」


「あ、ああ……」


「そこから次のシンキングセル……999体目だっけ? 逃げ出したらしくてな。チャクラポッドでも一騒動あったみたいだぜ。これ、証拠の写真」


 と、カバンから取り出された一枚の写真。

 人工呼吸器や生命維持装置を付けられたヨーティの姿が映っていた。

 わざわざ病室に忍び込んで激写したらしい。

 無謀な事をする。


「……なんで?」


 容姿が同じ。でも、家にいるヨーティは元気に留守番をしているはずだ。

 何が……どうなってる? とフオウはもう一度写真を見る。

 そこにいたヨーティはどうみても動けるようには見えない。

 いや、そもそも意識不明なので起きれるはずもない。


 芽生えた疑問はフオウの中に根を張り始め、どんどんと大きくなり始める。

何かの間違いだ。……間違いで……あって欲しい……

 そう願いながら、なにか確信めいた不安を抱え始めていた。


 ----------------------------


「で、何の用?」


 ふくれっ面のまま、エンドはテーブルに肘を付けて相手に睨みを効かせた。

 目の前のシンキング・セルはへらへらと笑みを浮かべながら同じようにテーブルに肘を付き、両手に顎を乗せている。


「それより先に、お客様に出すものがあるんじゃない?」


 ばっと立ち上がり、憤ったままに台所に、お茶を注いで彼女の前に乱暴に置いてやった。

 多少零れたが気にしない。

 それを見た彼女があらあら。としょうがない妹を見るような眼をしてきたのでエンドはさらに不機嫌になる。


「で、何をされにいらしたのでしょうか、ヤオ(・・)お姉様」


 笑顔のままヤオが笑う。


「別に、様子を見に来ただけよ」


 屈託の無い笑みを見せ、お茶を少し飲んだ。


「茶菓子は?」


「ありませんッ」


 椅子に座りながら大声で言った。


「ケチねぇ。まぁいっか」


「様子でしたらもう、見たのでしょう。さっさと帰ったらよろしいではないですかっ」


「いいじゃない。少しくらい話しましょうよ、エ・ン・ドちゃん」


「ちゃん付けして欲しくないわ。どうせ貴女はなんでもお見通しなのでしょう。 話すことなど無いわ」


「あらら、ずいぶんと嫌われたわね」


「当然でしょう、貴女のせいでヨーティを消し損ねたわ。そして貴女だけが私の正体を知っている」


「あら、心外だわ。私だって知らないことは沢山あるの。全知全能ではないのよ。それに……」


 笑みが一転、鋭い目つきで私を射抜く。


「嘘をつけば損をするわ。必ずね」


「それは……ヨーティと偽っていること? ばれやしないわ。ここのシンキング・セルたちはお人よしばかりだもの」


「そうね。だからこそ……裏切り者の末路は最悪よエンド」


「……本当に、何をしに来たの?」


「忠告……いえ、警告かしら? 貴女は今、獣の未来から人に移った。だからこそ……狼少年になって欲しくないの」


 人という言葉にエンドはびくりとする。自分が向ったのは共存ではないのかと一瞬落胆するが、すぐに相手の言動が鼻について突っかかってしまう。


「どういう風の吹き回し? 私は貴女も狙っているのよ?」


「姉だもの。可愛い妹には世話を焼きたくなるものよ」


 お茶を飲み干し、席を立つヤオ。


「ち、ちょっと、どこにッ!?」


「帰るわ。言いたいことは伝えたし。私は見守るものだから」


「簡単に逃がすと思う?」


「今は、簡単に逃がすでしょ? ふふ……」


 爽やかな笑みだけを残し、ヤオは部屋を出て行った。

 再び一人きりになる。すると、不思議な静寂が襲い掛かった。

 心地良いような、けれど今まで感じなかった漠然とした不安に苛まれる。


「嘘を……付くな? 余計なお世話だわ。本当に……余計な……」


(……お兄様になら……真実を打ち明けても……いえ、それだとお兄様は、きっと私からキリスたちを守る側に付いてしまう)


 今更自分はヨーティではなくエンドだと、ヨーティから能力を奪って瀕しにさせたなどと、言えるわけがない。

登場人物


 №001 ヲークス・ヲルディニア 蜉蝣の因子を持つ女性体。

   能力名:??? 死亡


 №274、 ケリアル・ツェマド 梟の因子を持つ女性体。

  茶色の髪の毛と鳳眼ともいえる鋭い瞳。ヨーティ・ヒュリケを思わせるほどの妖艶なスリーサイズだった気がする

   能力名:風流操作

     真空の鉤爪エア・スラッシュ

       :真空波によりカマイタチ現象を引き起こす特技。



 №275 ミディ・ネリィ 燕の因子を持つ女性体。

  背丈は百四十前後で肩までの切り揃えた蒼い髪にカチューシャを填めた女の子

   能力名:防御膜生成

     遍く全てを防ぎし壁よ(トランス・ルゥセントウォール)

       ミディのみ出入り自由な隔壁膜を生成する。内部の者はあらゆる攻撃から身を守ることが出来るが、効果が切れるまで脱出も不可。

       地面の中も合わせた球体状のため、土を掘って脱出という方法も使えない。


 №441 イルル・キリク ???の因子を持つ女性体。

  麦藁帽子を目深に被った白いワンピースの少女。炎の様に赤いストレートヘア。

   能力名:再生の焔

     優雅なる火炎のエクセレンス・フレア

       :掌から発生する炎の玉。

     消える事無き命のザ・ニューライフ

       :再生の炎に包まれることで自身を完全に復活させる能力。自動発動。


 №444 フオウ・ワウン 龍の因子を持つ男性体。

   能力名:空気操作

     失われし真空ヴァニッシュ・エア

       :特定空間の空気を押し出し真空を作りだす。


 №445 キリス・ラーニリア 龍の因子を持つ女性体。

  肩にすらかかってない自称ストレートヘアに左右から青いリボンを結び付けたいつもの髪型の少女。

   能力名:禁止

     我は汝の行為を禁ず(プロハビット・アラウズ)

       :シンキングセルの能力を禁止する。禁止日数は最大で一年。


 №446 メイリィ・スウ 蛾と蝶を持つ女性体。

  ショートカットの黄色の髪の活発な少女。

   能力名:電撃

     雷撃を纏いしライトニング・ナッコ


 №482、ヤオ・ソーティア ???の因子を持つ女性体。

  ポニーテールの女。

  黒のタンクトップと太股の部分で乱暴にちぎり取ったようなジーンズを着ている。

   能力名:???


 №998 ヨーティ・ヒュリケ 鶴の因子を持つ女性体

  金色のロングストレートに優しそうな眉、意志を宿した瞳、薄紅の柔らかそうな唇、170くらいの背丈に爆乳を持つ。

  エンドのプロトタイプとして作られたためか容姿はそっくりになっている。

   能力名:光線操作

     駆け抜ける閃光フラッシング・レーザー

       :光を集め照射するレーザービームを放つ。


 №999 オメガ・エンド 人間の因子を持つ女性体

  金色のロングストレートに優しそうな眉、意志を宿した瞳、薄紅の柔らかそうな唇、小柄な体躯に胸は動きやすさを追求しこじんまりとしている。

   能力名:コピー&ペースト

     我は汝が力を複製する(コピー)

       :シンキングセルの能力または身体の状態をコピーすることができる。

    コピー済み能力

     駆け抜ける閃光フラッシング・レーザー

       :光を集め照射するレーザービームを放つ。

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