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SIDEミディ:拉致

 エンドは即座に布団に隠れ、様子を窺った。

 これでフオウ一人が寝ているように勘違いするだろうからエンドを排除しようなどといった思考の相手だったとしても十分対応できる。

 対応出来ると言っても奇襲を行う程度だし、能力が使えないので肉弾戦になる。


 ここぞという時は女性拒絶症のフオウは役に立ちそうにない。

 とにかく様子を窺い隙を見てフオウを連れて逃げるのだ。少し部屋から移動するだけでキリスがいる。

 彼女の禁止能力は脅威ではあるが敵に対しては有効なので、全て任せてしまった方がいいだろう。


 エンドは隙を見付けるべく、布団の中でフオウの影に隠れながら様子を窺う。

 銀色に輝く三日月に照らされるのは、一人の小さな少女。

 睡眠学習の間に姉たちに関する顔と名前を覚えているので、その顔を見た瞬間すぐにわかった。


 №275、ミディ・ネリィ。燕のシンキング・セルであり、確か防御膜を生成するという不思議な能力を持っていたはずだ。

 奴が今回の敵か。と思いながら動向を見守っていたのだが、なぜだろう。自分より早くに生まれて世界で生きているはずなのに、自分の妹みたいな放っておけない行動を取るミディについついエールを送ってしまう。

 なぜなら……


 ミディは夜這いでもしようとしているのか、窓を開いてフオウの部屋に侵入しようとしているようだ。

 でも、窓にはカギが掛かっている。

 ぐっと、力一杯引こうとして、結果無駄に終わる。

 逆に目一杯押しこんでみる。当然開かない。

 ぜーぜーと息を吐いて少し休憩。


 両足を桟に掛けて無理矢理こじ開けようとする。

 残念、全く動かない。

 思い切り叩きつけてガラスを割って侵入……叩く直前に大きな音を出してはいけないことを思い出し断念。

 しばらくこじ開ける隙間を開けようと窓と窓の間をカリカリと指で掻きむしる。


 それを続けていると、ミディの目に涙が溜まりだしていた。

 なんとかこじ開けたいのに開かない。

 自分の力で開かないことの無念さに、彼女は泣きたい気持になったようだ。

 それでも、必死に窓を開けようと頑張る。


 涙を流し嗚咽交じりに泣きながらも窓を開けようとあの手この手で頑張るのだが、無駄に頑強な窓は全く開かない。

 あ、ついに諦めたか?

 ミディはついにしゃくり上げて泣きだした。


 エンドは思う。お兄様、なぜこれで起きない?

 フオウは完全に寝入っているようで、ミディが泣いている声が聞こえるのにそれを不快に思って目覚める等という事はなかった。




「えぐ……うぐ……」


「何をしているの? ミディ」


 ケリアルがそこに付くと、ミディは窓辺に三角座りしてノの字を書いていた。


「けでぃあでゅおでいざまぁ」


 泣きながら縋りついてこようとするミディのおでこを片手で制し、懐から取りだしたハンカチで涙を拭う。

 するとミディがハンカチを奪い取り、自分の鼻に押し当てた。


「あ、こらミディッ!?」


 言った時には後のお祭り。すでにミディはハンカチで鼻をかんでいた。

 粘ついたハンカチを返して来ようとするので、ケリアルはそれを掴む事もせず、風に乗せてから真空波で斬り刻む。

 証拠隠滅と満足に頷き、そのまま風に流してハンカチの欠片を全て遠くに吹き飛ばした。


「うぅ……うぅ……」


「わかった。わかったわよ。入れないのよねミディ」


 肩を落としてケリアルが聞くと、申し訳なさそうにコクリと頷いた。

 ケリアルとしても予想内だったために怒る気はない。

 むしろミディが予想通りだったとため息が出るくらいだ。


「仕方ないわね。私が開けてあげるから。後はちゃんとするのよ? いい?」


「ばい、わがりまじだ」


「よろしい」


 ケリアルは念じる。

 窓を壊すのは大前提として、フオウ・ワウンに傷を負わせる訳にはいかない。

 ミディを連れて窓から離れ、窓の内側に力を込める。


「渦巻く風よ、切り裂け、真空の鉤爪エア・スラッシュッ!」


 瞬間、窓の内側で巻き起こるカマイタチ。

 繰り返し起こるそれはやがて小型のハリケーンとなって内側から窓ガラスを粉砕した。

 そのまま風に流して証拠を隠滅させる。


「すごいですケリアル姉さん、音がならないなんて」


「逆波長の風音をぶつけて消したのよ。ほら、さっさと自分の仕事をしなさい」


「あ、はい」


 ミディが頷いて力を行使する。


「遍く全てを防ぎし壁よッ!(トランス・ルゥセントウォール)」


 ミディの力は防壁の力。フオウのベットを灰色の半透明の膜が覆い隠す。

 フオウの背後に隠れていたエンドはさすがに驚くが、膜の外へ逃げる事が出来そうにないと悟ると、そのまま隠れ続けることにした。


「さぁ、ミディ、作戦決行よ」


「はい、ケリアル姉さんッ!」


 元気に答えるミディは膜を回収しにいく。

 ミディ自身が膜を生成したためか、彼女は自由に膜内を出入り出来るらしい。

 観音開きの窓を目一杯開き、そこからベットごと押しだそうとする。


 普通に無理だろ。と思うエンドだったが、一時間以上の格闘の末、ミディは意地でベットごとフオウを外へと押し出した。

 拉致に成功したミディはそのまま膜の上部を持ちあげると、半獣状態へと移り、即座に飛び上がる。

 ケリアルはその後ろ姿を見ながら、蔑むような目で笑っていた。

登場人物


 №001 ヲークス・ヲルディニア 蜉蝣の因子を持つ女性体。

   能力名:??? 死亡


 №274、 ケリアル・ツェマド 梟の因子を持つ女性体。

   能力名:風流操作

     真空の鉤爪エア・スラッシュ

       :真空波によりカマイタチ現象を引き起こす特技。



 №275 ミディ・ネリィ 燕の因子を持つ女性体。

  背丈は百四十前後で肩までの切り揃えた蒼い髪にカチューシャを填めた女の子

   能力名:防御膜生成

     遍く全てを防ぎし壁よ(トランス・ルゥセントウォール)

       ミディのみ出入り自由な隔壁膜を生成する。内部の者はあらゆる攻撃から身を守ることが出来るが、効果が切れるまで脱出も不可。

       地面の中も合わせた球体状のため、土を掘って脱出という方法も使えない。


 №441 イルル・キリク ???の因子を持つ女性体。

  麦藁帽子を目深に被った白いワンピースの少女。炎の様に赤いストレートヘア。

   能力名:再生の焔

     優雅なる火炎のエクセレンス・フレア

       :掌から発生する炎の玉。

     消える事無き命のザ・ニューライフ

       :再生の炎に包まれることで自身を完全に復活させる能力。自動発動。


 №444 フオウ・ワウン 龍の因子を持つ男性体。

   能力名:空気操作


 №445 キリス・ラーニリア 龍の因子を持つ女性体。

  肩にすらかかってない自称ストレートヘアに左右から青いリボンを結び付けたいつもの髪型の少女。

   能力名:禁止

     我は汝の行為を禁ず(プロハビット・アラウズ)

       :シンキングセルの能力を禁止する。禁止日数は最大で一年。


 №446 メイリィ・スウ 蛾と蝶を持つ女性体。

  ショートカットの黄色の髪の活発な少女。

   能力名:電撃

     雷撃を纏いしライトニング・ナッコ


 №482、ヤオ・ソーティア

  ポニーテールの女。

  黒のタンクトップと太股の部分で乱暴にちぎり取ったようなジーンズを着ている。

   能力名:???


 №998 ヨーティ・ヒュリケ 鶴の因子を持つ女性体

  金色のロングストレートに優しそうな眉、意志を宿した瞳、薄紅の柔らかそうな唇、170くらいの背丈に爆乳を持つ。

  エンドのプロトタイプとして作られたためか容姿はそっくりになっている。

   能力名:光線操作

     駆け抜ける閃光フラッシング・レーザー

       :光を集め照射するレーザービームを放つ。


 №999 オメガ・エンド 人間の因子を持つ女性体

  金色のロングストレートに優しそうな眉、意志を宿した瞳、薄紅の柔らかそうな唇、小柄な体躯に胸は動きやすさを追求しこじんまりとしている。

   能力名:コピー&ペースト

     我は汝が力を複製する(コピー)

       :シンキングセルの能力または身体の状態をコピーすることができる。

    コピー済み能力

     駆け抜ける閃光フラッシング・レーザー

       :光を集め照射するレーザービームを放つ。

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